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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ブラタモリしてほしい…(カテドラル、サン・パンフィーロ-スルモナ)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その14

雨の中の苦行で若干疲れ、一服しながら、次の行先を考えました。すでにプランBの発動続きで、全体の予定がわやわや。方向的にも時間的にもどうかな、と思いましたが、せっかくなので、行くことにしたのが、次の教会です。

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スルモナSulmonaのサン・パンフィーロ大聖堂Duomo di San Panfiloです。

え?なにこれ?と思うような外観ですよね。でも、想定内だったので、驚きはせず、どんどん入場します。
あ、その前に、一見、腰が引けるようなファサードですが、ちょっと安心するアイテムもちゃんとありました。

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ガジガジ系のライオンちゃんが、入り口の両脇を守っています。が、朽ち方が半端なく、ほとんどシュールなお姿になっています。

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しかし、たてがみの細かい彫りから、かなり技術のある石工さんの作品ではないか、と思われます。
トップの写真から、とてもこじんまりしたサイズ感ですから、名称がドゥオモ、つまりカテドラルとはどういうことや?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。いや、私は、そこについては、ちょっとびっくりしたんです。

というのも、旧市街に入って、まさに旧市街の中心に位置するすごい立派な教会がありまして。

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目的の教会には、外観に見るべきものはないという情報を持っていたため、躊躇なく、最初に出会ったこの教会に入りましたよ。すぐに、あれ?違うなって気付いたんですけどね。
でもさ、仮にもカテドラルだったら、この位置ではないですか。

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上がスルモナの町です。大きな川の中州みたいな様子なんですよね。その北端部分にカテドラルがあって、最初につい入ってしまった教会は、旧市街の建物がぎっしり並んでいる中心にあるAnnunziataというやつ。どう見ても、こっちがカテドラルと考えるのが普通ですよね。

ちょっと調べたんですけれど、分かりませんでした。
ただ、ぺスカラとローマを結ぶ道がこの辺にあった様子なこととか、鉄道駅が、このカテドラルのさらに北部の方にあることとか、そういうインフラ的なことを考えると、おそらく、中世当時は、この辺の方が栄えていたという理由がありそうです。
カテドラルの前が、大きな公園になっているのも、歴史的な何かがあるのかも、とブラタモリしたくなるような町です。

脱線がひどくなる前に、教会に戻りましょう。

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このファサードは、1706年に地震で倒壊した後、バロック様式が採用されてこうなったということです。やはりこの辺り一帯、地震がつきものですね。
内部は、これでもか!という、バロック様式の中でもかなり激しいやつ…。

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解説を読むと、柱頭はロマネスク時代のものがあり、とあるんですが、これはちょっと、たとえあるとしても、この様子を見ただけで、何かあるかもしれない、なんていう望みは一瞬にして粉々になってしまう破壊力のあるバロックです。
下を向いて、逃げるようにこそこそと、目的地に向かいます。

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ここにたどり着いた時、地下にもぐっているので、まったく逆なんですけれど、素潜りでぎりぎりまで呼吸を止めていた後、海面に浮かび上がって、新鮮な空気を思いっきり吸い込んだ、そういう気持ちでした。いや、素潜りなんて、人生で一回しかやったことないんですけどね、笑。
それにしても、素敵に古いクリプタです。そして、広いです。

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もともとは、16本の円柱が、幅の異なる六つの身廊を分割していていましたが、その後中央にある守護聖人の祭壇の建造のため、2本が壊されて14本となってしまいました。
どういうことかというと、この素朴感満載のクリプタのど真ん中に、どどん!とすごい建造物があるんですよ。

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すっごい違和感。おそらく、これ作っちゃったときは、他の円柱も、金ぴかのお化粧を施されていたんだと思います。それをはがすので、いくつかの柱頭が損壊したとありましたからね。なんということを…。それにしても、バロックの金ぴか至上主義って、ある意味執念的にすごいですよね。灰色の地味な暗い空間をものともせず、ここまでトランスフォームしちゃうわけですから。

