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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

三越系ライオンが守る暗闇(サン・トンマーソ・ベケット教会-カラマニコ・テルメ、その2)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その6

しっかりを投票を済ませてから、この週末は、久しぶりにエミリアの教会巡りをしてきました。目的は、エミリアに暮らすお友達との二年ぶりの再会だったのですが、教会もしっかり堪能することができて、充実の週末となりました。

さて、カラマニコ・テルメCaramanico Termeのサン・トンマーソ・ベケット教会Chiesa San Tommaso Becket、続きです。
前回紹介しきれなかった本堂内のもう一つは、こちら。

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クリプタです。
とても狭くて小さな階段を下るのですが、階段は両脇ではなくて、ドカンと中心部にあるのが、特徴的です。
そして、こんなにこじんまりした様子なのに、しっかりと両脇にライオンがいるのが、これまた特徴的というか、すごいです。それも、かわいい系じゃなくて、三越系(笑)の写実系ライオン。

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ライオンと言えば、ちょっと前後というか、行ったり来たりで恐縮ですが、実は本堂にはもう一対、いらっしゃるのですよ。

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前回の記事に出てきた、フレスコ画のある柱の根元に、ファサード側を向いています。
お向かいにももちろん。

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こっちは口を開けて、阿吽みたいになっていますね。
もともとは、違う場所にあったものと思われますが、こっちを向いている姿勢なので、ファサードに置かれるものではなさそうです。

前回の記事でも掲載した図解ですが、ライオンの位置を水色で記してみました。

abruzzo 084

この教会、入り口入った部分と後陣の間に、もう一つ異なるレベルがあるんです。図解の中で、横線が、段差を表すもので、二つ見えますよね。
ライオンのすぐ手前に、段差があるので、ライオン部分は、わずかに高いんです。よくわからないのですが、もしかすると、古い教会ならスコラ・カントラムで仕切られる聖職者スペースなのかな?と思ったりしますが、さて、どうなのでしょうか。もしそういう意味があるなら、ここにライオンがいるのも納得できる感じ。

クリプタに戻ります。
ここね、残念ながら、真っ暗でした。明りのスイッチはあったのですが、電球が切れていたようで、何度ぱちぱちやってもダメでした。
あまりに暗くて、大した距離ではない階段を下りすのすら、怖い感じなんです。
さすがに、手探りでフラッシュ撮影しました。

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この、奥の丸いものは、見たまんま井戸。
今でも水が出ているそうです。いわゆる地下礼拝堂、というものではないですね。

こういうものが地下にあって、今にも残っていることから、勘の良い人は、もしや、と思うかも。どうやら、異教の神殿がもともとあったのではないかと考えられているようです。
教会の歴史ですが、おそらくそういう古い信仰地であった場所に、カンタベリー大司教だったトマス・ベケットが1173年に亡くなった直後、着工されて、1202年までには完成したことが分かっているそうです。スポンサーは。ノルマン出身の、地区の豪農だそうです。

まんま英語名前の聖人って、他に知らないくらい珍しいので、最初に名前を知った時、何か勘違いかと思いました。でも、彼に捧げられた教会って、結構散発してるっていうか、あちこちに唐突にありますよね。あ、フレスコ画などもそんな気がします。

教会は13世紀に、アゴスティーノ派の修道院となり、その後ベネデット派に鞍替えしつつも、17世紀には活動停止というものだったようです。

ほんのわずかの滞在、というより、真っ暗闇で何一つ見えなかったクリプタですが、降りてみると、意外と深いこともわかります。

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地下礼拝堂の体裁もとっていないのに、このように立派な階段とライオンを作ったのは、なぜだったのかしら。

長くなってしまうので、次回ファサードです。

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  1. 2021/10/24(日) 17:28:51|
  2. アブルッツォ・ロマネスク
  3. | コメント:0
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