アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その30
この辺りって、さほど広くもない上に、起伏がある土地柄、道の選択肢は限られるので、同じ場所を何度も行ったり来たり、ということが、頻繁に起こりました。
今回の記事の教会も、そういう道にある教会なんですが、まさに道沿いに建っているので、最初に通った時にすぐ気付いたのですが、駐車する場所がないじゃん!とそのまま通過しました。
いつまでたっても、運転に余裕がないっていうか、突然の対応って無理。
見学の時は、道を挟んだ反対側にある村でランチを取ったので、そっち側に車を置いて、歩いてアクセスできました。

ブッシ・スル・ティリーノBussi sul Tirinoのサンタ・マリア・ディ・カルティニャーノ教会Santa Maria di Cartignanoです。
立地は、こういう様子なんです。

国道SS153を挟んで、右の方が村で、左はほぼ何もなし。道を走っていると、この教会には絶対気付くんですけど、教会に目が行っちゃうので、右に村があることに気付かず、そして、特に南の方から来ると、気付いたからとて、村に簡単に入れる作りになってないんですよ。
それも、国道は、交通量はすごく多くはないですが、どの車も結構スピード出しています。
今だったら、村から教会側に渡るのが怖くて、いつまでもたたずんでしまいそうです。事故の後、どうもトラウマがすごくて、横断恐怖症になっています。

村側からは、こういう状態で、教会にアクセスできるような横断歩道もありません。
ま、それはともかくとして、トップの写真で分かるように、ここは完全に廃墟となっています。わたしが訪ねたのは2018年11月でしたが、工事の柵が張り巡らされていました。
掲げられていた工事の看板では、修復工事は、2018年4月に開始されて、120日後の同年8月に終了と、明確に記されていましたけどねぇ。
さすがに今は、もう工事中ではないでしょうね。

とても古い教会で、創建は11世紀とされています。当初は小さな礼拝堂だったようですが、同世紀後半には、修道院となったようです。しかしながら、16世紀にはその機能もなくなり、ほぼ使われなくなっていったようなんです。
18世紀後半に、教会は「三身廊、三つ後陣、祭具室、北部に大きな扉、そして東方向に他の小さな扉、これらは1200年代のもの」という記録があり、つまり教会としての建物の状態は、当時も、比較的保たれていたようなんですが、1800年代以降完全に放棄され、荒れるにまかされてしまったということのようです。その上に、度重なる地震のため倒壊が進み、とうとう屋根も落ちてしまった、という寂しい歴史の教会です。
そのような状態の中、よくぞ、と感心するのですが、前世紀になって、発掘や修復が実施され、建物の一部が再建築され、それが今存在する姿となっています。廃墟であることに変わりはないのですが、もとはこうだったのかな、という様子を想像できるような形にはなっています。

一応、周囲をぐるりと歩けるようにはされていて、後陣側。
とてもシンプルな構造で、この辺りの教会の雰囲気満載。地味なんですよね、基本。
内部は、三つの後陣がある三身廊様式となっていますが、外側は、中央部の後陣だけが突き出しています。ブラインドアーチで、わずかに装飾的なものがありますね。

浮彫というより、記号の線彫り的な…。
何か装飾したいという気持ちは伝わってきますが、適切な職人さんを使うことができなかったということなんでしょうか。ロショーロも近いんですが、あそこで12世紀に働いていた職人さんたちにも、頼めないレベルだったんでしょうか。でも、小さな礼拝堂のままだったらともかく、修道院になっていたということだし、ちょっと不思議です。
最寄りの村ブッシは、今でも小さい村ですが、おそらく当時は修道院の門前町があったかなかったかという規模だったと想像しますが、それにしても、ロショーロよりは平地だし、今は国道になっている道も、古くからあると思えるんですよねぇ。
まぁ、北上しても山間に入るロケーションだから、当時は交易的な人の行き来が少ないなどの理由もあったのかな。

ファサード側も、まったく地味です。
扉周り、アーキトレーブもリュネッタもほぼ無装飾で、ただ一枚の葉が置かれただけ、とあるのですが、この距離でしかアクセスできず、葉っぱの彫り物は分かりませんでした。
ファサードの中央に、バラ窓がありますが、ファサードのサイズ感からすると、小さいものですね。

放射状に並べられた小円柱で形作られています。この支えというか、装飾的な部分は、彫りが入ったりして、一所懸命作っている感は感じます。
でね、ここを拡大したら、バラ窓の右情報の方に、線彫り系の何かがありました。

何かって、まぁどう見てもお花ですね。
小さめの切り石一つに彫られているので、積まれる予定の石に、誰かが彫っちゃって、とか?すごく唐突。でも、他からの転用とは考えにくい、後陣側の線彫りにも共通するものです。
でも、こんな地味な様子ですけれど、実は後陣にフレスコ画があったんですね。残念ながら、というより廃墟なんだから当たり前で、よくぞ救済されたと思うんですが、現在ラクイラの国立博物館に所蔵されているということです。
これは、事前に分かっていれば、見たかったやつです。

お借りした写真ですが、ビザンチン系の洞窟教会にありそうじゃないですか。何で、事前にチェック入れてなかったのかなぁ。調査が半端でしたわ。
その他、彫り物もあったようで、それはブッシの村の教区教会に保管されているともありました。もう全然ノーチェックで、がっかりよ、自分に。
どこでもかしこでも、再訪むべなるかな、という結論になりますねぇ。
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イタリアぼっち日記
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- 2022/03/20(日) 17:18:01|
- アブルッツォ・ロマネスク
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| コメント:2
このバラ窓、 すてきじゃありませんか。たしかスペインでこういうのをみたことがあります。 外されてどこか壁にたてかけてあったような。 やはり や のところが柱になっていました。
花びらの彫り物、 花びらが 六弁ですね。何の花のつもりなのでしょうか
- 2022/03/22(火) 05:52:38 |
- URL |
- yk #C8Q1CD3g
- [ 編集 ]
ykさん
そうそう時々、外されて置かれてることありますよね。そうすると、え、こんなでかいの?と思いますよね。
これも、小さいですが、目の前にあれば、結構な大きさなのでしょう。
花弁、今を盛りの、桃みたいに見えますが、六弁ってことは、どっちかというと野の花系ですかね?
- 2022/03/22(火) 12:14:39 |
- URL |
- Notaromanica #-
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