ここには、サン・パンフィーロさんが眠っていらっしゃるようです。
この教会、もともとは、パンフィーロさんのレリック、というか遺骸みたいですけど、それをコルフィニオからこの村に運ぶ際、運送している人が、ここで休憩をとって、という言い伝えがあるそうです。休憩中にお告げがあったとか、そういうことかもね。それだと、街道にある、という意味が成り立ちますが、どうやらそれは単なる言い伝えとされているようです。ただ、レリックは確かにあるみたい。

クリプタは、当初は12世紀、上物の教会と同じ時期とされていたようですが、今では、9世紀終わりから10世紀初頭の建造であることが、明らかなようです。柱頭のモチーフが多様なため、正確な年代を特定するのは難しいということですけれど、とにかく私の好きな時代のものであることは間違いなさそう。

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それにしても、装飾彫り物、シンプルすぎません?これなんか、ノミでちょっとひっかいただけ的な…。10世紀といっても、もっと彫れる人はすでにいる時代なのに。

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これなどは、まぁまあ。仕事に比べて、手が足りなかったんですかねぇ。棟梁が頑張り過ぎたっていうのもあるかもね。

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モチーフが、ほんと多様なんです。かなりプリミティブだけど、ちゃんと、とてもロマネスクな植物モチーフを、デザイン的な装飾的な様子にして、すごく頑張っているけど、細かい彫りをできる人は数が足りない、契約期限は来る、仕方ないから、お前、三角ひっかいとけ!みたいな、笑。

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謎の切込み。広いですし、なんか障壁みたいのを置いたりしてたのかな。
いずれにしても、この時代、アブルッツォにかかわらず、多くの教会で、他の建造物、多くの場合はローマの建造物になるわけですが、そこからの流用、再利用が多かったのですが、ここは、どうやら、ここのために作られた円柱、柱頭だったと考えられているようです。というのも、下駄がはかされていなかったりという実際的な状態もそうだし、太さやサイズがどれもぴったりで横並び、ということから。なるほど、そういわれてみれば、そうかもね。

その他、解説で気になった記述は、前回記事のコルフィニオのサンタレッサンドロ礼拝堂と共通することが多々あるということで、やはりコルフィニオは、とりあえず呼び鈴を鳴らしてみるべきでしたわ…。

さて、このクリプタ、ちょっと気になるアイテムが二つあります。
一つ目は、これ。

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気付いたものの、ちょっとかわいいけど、相当傷んでるし、近代の粘土細工っぽいものくらいに思っていたんです、情けないですけど…。ところがこれ、12世紀の石彫り聖母子像となっているから驚きです。
色々説があるようですが、この教会のために作られたものではない、ということは、どの説も一致しているようです。
一つには、近くのピンチャーロという村、当時は瓦工場などがあり、要は結構栄えていたらしいのですが、その村の教会にあったとするもの。より有力な説は、スルモナ内の、プレステージの低い教会にあったとするもの。そのほか、コルフィニオの教会にあったとか、カザウリアのリュネッタに飾られていた説などもあるようです。彩色は、こんな状態で残っているものと思いますが、カザウリアかどうかはともかく、リュネッタに置かれていたというのは、ちょっとうなずける感じ。石なら、やはり外ですよね。キリストのお顔がないのは残念ですね。

もう一つのアイテムは、司教座。

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もともとは本堂にあったものが、1706年の地震の後、この場所に移されたそうです。色々な素材が使われており、最も古い部分は、12/13世紀とありますが、例えば手前に見える浮彫装飾などは、その時代のものかもね。
だた、そういうものを組み合わせて作られているわけなので、クリプタよりは相当後の時代のものだし、これも正確な出自は不明らしいです。

ということで、ファサードからは想像もつかない楽しいクリプタなんです。

後ろ髪惹かれながら、外に出て、大回りをしまして、なんとか後陣見える場所へ。

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スタイルはロマネスクですが、全体すっごくきれいで、これも地震後の再建が多いのでしょう。

というわけで、多くは期待していなかったのですが、かなり見ごたえのあるクリプタでした。ちなみに、アブルッツォではクリプタは数がないようなので、貴重かもね。

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  1. 2021/11/14(日) 17:53:45|
  2. アブルッツォ・ロマネスク
  3. | コメント:0
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