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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

この後ろ姿はすごい(ムラノ島 その1)

ベネチア島巡り(2018年12月)、その5

以前あったホームページにはあげたことがあったのですが、ブログには、ちゃんと記事にしていないようなので、この島めぐりに合わせて、一応ムラノ島についても、書いておきたいと思います。
といっても、過去のホームページの記事がありますので、それを転用しつつ、加筆したりしたいと思います。ホームページの記述は2008年で、それが、どうやら、初めてのトルチェッロとムラノ島への訪問時期だったようです。すでに10年以上前になりますねぇ。

今回掲載する写真は、それよりはちょっと新しいものとなりますけど、それとて、一部10年前だったりします。そうちょくちょく行ける場所ではないってことなんですよねぇ、やはり。

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ムラノ島Muranoのサンティ・マリア・エ・ドナート大聖堂Basilica di Santa Maria e San Donatoです。

ムラノ島は、トルチェッロよりも少しあとから栄えて、千年位には結構な人口があったようです。そして、1291年法律によって、 本島での火事の危険を回避するために、すべてのガラス工房がこの島に移され、それ以来、ムラノは現在に 至るまで、ガラスの島として世界中に有名です。
漠然と、ガラス産業を集約したのがムラノ、つまり、そのために繁栄した、みたいな印象を持っていたのですが、ガラスは後付だったのですね。

今でもガラス工房が沢山あり、観光客の数もすごいです。
昔「地球の歩き方」などで、悪質なガラスの押し売りに騙された、とかいう投稿がよく出ていましたが、私など、一度はそんな目にあってみたい、逆切れしてみたい、みたいな不穏なことを期待して、島に渡ったものですが、どう見ても金持ちには見えそうにもないいで立ちでも、大変親切な営業トークを受けたことはあっても、悪質な押し売りみたいなものはついぞ誘われたこともなく…、笑。

それはともかく、ここは島の規模が本島の何十分の一しかないような狭さで、建物の背も低く、全体にこじんまりとしていて、今のベネチアも当初はこういう感じだったかも、と思わせるような風情があります。といって、あまりの観光客の数に、あまりしみじみ、とはなれないのが残念なところです。

そのような島のほぼ中心に、ドゥオモはあります。

創建は7世紀だそうですが、今の建物は、12世紀ロマネスク様式です。どでかい、というほどの規模ではないのですが、とにかく立派だ、という印象を受けるのは、町の方からアクセスすると最初に運河の向こうに姿を見せる、その後陣の佇まいのせいか、と思われます。それがトップの一枚となります。
この後陣側には小さな運河があり、ベネチアらしい小さな太鼓橋がかかっていて、アクセスは、なんというか、格別な雰囲気となっています。

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後陣、二階建てになっていて、実に美しいです。
連続半円アーチや三角モチーフ、ギザギザ軒送りなど、 とても細かい仕事が、また非常に美しく仕上げられているのです。
前回記事にした、トルチェッロのサンタ・フォスカの後陣とも共通する様式ですが、あちらは後陣が狭い場所に押し込められていて、どちらかというとファサードをフューチャーするポジショニングになっていましたよね。こちらは、真逆で、後陣フューチャー。

ふと、方角がどうなっているのか、確認したくなりました。
ムラノでは、後陣がきっちりと東向きになっており、サンタ・フォスカは、45度傾いていて、東南向きになっているようです。これは、お隣の創建が古いカテドラルと平行になっているので、異教時代の古い建物に合わせて、東後陣にこだわってなかったということなのかな。
そういう歴史の教会が多いローマなどでは、建築的には中世以降のものでも、後陣の向きが結構バラバラだったりするのと同じことなんでしょうね。

ただ、なんだろう、このムラノのカテドラルの後陣は、規模もそうだけど、完成形的な様子ですよね。ビザンチンのレンガに、当地の石の組み合わせ的なスタイル。

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レンガは、とにかくきっちりと積み上げられて、遊びの余地がないのに、その積み上げやアーチによって、装飾的な効果をもたらし、またのこぎり歯帯などのバリエなどが、魅力的なんです。レンガの色も、微妙に違うのが面白いです。
レンガは、焼成温度とか、原料の土などで、最終的な色が結構変化するらしいんですけれど、中世当時のレンガっていうのは、色のバリエが豊富で、どういう風に作っていたか、分かっていないという話を、過去に研究者の方に伺ったことがあります。

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歴史が長いと、修復される部分も出てくるから、その時々に焼かれたレンガも混じることになりますよね。それで、さらにバリエが出てきたりして、どんどん分からなくなってくる、みたいなこともあるのかな。
こんなさ、局面をレンガで組み合わせて作るとか、なんかすごいなって感心します。

これはきっとビザンチンの技術なんでしょうね。ここでも面白いのは、ビザンチンをベースに、当地での石の彫りなどの技術、そして、ラベンナで栄えた、純粋プラスアルファなビザンチンの要素が融合していること、と解説されるようですが、まさにね。

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この三角部分は、石かと思ったけど、もしかすると漆喰の可能性もありますね?
そして、レンガの色、この黄色いタイプは、どこから来たのか。すごい色のバリエ。

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よく思うことだけど、肉眼では絶対に細部まで見えるはずもない場所に、きっちり細かく装飾的な手を入れるっていうのがね、やはりすごいことです。
おそらく古い時代の教会にあったのであろうと考えられる石版彫り物が、ここでも壁のあちこちにはめ込まれています。

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この手の彫り物は好きすぎて。
にょろにょろ的な波モチーフの帯、良いですよねぇ。全体ににゅるにゅるした様子が、何ともいいです。

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この辺も、壁のようにはめ込まれていますが、おそらく古い時代の教会にあった装飾だと思います。
ちょっとね、レンガも含めてお掃除行き過ぎじゃないの、位にピカピカで、なんならわざとらしいくらいなんだけど、排ガスとかないから、一度徹底的にお掃除すると、持っちゃうのかもねぇ、どうなんだろう。

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これなどは、ちょっと空間恐怖なイスラム的なテイストも感じてしまいますね。
わたしの好物は、やっぱりこっち系だな。

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日々の生活をつづる別ブログです。以前はこちらで上げていた、ミラノのフオリサローネ、今回からは別ブログで上げていますので、ご興味あれば、以下に飛んでくださいね。
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  1. 2022/06/11(土) 16:57:55|
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