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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

当時の古典志向ってあるのかな(サンタ・マリア・アッスンタ教会-ボミナコ、その2)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その9

ボミナコBominacoのサンタ・マリア・アッスンタ教会Chiesa di Santa Maria Assunta、続きです。

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内部に入ります。

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写真というのは、結構現場の感覚と違って撮れちゃったりするもので、これ見ると、それなりの規模感が感じられるかもしれないと思うのですが、すでに紹介したカザウリアやカラマニコなど、すでに見てきた教会に比べると、かなりこじんまりした規模となります。
そして、この写真は、ファサード側の扉全開状態で撮影していますが、すでに薄闇が訪れつつある状態でしたので、現場では、かなり暗いと感じておりました。

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後陣側からのこちらの方が、実際の様子に近いですね。暗いんですよ。

最初の印象は、こじんまりしている中で、プロポーションとしては太めの円柱のインパクトが強く、それによって支えられている柱頭のサイズも大きくて、またそのシンプルで力強い彫り物が、肉眼でよく見える高さ近さにあるだけに、とても魅力的でした。

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1700年ごろ、当時はやりのバロック様式が採用されたものの、幸い表面的な変容だけにとどまったようなんです。要は、内壁にそれらしいごてごてした絵画が描かれたり、柱頭が金ぴかに塗られたり、ということだったのだと思います。1930年から40年にかけて、それらが取り払われて、中世当時の姿が取り戻されたということで、バロックが激しく好まれたらしいイタリアに典型的な人生、というか、建築生?とたどった教会のようです。

柱頭は、先述したようにシンプルなのですが、デザインが非常に初期ロマネスク的で、私は大好物なタイプです。

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うすぼんやりとした明りを頼りに、見学時間も押せ押せで焦っていた割には、ここの柱頭はよく撮れたものだと思います。自画自賛。やはり好物だけに、集中できたのかな。

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シンプルな全体のデザインを、ディテールで埋め尽くしたりして、技術はある石工さんだったのでしょうね。
外側の装飾的な彫りものもそうでしたが、植物中心で、ロンゴバルド・テイスト、つまり中世初期的なデザインへの志向が強い石工さんだったのではないかというような気もします。教会の創建は、10世紀頃ではないか(11世紀または12世紀という説もあるようです)、とも言われているようなので、だとすると、当時の同時代的にはやっていたモチーフでもあるかと思いますけれど。
でも、同時代だと、例えば、上の葉っぱを単純化したような彫りの場合、葉っぱの中にこれほどのディテールを彫りこむ、というのは珍しいと思います。

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どれもこれも、ちょっとひと手間、的な何かを感じます。そしてね、全部違う、と思います。そのどれもが、とても保存状態良いです。ネックは、暗いだけ、笑。

そんなわけで、私は、この柱の雰囲気と、数々の柱頭が、この教会のお気に入りですが、その他にも見るべきアイテムがいくつかあります。ぱっと見、かなり地味目な様子なんですが、それぞれ独立したアイテムとして重要度の高いものが、実は複数あるって、なんかすごいですね。

その一つが、入り口から一番遠い奥に置かれている司教座です。

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地味と言えば超地味ですね。
ここはもともと修道院教会なので、修道院長が腰かけるための椅子ということになります。
ジョバンニさんという修道院長が、1184年に注文したものだそうです。

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脇に、司教杖を持った司教が彫られていますが、これも注文の内容のようです。修道院の自治制をあえて強調する意図があったのではないかというように解釈されています。この後紹介する説教壇と、同じ職人さんの作品のようです。
反対側には、文字が刻まれていて、もちろんラテン語なんで、私には理解できません。雰囲気からは、杖が語るように、修道院長が皆を引っ張っていくような、そういう意味なのかなあ、と思いました。

それにしても、暗さが分かっていただけますよね。
ちょっと前にゲットしたヘッドランプ、この夏の修行旅で大活躍しましたが、この時はまだ自前の明かりがなかったんですよね。なぜ、もっと早く明りを入手しなかったか、今更ながら悔やまれます。もう、ヘッドランプなしには、教会訪問は考えられません。

そして、司教座と信者席の間には、チボリオがあります。

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1223年と彫られているようです。何枚か撮影した写真を見てみたのですが、どこにあるかはわかりませんでした。おそらく、その年に教会が竣工して、祭壇、または教会そのものの奉納がされた年ではないかということです。

上部は、1700年のバロック化の際に、取り去られてしまったそうなのですが、その後、1930年からの修復工事の際、一部の柱などが見つかったことから、再建されたということ。だから、なんとなく上部には新しさ感が漂っているのですね。

そして、このチボリオの前には、こちらのアイテムです。

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イースターのろうそく立てと言われるやつ。
これはそういえば、北部では、ほとんど見ないアイテムではないでしょうか。ローマではいくつかの教会で見たと思うし、あとは、南にもあるように思いますが、北イタリアでは、思い出せないなぁ。
なので、というわけでもないですが、このアイテムもまた、チボリオ同様、私の中では位置づけが分かりにくくて、えっと、必要なんだっけ?みたいに思っちゃうというのか、そういう感じです、笑。

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棟梁、かなり力入ってるな、という様子なんですよ、これ。一番上は、ろうそくを立てる台だと思いますけれど、なんだか透かし模様とか取り入れた柱頭規模の彫り物になっていますし。それも、石が、黒っぽくて、他と違うものですよね。

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で、ちょっとなんというかなまめかしいようなネジリン棒を背負っているのが、この、けなげ感満載なライオン君ですよ。プロポーション的には、ちょっと小さ過ぎね?というサイズのライオン君が、前脚に力入れて、ちょっと今大変なんで、話しかけないでくれる?という様子でこっち見ています。けなげ過ぎません?

というわけで、普段はなんとなく「なんなんだっけ」くらいでスルーしてしまうことも多いアイテムですが、ここではライオン君にやられましたね。

残りは、アブルッツォではお約束のあれ。

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繊細な彫り物が特徴的な説教壇です。
1180年と彫られていて、司教座を発注したジョバンニさんが関係しているようです。ジョバンニ修道院長、一般的な志向として、修道院長押しを装いながら、実はオレ押しだったのかもなぁ。

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文字が見えると思いますが、ずらりと壇を取り巻くように彫られています。ジョバンニさんの碑文、とあるのですが、彼が書いた文ということなのかな。

彫りの様子もモチーフも、これまでの他の教会にあったものと酷似していますよね。そして、この教会では、柱頭とのテイストの違いが明らかですし、なんとなく説教壇専門、それも結構同じものを売りにしている石工さんがいたのかなぁ、とも思わされます。

ボミナコでは、本を買っており、一応斜め読みしながら書いているのですが、ちゃんとは読んでいないので、今後加筆修正ありそうです(つまり、色々嘘八百書いてる可能性あり、ということです、笑)。

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  1. 2021/10/31(日) 18:27:44|
  2. アブルッツォ・ロマネスク
  3. | コメント:0
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