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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

有難いガイドさん(サン・クレメンテ修道院-カザウリア、その3)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その3

カスティリオーネ・ア・カザウリアCastiglione a Casauria(トッレ・デ・パッセリTorre de Passeri)のサン・クレメンテ修道院Abbazia di San Clemente、続きです。

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ファサード、といっても、ポルティコに隠れちゃっていて、ファサードのぱっと見は、地方のちょっとしたお屋敷みたいな位風情になっちゃっていますが、そこは無視して、実際の本堂入り口部分を、じっくり鑑賞しなければなりません。

扉は三つ並んでいますが、中央扉を取り巻く、というか、扉そのものも含めて、なかなか激しく装飾されております。

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見るべきは、聖堂の扉、リュネッタ、アーキトレーブ、そして、隅切りの柱や柱頭と盛りだくさんです。こうなるとね、興味が分散するというのか、ちょっと興奮気味になって、視線が定まらないというのか、まぁ、おなじみの状態ですけれど、そういう自分のアワアワ状態を反映するかのように、撮影もかなりさまよい状態となってしまって、こうして整理する段階になると、本当に厄介です。
もっと冷静に、研究者の目を持てる人なら、ひとまず落ち着いて深呼吸とかして、まずは、扉、次にリュネッタ、とか順番を決めて、他に視線がさまようのも我慢して、きっと集中して撮影ができて、結果、撮り残しのリスクも減るのではないか、と想像しますが、私の場合は、ハイテンションになっちゃうと、完全にその真逆に行っちゃうんで、何度も同じ部分のクローズアップを撮っているかと思うと、そのすぐお隣は、場面が切れちゃっているようなものしかなかったり、情けない限りです。

言い訳はともかく、まず、聖堂の扉。72の部分に分割されているんですが、これ、なかなか興味深いです。

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とってもデザイン的な内容になっているんです。72枚の各部分、同じモチーフが複数並べられています。そして、内容は、幾何学的な模様が主で、アラブとかビザンチンの影響が明らかなデザインとされています。

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聖堂の扉を、パネルに分割して、聖書のエピソードなどを彫りこむスタイルは、ヴェローナとかピサとかモンレアーレであって、かなり好きなアイテムなんですが、こういう、まるで石の浅浮彫のようなものを彫りこむのって、とっても現代的な発想というか、物語性と対極にある感じで、珍しいと思いました。
ちなみに、お城のアイコンが沢山あるのは、この修道院傘下の町村一つ一つがはめ込まれているとか、そういうことだったように記憶します。

というのは、このファサード見学の時、インスタ仲間で、事前に色々情報をくださった方がお電話をくれて、なんと電話越しに大変丁寧なガイドをしてくれたのです。空港を出るときに、雨が降ってきたこともあったので、行先を一緒に検討してくれて、ここに来ることは知っていたのですが、私が超の付く方向音痴で、必ず道を間違えることなど知る由もないのに、びっくりするほど絶妙なタイミングの電話だったので、驚愕したのを覚えています。
脱線、笑。

取っ手の部分は、12世紀ロマネスク風になっています。

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この扉の上に展開されるリュネッタ部分は、細かい彫り物がぎっしりです。
うかつにも、構造全体を撮影してなかったのですが、解説によれば、リュネッタを大きく取り囲むアーチが、ちょっととんがり気味で、それは、ロマネスクからゴシックへの変容時期のあかしとあります。
全体に、12世紀とありますが、おそらく後半ということになるのでしょう。

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まずリュネッタですが、中央にいるのがサン・クレメンテさんのようです。そして左にその信者であるサン・コルネリオとサン・エフェボという、私が全く知らない聖人がいます。右側で教会の模型を差し出しているのは、修道院長のレオナーテさんという方だそうです。

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石工さん、すごく親切で、というより、おそらくそうしてください、という注文があったんでしょうけど、それぞれちゃんとお名前が彫りこまれているんですね。それで、こんなに詳しく簡単にわかっちゃうというわけです。
このリュネッタの彫りは、なんとなく時代が下る様子もありますね。法王サン・クレメンテさんにしても、修道院長にしても、モデルがいそうな実在感がある上に、妙にイケメン、笑。修道院長のサイズが妙にでかいのも、なんか人となりがわかるような様子で、ちょっと笑っちゃいます。

特筆してあったのが、一番左端、二人の信奉者のさらに左なんですけど、バラと、そして野ウサギを抱え込んでいる鷲がいます。

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人の生命の移ろいを表すもの、とあります。お花は枯れちゃうし、生き物の明日も知れず、いわゆる「朝に紅顔あって世路に誇れども、暮に白骨となって郊原に朽ちぬ」ってやつですかね。
とかさらりと言ってますが、こんな言葉、よく出てきたもんですよね。グーグル先生のおかげではあるんですが、高校の時とかに習ったことが、きっと折々に触れることでうろ覚えレベルに過ぎないけれど、記憶にあるということ、脳ってすごいな。

さて、リュネッタの下のアーキトレーブ。ここはなかなか充実した浅浮彫が並んでいます。

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前回の記事で、本堂内にあるチボリオの一面にも、同じストーリーが彫られているのを見ましたが、これは、サン・クレメンテ法王のレリックが、アドリアーノさんからルドヴィコII世に寄贈される場面、ぺスカラの谷を行く運送場面、修道院の建設のための土地の購入、最初の修道院長ロマーノの任命が、描かれます。

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レリックが寄贈されています。左端にはローマとありますが、サン・クレメンテは法王ですし、もともとローマ出身だったようです。それにしても、書き込みがすごいですよね。

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これは、聖遺物箱が運ばれているシーンですね。この話を聞いて、もしかして、さっき本堂の隅っこに置かれていたあの地味な箱がこれ?と気付いて、再度見に戻ったんですよね。だって、ちょっと感動しませんか。

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これが土地を買っているところ?よくわかりませんが、解説の順番からはそうなります。

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これが修道院長任命の図?だとすると、選挙みたいなことかな。
土地の購入と任命が逆なような気がしたんですけどね。

全体の中央には、修道院の姿が置かれています。

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教会フューチャーが、かなり激しいですね。修道院長の自慢で生まれた装飾的な。
特に好みでもない彫りではあるんですが、ガイド付きだったのもあり、また保存状態が大変良くて、内容が分かりやすいので、楽しめました。

装飾、まだ終わりません。本当にたくさんあったな、のっけから。
ということで、続きます。

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  1. 2021/10/14(木) 22:04:41|
  2. アブルッツォ・ロマネスク
  3. | コメント:0
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