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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

最後までガイドさん推し(セッラモナチェスカ、その2)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その17

セッラモナチェスカSerramonacescaの、サン・リベラトーレ・ア・マイエッラ教会Basilica di San Liberatore a Maiella、続きです。

正面に戻って、ファサードから。

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とてもシンプル。
こういう、つけ柱的なものがおそらく装飾なんでしょうね。こういう、幾何学風味の入ったファサードって、マルケで、すごく似てはいませんがいくつかあったような気がします。
私がつけ柱ラバーということは、長く見てくださっている方には周知かもしれませんが、つけ柱は、側壁派です。好みというのも、確たる理由なく、色々ですよね。

一見、装飾性が非常に薄い様子ですが、よく見ると、上部のアーチの垂れ下がり部分に、ちゃんと装飾的な彫りものがあったりはします。

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結構でかいんで、スケール感からすると、装飾が小さい。
側壁の方にも、ちゃんとあります。

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基本、「信条はシンプル・イズ・ベスト」って主張を感じますが、下手な手ではないですよね。しっかりとデザインされたものを、その通りに彫れる腕のある職人さんが彫った、というものに思えます。
でも、小さいんだよ、なんせ。

さて、再びファサードに戻ります。

内部の三つ後陣に呼応するように、三つの扉があり、装飾は、これもそれぞれかなりシンプルです。
中央と向かって左は、植物文様の浅浮彫。

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アーキボルトも、扉脇も、似たようなモチーフの浅浮彫。どうやら、棕櫚のバリエのようです。
おそらくですが、アーキトレーブにも、本来は何かあったんじゃないでしょうかねぇ。と思ってしまうのは、向かって右手の扉口が、こんな様子だからです。

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扉両脇と、アーキボルトは同じモチーフと思われますが、アーキボルトに、ライオンちゃん浅浮彫があるんです。
棕櫚のモチーフは、デザイン性が高いですが、このライオンちゃん、どうですか。

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わたしはかなり好き。すっきりした線彫りが何とも潔し。表情も、善なのか悪なのかってわからなさがいいし、ハイタッチみたいな前脚合わせの前足の素朴な彫りが、結構つぼります。
これも、どっかでこういうの見たなって思うんだけど、最近は、そういうのがすぐに思い出せないのが、おばさんっていうか、記憶力的には本格老人です。フランスのどっかだった気がするんですけど、どなたか、思い浮かびますか?
そもそも、単なる私の記憶の錯綜という可能性も高いですけどね。

ちなみに、私が見た解説では、このライオンについて、「シンメトリーでバランスの取れたポジショニングだが、その見た様子は、異常に小さい頭部などデフォルメが施されている。これは、神々の世界と物質的な世界の間のアンバランスを象徴している。」とか、やけにうがったことが書かれていましたけど、そうでしょうかねぇ。

中に入りましょう。

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内陣側からの、この写真が一番全体がきれいだったので、内陣からファサード側の様子を載せます。
見ての通り、中央身廊の一部と内陣は、美しいコズマさんモザイクでびっしり。保存状態も良好です。これは、もちろん13世紀以降、コズマさんの時代に施されたもので、教会本体よりも後となります。ローマ周辺及び以南の教会では、コズマさんモザイク床との出会い確率高いですが、本当によく普及したもんです、こんな七面倒で金のかかる床面。それだけ、教会が儲かっていたということなんだろうなぁ。

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モザイクの床面は、踏まないでね、と注意書きがあり、柵で仕切られていましたが、こいつは堂々と飛び回っていました。

コズマさんは、ファミリーで長い間モザイク一筋でしたが、やはり初期のものが味があって好みです。おそらく、石色の褪せた様子とか、すり減った石の味わいがよりわびさびを感じさせるからだと思います。ここのは、まさにそういうものです。
おそらくほんのちょっと前までは、普通に上を歩けたのではないでしょうかね。

一部の壁面に、フレスコ画が見られますが、時代は結構下ります(13世紀)。傷みも激しく、正直、見たところで感動は薄い代物。

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説明としては、「修道院の歴史で、特に重要な出来事をまとめた絵画があり、歴史上の何人かの重要な人物がまとめられている。本人の作った「規則」を手に持ったサン・ベネデット、サン・リベラトーレ教会を捧げ持ち、サン・ベネデットに差し出しているテオバルド修道院長(教会は、彼によって、11世紀初頭になされたもの)。ローマの大司教テルトゥッロ(伝説によれば、いくつかの領土を修道院に寄贈した)。皇帝カール大帝と、そのパトロンであるサンチョ(ヴィッラ・オリヴェーティの領主)。」とありますが、どれがどれやら。

古そうな彫り物も、少しは残されています。

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そして、ここアブルッツォではお約束のアイテム。

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右側にある、説教壇です。これはアブルッツォでは実にもれなく置かれているんで、びっくりしますよ。装飾的な内容もとても似ています。

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12世紀の終わり頃のものとされているようですが、ここでは、あちこちにあった彫り物を寄せ集めで装飾にしたらしいんです。彫りの様子が緻密で、内容的にも永遠を強調するような様子は、他と似ているので、同時代、だけども、組成が寄せ集め、というのがある意味独特かもね。確かに、貼ってるというのか、はめ込んでるというのか、そういう様子がありあり。

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高度な腕を持つ石工さんが、この地域にはいたということですね。そして、その人たちが、一時期に、固めて仕事をしたって感じ。
個人的には、チボリオとか説教壇というアイテムは、そこを飾る彫りの面白さを除いては、あまり興味がないんです。むしろ苦手といってもいいかもしれないんですけれど、明らかに、時期や地域を限定して普及しているアイテムだから、きちんと整理して研究している人がいるんでしょうね?
説教壇について研究している人は、アブルッツォはマストとなるんでしょうね。

と、こんなわけで、苦労してたどり着いた甲斐のある教会でした。今年最後のオープン、という割には、誰一人おらず、それでいて親切な黒ちびにゃんこのガイドにあずかったりして、それもまた、大変良い思い出です。


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  1. 2022/02/21(月) 16:39:12|
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