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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

中世の建築技術もすてたもんじゃないよね?(トルチェッロ島 その3)

ベネチア島巡り(2018年12月)、その3

今回は、カテドラルのお隣にある、サンタ・フォスカSanta Foscaです。トルチェッロといえばイメージとしては、こちらの教会かも。見た目が印象的なスタイルなので、カテドラルより百倍フォトジェニックですし。

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趣がありますよね。
本島からの水上バスで島に来て、この、かつての島の中心部まで細い運河沿いを歩いて、最初に目に入ってくるのが、サンタ・フォスカなんです。カテドラルはその後ろ側にあるという位置関係なんです。
この、サンタ・フォスカの前面は何もない空間で、今の教会が、実に孤高な状態になっているのが、いやでも全体として見えることで、なんというか、諸行無常的な?夢の跡的な?風で消えてしまう砂絵的な?

どっちかというと日本人が好むような、そういう儚いイメージと結びつきやすいので、冷静な愛着を感じる一瞬です。あ、なんかかっこいいこと言ってますが、実際に行かれると、この印象、分かっていただけるかと。

そういうイメージに合うのは、やはり比較的人の少ない冬がお勧めかもね。ちなみに、この時12月ですが、トルチェッロよりも本島よりのムラノやブラノは、相変わらずの大混雑でした。トルチェッロは時間がかかるので、一般的なツーリストは、なかなか足を延ばせないという事情もあるのです。
実際、私もベネチアは年に一度は訪問しているものの、島に行く時間があることはないですからね~。

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人が多い時期には、手前の道に、お土産屋が回転しているのだと思います。昔はそんなのもなかったと思いますが、ということは、やはりよい季節は、それなりに訪問者もあるということでしょう。

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前回の記事で登った鐘楼からの写真ですが、残念ながら、全体の俯瞰図を撮影するには鐘楼は若干低くて、こういう時ドローンがあれば、面白いのになぁ、と思うわけですが…。

建築プランはギリシャ十字型ですが、トップの写真で見られるように、周囲がポルティコで囲まれている構造となっています。
ポルティコと本堂はつながっている構造なのですが、正面からのスタイルは、一見、スペインのエウナーテだったかな?あんな様子にも見えますね。

正面には、美しい彫り物装飾がいくつかあります。

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美しい十字架。うっとりするやつ。
入り口扉脇にも、いくつか、どっか他から持ってきた風のものがあります。

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この肉色系ピンクの壁は、古色蒼然な雰囲気も出ていて、緑と空の自然色の中では、意外とマッチしているのだけど、こういう風に見ると、ちょっとダサい感じがしますね、笑。
でも、この系統の色って、なぜか私は古い雰囲気に感じてしまいます。ガルダ湖畔のバルドリーノだっけか?あそこにあるロンゴバルドの教会なんかも、色としてこういうイメージ。なんでだろうね?

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すっごい好きなやつ。ロンゴバルドですよね。初期キリスト教とかなのかな。

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かわいすぎます。
この、縁取りになっている波文様と勝手に読んでるやつの帯装飾、すごく好きなんですよねぇ。こういうの、サイズが5分の1くらいでいいから、欲しいなぁ、と常々思っています。
漆喰固めて、彫ればいいのかな?将来、暇が出来たらやってみっか?

さて、ここで、実際の訪問時同様に、本堂に入ります。

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あれ?と思われるかもしれませんが、内部は四角なんです。外側、上部がクーポラだし、規模的にも全体が円形と普通だったら考えるところ。実際、このようなスタイルは非常に珍しいようです。建築的には、異教の神殿を彷彿とさせるというところもあるようです。
教会の起源は11世紀となっていますが、彫り物装飾などからも、それ以前にやはり何かあったのでは?という感じですね。

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十字が交差する部分に、クーポラが乗っかっているわけですが、その直下で、四角が円形に変容することになり、上の写真で、円形の周囲にボコっている縦置き二つの穴が、その変容のためのアイテム。

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非常にシンプルで、内部に限って言えば、まるでシトー派的な。

ちなみに、教会がささげられているフォスカさんですが、その生涯については次回記すつもりですが、FoscaはOscura(薄暗闇)という意味も持つのだそうです。ある解説では、この教会の暗さと、小さな開口部から漏れてくるわずかな明りとがもたらす光と影の遊びが印象的なことは、その名前から偶然ではない、とありました。

確かに、本来なら相当な薄闇であっても当然な様子のつくりで、目立つ開口部はないも同然なのに、適切に光が入ってくる構造にはなっているんですよね。

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わたしは、よほどのことがなければフラッシュはたかず、ISOを最高に上げて、普通のオートモードで撮影します。自然光がほとんど入らないとか、入ってきても窓がアラバスターであったりすると、さすがにぶれることも多いのですが、ここでは、結構鮮明ですから、光量は十分だったということになります。ちなみに、こういう時、現場では、もっと薄暗い状態です(写真の方が明るくなる感じ)。


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  1. 2022/06/02(木) 09:48:31|
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