アブルッツォ週末ロマネスク修行(2018年11月)、その39
ピアネッラPianellaのサンタンジェロ教会またはサンタ・マリア・マッジョーレ教会Chiesa di Sant’Angelo or Chiesa di Santa Maria Maggioreです。
前回、ファサードの紹介の中で、一つだけ言及できなかったアイテム、バラ窓からです。

ファサードの全体から見ると、バランスの悪い大きさになっています。それで変に目立っていますが、内部への光の取り込みが目的だったとされているようです。
これも、扉上のアーキトレーブなどを作った棟梁Acutoさんによるもので、内部にある装飾アイテム同様のモチーフを使った、豪華なものとなっています。

確かに、車輪みたいな部分、凝っていますね。円柱に柱頭にアーチみたいになっていて、それぞれ異なる細かい彫りが施されているのが分かります。実際に、ファサードを見上げる形で肉眼で見ても、こんな細かいところまでは見えるわけもなく、そういうのが、こういった宗教建築装飾のすごいところだと思います。認識されるものではなくても、細部に手を抜かない。だからこそ、全体の美しさが高まる、みたいな。
千年後にこうやって、拡大されまくりで、ここまで細部を見られちゃうとは思いもしなかったことでしょうね。あ~、そんなことなら、やっぱりあそこ、もうちょっとやっとくんだったよ~とか思ってたりしてね、笑。
バラの周囲は、凸型っぽい葉っぱです。扉周り同様、ここも、AcutoさんとVincavaleさんのコラボということになるのかな。または、Acutoさんが、流れ者の職人からすら新しい技術を取り入れて、しっかり自分のものとしたという証の作品になるのかもしれないです。
そういうのも、考えると面白いところ。
地場の職人さんがいる中で、ロマネスク時代辺りは、流しの職人さんが結構うろうろしていたわけですよね。職人さんといっても、聖職者だったりするわけで、巡礼と同義で、建築現場を渡り歩くみたいな人達。
地場の職人と流しの職人さんの関係とか、それを統率する棟梁とか、ドラマがありそうです。流れ流れて、まさかこんなところで終わるなんてなぁ、なんて人生もあったんでしょうし。
現代でも、工事現場って、結構外国人が沢山いる職場と思うんですけど、理由は違えど、国際的っていうのは、なんか面白い。ラテン語出来ないと仕事もらえない、とかあっただろうよね。
さて、そうこうするうちに、だいぶ日暮れが近づいて、やっと鍵番さんが来てくれて、中に入れることとなりました。

中も、しっかりとレンガ造作で、細かめのレンガが作り出す色の遊び的なものが、美しいものです。煌々とした明りで、ちょっと明るすぎるくらい、風情に欠けますけど、有難いことです。
12世紀ごろの構造が基礎としては残っているようですが、やはり天井は、15世紀に持ち上げられたようです。前回の記事で、ファサードのアーチが気になりましたが、やはり、あれがオリジナルの屋根の高さだったということですね。
全体にがらんとしているのですが、オリジナルでも、割とこういう感じだったのかな。
ここで見るべき装飾は、やはり説教壇。

左身廊に、一面を壁にくっつける感じで置かれています。これは、ちょっと珍しい置き位置のようにも思えます。だってね、下の写真、明りをつけてもらう前で、暗いんですけども、後陣向いた一枚。

左身廊の壁付けって、信者席と離れちゃって、説教壇としての役割が果たせないと思うんですけど…。そもそも存在が薄いし。上の写真だとよくわかると思うんですが、扉口付近からは、目につかないんですよ。
反対側の身廊から見ても、奥まり感が明らかです。

どう考えても、ここにあったとは信じがたいですけれど、と言って、自分で探した範囲では、どこにもその辺への言及はなしです。研究者よ、素直に自分の目で見たものを語ろうぜ!疑惑を解明しようぜ!と思っちゃう。だって、疑惑じゃないですか?装飾の説明もいいけど、ここは、置き場所の方が、謎だし興味ある。
装飾は、二面がそれぞれに分割されて、それぞれに福音書家のシンボルが彫りこまれているというもので、特に解説の説明もないような図像となっています。

マッテオとルカを表す天使と牛。周囲の装飾的な帯がすごいな。自分の腕を見せつけたかったかのような。
でも、ここでも、カペストラーノで出てきたと同じドラゴンがいますよ。わかりますか?
カペストラーノの方が、解説は沢山読んだんですが、Acutoさんの名前は出てこなかったと思います。でも、もしかして、売り込みかけてたのは、Acutoさんだったのか?あまりに同じ過ぎるから、どう考えても、もとは同じなはずで、単にこの地域ではやって、当時は著作権もないから、マネし放題、というだけのことかなぁ。
この説教台、なぜAcutoさん作か分かるかというと、名前が彫られているからということなんで、まさか自分の自信作に、真似モチーフは彫らないだろうから、とすると、Acutoさんのレパートリーだった、ということになるのだろうか。
というところでちょっと検索したら、カザウリアでも働いていたらしい、というのが出ていました。ということは、「Acuto™」ということになるのかもね。

アップで見たら、周囲の帯も同じ装飾だもんね。すべてきっちりコピーそのものですよね。

中央身廊向きになっている面には、ヨハネとマルコを表す鷲とライオン。
それにしても、ファサードにあるアーキトレーブの彫りに比べると、やけに緻密で、粘着質的な彫りじゃないですか。それも、台がマットで、この、すでに彫りというよりは彫刻になっているものたちが置かれている様子なんで、くっきり感がすごい。

いかにも、しっかりした技術を持った人が、ちゃんとした道具を使って彫った芸術品、というレベルで、なんか違う…。
同じ、「人」ということで、天使をアップしますけれど。

素材とか保存状態の違いとか、色々あるとはいっても、これは違い過ぎじゃないですか?

どっちかは、工房の他の手。Acutoさんの工房には、すでに師匠の上を行く技術者がいたのか。
その人が、実はドラゴン・モチーフを、師匠に黙って、売り込んでいたのかもしれないし、笑。
ちょっと長くなってしまいますが、一緒にフレスコ画も見ていきましょう。
フレスコ画は、全体に時代が下るので、私には訴えるものが、ほとんどありませんでした。写真で見ると、悪くはないんですけどね。

この、メインの後陣のが、おそらく一番古い時代ので、それでも12世紀終わりから13世紀にかけてというところらしいです。剥落も激しいですが、一部残っている人物を見ると、ビザンチン入ってるかなっていう様子があります。

目力がすごかったり、お口の表現がビザンチンぽいんじゃないか、と感じられます。
後は、14世紀から16世紀くらいになってしまうので、割愛します。
最後に、こういうレンガ造りですが、地味な様子で柱頭があり、素朴で好ましいものでした。

多分、夕食の支度とかある忙しい時間だったにも関わらず、来てくださった鍵番さんに大感謝して、もちろんいくばくかの心づけをお渡しして、辞去したら、もうすっかり日が暮れていました。

宿までは大した距離ではなかったのですが、田舎道だから怖かったですし、外食は面倒なので、食料品を仕入れて帰るつもりでしたが、食料を買えるお店を見つけるのに、また相当うろうろして、それも基本、街灯が少なくてすっごく暗い道が多くて、苦労しました。やっぱり、冬の旅は厳しいです。
でも、そういうオフ・シーズンなのに、こうやってお願いしたら開けてくれる鍵番さんシステム、実にありがたいことです。今や、そういうことができる場所は減るばかりですからねぇ。
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- 2022/04/06(水) 20:59:13|
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