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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

レンガの好み(トルチェッロ島 その4)

ベネチア島巡り(2018年12月)、その4

サンタ・フォスカSanta Fosca、続きです。
ここって、全体のたたずまい、とっても魅力的なんですけど、中でも外側の後陣部分、びっくりします。正面からのイメージとかなり違うんで、初めて出会ったときは、意外感に打たれました。

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レンガ積みで、その点だけでも、ファサード側からは相当イメージ違います。そして、レンガでの装飾ぶりが独特で、レンガの特色を生かしたっていうのか、すごく好きです。

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下の方は、大理石の半円アーチ、つけ柱やアーチ部分の彫り物とか、ロマネスクな雰囲気です。往時はきっと、どのアーチ部分にも、このような繊細な彫り物装飾が施されていたと想像しますが、今に残っているのは、ほんの一部です。柱頭も、もしかしたら、彫り物があったのでは?と想像しますねぇ。

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そして、お足元の方に、ちょこんと十字架が飾られていたのは、今気付きました。

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こんな場所になぜ?です。

そして、上の方は、まさにレンガ装飾全開。

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レンガって、自分の暮らすロンバルディアでも多用されていて、なんていうのかな、建材としてすごく好きかというと必ずしもそうじゃないんだけど、目は慣れているから受け入れやすいところはあるんだけど、建物によって、好き嫌いが分かれやすい建材なんですよね、私には。
以前は、そういう感覚的な見方しかなかったんですけど、そしてそういう見方で言えば、この地域で見られるレンガの後陣はすごく好きなんですけど、テッサロニキでビザンチン建築を固めてみる機会を得た今では、なるほどこれがビザンチンなのであるな、と建築学的な見方を獲得いたしました。

テッサロニキに数多くある教会建築のほとんどがレンガで、その装飾の面白さときたら。自分が苦手な幾何学的なモチーフも含めて、石や漆喰への彫り物装飾とは違う次元で、すごく好きだと思います。
で、ベネチアのビザンチン度合い、なるほど、と実感できる後陣です。

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ここでは、大理石の帯装飾が加わるのもよいですねぇ。
レンガの端っこをギザギザに出したり、三角で模様を作ったり。こういうのって、光が差すと陰影ができて、光と影の遊び的な部分も考えられているのでしょうねぇ。現代だと、人工的なライトアップなどでも、とても面白い姿になるやつです。

前回の記事でもちょっと触れたフォスカ、暗闇をも意味するお名前のフォスカさんにも、ちょっと触れておきますね。

フォスカさん、というよりフォスカちゃん、かな。彼女はラベンナの異教の家に生まれたのですが、15歳にして、キリスト教者になることを望み、それを乳母のマウラさんに打ち明けて賛同を得て、二人して洗礼を受けてしまうのです。しかしながら父親はそれを許さず、二人を訴え出ます。
官憲が、二人を捕まえに来るのですが、守護天使に邪魔されて、捕まえることが出来ませんでした。しかし二人は、自分たちの信念につき、逃げも隠れもする必要を感じずに、自ら出頭し、殉教することを覚悟します。その後拷問を受け、最後は斬首刑を受け、遺骸は海に投げ込まれてしまいます。遺骸は、シリアに流され、その地で埋葬されていたのですが、1011年、あるキリスト教者である船員が、霊感を得て、遺骸をトルチェッロに運んだということです。

稚い少女が、盲目的に信仰に走るということで、ローマのサンタ・アニェーゼを思い出しました。

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上は、ローマのサンタ・アニェーゼにある彼女の姿です。奇しくも、黄金の背景に、すっくとたたずむ少女、というより、ずいぶん大人の女みたいですが、彼女も10代の少女だったと記憶します。
サンタ・フォスカも、こういうモザイクがあったとしても不思議じゃないのになって、ちらと思ったんです。
でも、お隣のカテドラルに、同じようなスタイルで聖母がいるから、それはできなかったのかな。いずれにしても、サンタ・フォスカの内部には、モザイクのかけらも残っていないので、やはりないもなかったのか、でもでもビザンチンなんだし…、と妄想が膨らみます。

もう一度、正面の方に回ります。

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ちょっとつるんとするくらいに修復もされちゃっていますが、ここの柱頭もかなり古そうなものです。

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こういう場所って、どうしても妄想が暴走しますよね。って、こんな場所、めったにないと思うんですけども。
人が少ないせいなのか、なんだかね、こんな野生の子が、後陣見学に、ずっとついて回ってくれたりしたのも、夢の跡にふさわしいようなことでした。

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そして、こういう場所にはお似合いな子も、もれなくおりました、笑。

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ベネチアはいつか沈むと言われて久しいですが、そしてそれを防ぐために高波防止のモーゼシステムとか莫大な投資をしてもあまりうまくいってなかったりもするようですが、そうは言いつつ、イタリアも結構色々頑張っているようですな。
実は先日ピサに行ってきて、久しぶりに奇跡の広場を訪問しまして、斜塔の斜塔ぶりにあきれたんですけれど、絶対倒れるようなものを食い止めている執念みたいな文化財保護には感服したんですよね。
というわけで、おそらく私が生きてイタリアにいるうちに、ベネチアがなくなることはなさそうだし、トルチェッロにももう一度くらいは行けるかな、と期待しています。やはり、カテドラルのファサード裏のモザイクは、もう一度見ときたいものです。

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教会の向かいに、かつての司教館かな?
そちらは、博物館になっていて、確か共通チケットで入場できるんだったと思います。忘れず、見学してくださいね。

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また会える日まで、しばしのお別れです。

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  1. 2022/06/04(土) 15:13:19|
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