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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

解説三昧(ロショーロ・ディ・マルシ その3)

アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その21

ロショーロ・ディ・マルシRosciolo di Marsiの、サンタ・マリア・イン・ヴァッレ・ポルクラネータ教会Chiesa di Santa Maria in Valle Proclaneta、続きです。

入ります!

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どどーん、というような衝撃でした。
いきなりイコノスタシス、それも木製の装飾部分とかあるし、狭さも相まって、まるでチヴィダーレ・デル・フリウリのテンピエットみたいじゃないですか。ずいぶんと後代の手が入ったりしているはずなのに、とにかく古い古い雰囲気で、いきなりトリップですよ。

今あるたたずまいというのが、前回の記事で触れた棟梁のニッコロさんによるものなんだと思ったら、どうやら装飾アイテムに関しては、ニッコロさんよりも後の時代の職人さんの作品らしいのです。
本があると、色々と勉強にはなるんですが、いい加減なこと言えなくなっちゃって、大変だわ。ニッコロさんは、入れ物を作った棟梁、ということになるようですね。

本の説明順路が、なんとなく自分の撮影と合うような様子があるので、素直にその順番で行ってみますね。

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入ってすぐ、右身廊の外側壁に引っ付いた位置にある、これはどうやら墓みたいです。1400年代のものらしいのですが、棟梁ニッコロが作ったものをもとにして、後の時代に他の職人さんが作ったとかそういうことらしいです。一応、そのニッコロさんの墓ということになっているらしいです。

一見して、自分に興味のない時代のものだな、と思ったのですが、よく見ると、それらしい浅浮彫がはめ込まれていたので、それが気になりました。

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テイスト的には、ちょっとプレロマネスクも入っているような、いや、単なるヘタウマ?というような、彫りものじゃないですか。
この脇にも、落書きみたいなロマネスク・テイストの超浅浮彫がはまっています。

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解説によれば、これら浮彫は、1080年までさかのぼり、他の場所に置かれていたものが再利用されているとあります。そんな気もするし、そうじゃない気もするし、というところですねぇ。

ちなみに、この変なフィギュアは、オリエントの影響あり、とされていて、上のやつは右側にあるんですが、髭面の顔でフリジア帽(フリジア人は、どうやら古代トルコあたりの民族みたいですが、間違ってるかも、です)をかぶったスフィンクス、この下のは、真ん中の天使たちを挟んで反対側にありますが、トサカも尾っぽも巨大な雄鶏。

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もともとこんな組み合わせじゃなかった可能性も高いし、全部の意味なんてなさそうだけど、雄鶏とスフィンクス?手は似てるようにも思うし、なんだろうね。

ロマネスク的には、他に気を取られて、見逃されちゃいそうなアイテムでした。

では、ロマネスク的に、もうちょっとわくわくするアイテム、柱頭を見てみます。

トップの写真で見られるように、あ、あまり見えないかな。もうちょっと分かりやすい全体写真。

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かなりシンプルな角柱が並んでおります。その上に柱頭があるんですが、これがかなりシンプル・イズ・ベスト的な。
単純に装飾的な植物文様やと、意味がありそうな図像学入ってるやつが混じっています。これらは、ニッコロ棟梁の時代のものとなるようです。つまり、10世紀の終わりごろとなりますが、研究者によっては、8世紀ごろまでさかのぼるとしている人もいるようです。

全部の柱頭を撮影したかどうか、定かではないのですが、説明があるものがあれば、頑張って解説してみたいと思います。
入場してすぐ右側の壁に引っ付いているやつ。

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彫りが本当に浅いし、これ、おそらく肉眼では厳しいと思いますが、写真でも結構分かりにくそうです。
左側の方の松ぼっくり状のぶつぶつは、ブドウの房。これはね、何度も学習したからね、分かります、笑。それを、右側からつついている鳩の姿、分かるでしょうか。で、右端の方でニョロっとしているのが蛇。拡大してみると、すっごくチャーミングなお顔してます。それぞれのフィギュアは、二重の星のフィギュアで分かれています。蛇は原罪、鳩は魂の象徴で、ブドウをついばむ鳩は、救世主の血液による恵みをのシンボルということになっているようです(ブドウ=葡萄酒=血液)。
もう、解説見ちゃうと面白いけど、日が暮れますな。

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四面とも渦巻き文様です。例によって永遠のシンボルとかあるかと思ったら、彫りの練習?的なことが記されており、拍子抜け。
10世紀頃だと、やはり、わたし的には、永遠、ということで、お願いします。勝手に言うやつなんで、賛同は不要です、笑。

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ここは、植物文様で、普通に装飾的なモチーフ、ということで、私も納得。これは、彫りがしっかりしている印象です。このくらいなら浅浮彫といっても、肉眼でも結構見えるくらいの陰影を作れる深さなんですよね。あまりに浅いと、光を当てても分かりにくいです。

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お花はマルゲリータと特定しているみたいです。
左側のやつは、真ん中の円の中に、恐竜の赤ちゃんみたいな子がくるりんとしててたり、上の方も隙間を埋めるようにヤモリみたいのがキツキツでいたりして。
スペースに合わせた装飾デザインというところ。
解説読んじゃうと、いつもみたいに単純に、ラブリー💛とか言って終われなくなっちゃうなあ。ちょっと後悔中。終わらんで。
でも、面白いっちゃ面白いんで、読む方は退屈かもしれませんが、いや、ほとんどの方は、ここまで読んでないと思うんで、じっくりやろうと思います。

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  1. 2022/03/01(火) 16:42:28|
  2. アブルッツォ・ロマネスク
  3. | コメント:2
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コメント

素晴らしいです

 毎回、とてもとても楽しく拝見しています。とりわけ今回は絶品です。筆力がおありで、優れた小説を読んでいるような酩酊感があります。
  1. 2022/03/03(木) 07:11:20 |
  2. URL |
  3. Kikuko #-
  4. [ 編集 ]

Re: 素晴らしいです

Kikukoさん
訪問およびコメント、ありがとうございます。
それはほめすぎですよ~。でも、楽しんでいただけているなら、本当に嬉しいです。なんせ、読者、すっごく少ないと思うので、笑。
アブルッツォについては、紹介もあまり多くはないと思うので、そして、行かれている方も少ないと思うので、多少の意味はあるかな、と思いつつ書いていますが、でも、イタリア語読むのはいまだに日本語のようにはいきませんので、苦戦しています。情けないですねぇ。
  1. 2022/03/03(木) 15:50:19 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

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