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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

落書きといってよさそうな(サン・トンマーソ・ベケット教会-カラマニコ・テルメ、その1)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その5

プランBで始まった旅ですが、カザウリアの修道院教会をじっくり堪能することができて、まずは良いスタートでした。次に向かうのは、南方向半時間ほどの村です。

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カラマニコ・テルメCaramanico Termeのサン・トンマーソ・ベケット教会Chiesa San Tommaso Becketです(9-17時)。

ここも、カザウリア同様、素直にカラマニコ・テルメを目指してはいけないので、ご注意くださいね。サン・トンマーソというのは、カラマニコ・テルメの町の役場の管理下にある村と言う位置付けで、イタリアでは、Frazioneという単位の村となります。Frazioneだと、独自の役場を持たない単位ということになるのだと思います。
でもね、この教会も、検索で出てくるのは、カラマニコ・テルメのサン・トンマーソ教会、となるので、単純にカラマニコ・テルメ、目指しちゃいそうですよね。

でも、距離にして6キロ近く離れた村ですので、思い込みでカラマニコ・テルメを目指すと、わけのわからないことになります。

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田舎で人口が少ないからなのかな、とにかく一つの役場の管轄範囲がすごく広いみたいですね。住所でも、Frazioneというのは表立って出てこないので、厄介です。

さて、教会は、町はずれの、わずか高台になっているロケーションにあります。
現地に、見所早わかり、みたいな1/120の図解がありました。

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これはいいですね。すべての教会がこういうわかりやすい図解を置いてくれると、色々助かりそうです。アブルッツォ、地味な割に、ナイスな情報開示!

開いているので、まずはすかさず入場です。

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シンプルですが、カザウリアのように真っ白じゃないし、地味な雰囲気がなかなかよろしいです。

まずは、親切な図解で指摘してくれている見所を押さえていきましょうかね。一応、事前の情報だと、フレスコ画がなかなかよさげということですが…。

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後陣に向かって左側、真ん中辺の柱の、信者の方を見守るような面に、サン・クリストフォロさんがいらっしゃいます。クリストフォロさんは、いつだって巨人で、肩に子供を乗せている姿で描かれるのですが…。

それにしても、名前の由来が、キリストを肩に乗せて運んだことだったとは、知りませんでした。旅人の守護聖人になっていると記憶していますが、そんな由来からなんでしょうかね。または世界を放浪したからなのかな。
とすると、コロンボ、つまりコロンブスの名前がクリストフォロって、なんかすごくない?と気付いてしまいました。あれは、本名なんですかね?またはサン・クリストフォロにあやかって、自称していたのかも?

お顔がかわいらしかったので、クローズアップ。

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そしたらなんと、お子さんを手で持っていらっしゃいました!
大国主命みたいな髪型で、心優しき力持ちみたいな…。

さて、向かいの柱の方は、ファサード側に向かって、キリストの生涯の場面が描かれています。

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一番上に磔刑。中央に埋葬、下には、辺獄への降下。

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その辺獄では、悪魔を踏みつけ、アダムとイブを、辺獄の外へと導いているようですが、手を引っ張っているのがアダムらしいです。
確かに、ちゃんと名前が記されているみたいです。

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それにしても、アダム、じいさんですね?
肌つやはよさそうなんで、いわゆる若白髪の人をモデルにした?
そんで、なんかアダムの手が引っ張っている陰で、イブが、私もつれてってくれるのよね?と疑心暗鬼な顔をしているのが、印象的。

これらのフレスコ画は、1200年代のものとされているようですが、もしかしたら結構後半かもしれない的なテイストも感じるものの、何かしら愛らしいし、ヘタウマ・テイストもちょうどよい感じに盛り込まれていて、ツボでした。

次に見るべきは、入り口入ってすぐ右側にある柱です。

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トップの全体写真でも、この柱の特異さは目立つと思います。
これ、聖なる円柱Colonna Santaと呼ばれるもので、長年にわたり、巡礼者の祈りを受け止めてきた代物ということです。下の方がすり減っているのは、巡礼者が触ったりこすったりしながら祈っていたことの結果。子供を授かることにも効果あり、という伝説もあって、多くの女性も触りに来たそうです。今は、ガラスで囲まれて、直接触れることはできなくなってしまいました。
なぜ、聖なる柱とされていたのか、確たる理由は不明なようですが、他の柱とまったく違う様子。そして、重厚な壁を支えるには細すぎるのではないかと感じさせる角柱のサイズ感によるのではないでしょうか。
実際、1600年代に、この柱の上部に、力を分散させるために、大きな開口部が開けられたそうです。

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確かにすごいほっそり感。
それに柱頭も、ここのこれだけ、他とはタイプが違うんですね。

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他の柱頭は、植物文様など、ごく一般的なモチーフだし、形もそうなんですが、この柱頭は、結構違いますよね。
柱頭も、柱も、土台も、すべてが起源の異なるアイテムを、組み合わせて作ったものとされているようです。そんなことから、天使と信者たちが力を合わせて、これらをここに運び込んだという言い伝えもあるようで、それもまた、聖なる柱の根拠になっているようです。

では、他の柱頭はどんなか、というと。

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こういう柱と一体化したタイプとか。
柱の表面に、浅浮彫、見えるでしょうか。この教会、なんかこういうものが、あちこち見られるんです。これは、宝探しとして、結構好きなアイテムっていうか、楽しいですよね。外側にもありますので、追って紹介しますが、見逃しなきよう。

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これも、柱頭というよりおは、柱の装飾がですけれど、ここでも、壁に色々落書きみたいな遊びが見られます。かわゆし。

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これは、やっといわゆる柱頭ですね!モチーフは、やはりシンプルに植物です。
適度に繊細さも見られる植物モチーフで、柱と一体型多数、という感じ。

やはり聖なる柱の柱頭だけ、タイプがちがうのが明らかです。

内部には、もう一つ見るべき、なのかどうか、一応紹介するものがありますが、一旦切ります。

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  1. 2021/10/21(木) 21:09:57|
  2. アブルッツォ・ロマネスク
  3. | コメント:0
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