ベネチア島巡り(2018年12月)、その6(最終回)
ムラノ島Muranoのサンティ・マリア・エ・ドナート大聖堂Basilica di Santa Maria e San Donato、続きです。
とても華やかな後陣に目を奪われて、地味だけれども、ところどころに古い時代の浮彫がはめ込まれた側壁を回り込み、ファサードに来ると、一瞬目を疑うかも。
地味すぎて、笑。

よくよく見ると、細かいレンガ積みが結構美しい色彩を作り出していて、あ、これはビザンチンぽいな、と昔訪ねたときには、ただ自分の無知のために見出すことが出来なかった美を感じるようになった今、ちょっと違う印象は受けます。といっても、地味なものは地味なんですけれど。
ラベンナ様式のファサードである、という解説を見ました。
ラベンナ様式、というのは、あまり認識していないのですが、ビザンチンをベースにした様式ということになりましょうかね。なるほどね。そういわれれば、ラベンナっぽいのかも。
中央部分が三分割されていて、トップは、二連のブラインドアーチ。そして中央部には小さな二連窓。
もしかすると、基礎部分の建材は、本土から人々が移住してきたときに、持ってきたものも使われているかもしれないそうです。

このファサードに向かって右側に、結構離れて、立派なサイズの鐘楼が建っています。12世紀の、こちらもレンガ性の四角い塔となります。
表面のつけ柱などの装飾で、三段になった上に、鐘のスペースが乗っけられています。一番下は、三つのブラインドアーチ、二番目と三番目は二つのブラインドアーチ、そして鐘の部分は、三連の開口部となってますね。これが、ローマだと、どの段も窓にして、スカスカというか、レースみたいな作りになりますね。
それにしても、教会とは結構距離があって、ちょっと不思議な位置関係です。
中に入ります。ここは、トルチェッロに比べたら、格段にアクセスもしやすい場所なので、訪ねた方も多いでしょうから、驚きはないと思いますが、後陣モザイクは、何度見ても、息をのむ神々しさがあります。

トルチェッロも同じような構図ですが、あちらは聖母子。一方こちらは、マリアが一人祝福もポーズを取っていて、その上、他に何もないすっきりさで、孤高で崇高な印象がより強いです。
衣の青の鮮やかさも、素晴らしいです。

アップにすると、表情だったりのビザンチン感がすごいです。遠目の方が、マリアの雰囲気は好きかも、笑。
それにしても光背の色使いとか、とにかく細かい鉄鎖らの一粒一粒が際立って、この執念には、なんというか、感心しますよねぇ、やっぱり。
で、今更ながら、点々で表現するモザイクの技法が、スーラの点々とか印象派の技法なんかにも影響を与えたのかも?とか、ふと考えたり。
この教会では、床モザイクもまた素敵なんです。

この手の具象モチーフが、一番古い時代のものと思います。1141年となっています。
オートラントを彷彿とさせるプリミティブなものですが、愛らしいですよね。そして、ここは踏み放題です。オートラントみたいに、椅子で隠す癖に柵も遠いみたいなタカビさゼロ。ってか、古いのは、踏めないように囲んでもいいじゃないか、と正直思うのですけどねぇ。

技法が色々混ざっているので、すごく複雑な、というか、ごちゃごちゃな床面になっているのが、また面白いです。

このグリフォンらしいペアの右とか上は、幾何学モチーフになっていますよね。ここは、グリフォン部分をリスペクトして、幾何学模様を入れていますけれど、場所によっては、具象部分を壊して、幾何学模様を優先したらしいところもあるんですよ。

ね、この手前のは、ライフ・ツリーとか、単なる植物か分かりませんが、そういう具象が、もっと大きなスペースであったはずなのに、幾何学模様に侵食されています。これは別にコスマーティではなくて、コスマーティより前に、こういうのがあったはずなんですよ、すでに。それが出始めた頃なのかな。あえて流行を取り入れよう的に、具象と組み合わせたのかなぁ。

ちょっとクールな幾何学模様と、ヘタウマみたいな変なモザイク、笑。これは楽しいですよね。

これなんかも、波っぽいモチーフはローマのテイストだけど、正確性に欠ける中世的なモザイクで、その周囲には、結構きちんとした幾何学模様なんだよねぇ。面白い。それにしても、パステルカラーの色石が、めっちゃ可愛い。

白黒モザイクも、ローマテイストに感じるんですが、やっぱりグネグネしてて、正確さがないのが、中世っぽい。でも、モチーフはセンスありますよね。そのグネグネも味になってるっていうか、ちょっと眩暈する的な。
不思議なのはさ、小円柱のたてはグネグネしてるけど、柱頭の上部、アーチが出るところ、横線がかなりそろってて、逆に変じゃない?なんでだろう。
まぁやっぱり、こんなのがたのしいですな。

このところ訪問していないので、どうなっているのかな。今も踏み放題かしら。まぁ、千年から持ったので、大丈夫でしょ、ということなのかなぁ。
それにしても、中は、ほとんど新しくて風情もなくなっているのに、床面と後陣モザイクは、よく残ったよな、と今更感心しています。
そうそう、このモザイクは、当時の芸術家技術者へ大きな影響を与えたもので、例えばポンポーザ修道院では同様の技法が使われている、と。そして、大理石と、色ガラスで作られたペーストによるものなんだそうです。だから、様々な色がつくれるんですね。
ポンポーザといえば、やはり幾何学系だから、12世紀の頃がそれ主流だったということで、やはり具象系はもっと古いということになりそうです。
駆け足でしたが、これにてベネチア島巡り終了です。
今度はどこ行こうかな。
今、フオリサローネのレポートで忙しいので、ちょっと間があくと思います。
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- 2022/06/18(土) 17:24:14|
- ヴェネト・ロマネスク
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| コメント:2
トルチェーッロ島もムラノ島も懐かしく拝見しました。 2001年に訪れましたが、まだホームぺージを開設していない時期なので 私の記録がありません。 当時 デジカメを始めたばかりでしたから、 枚数も多くないうえに 初めてvideoをつかったので 静止画が少ないのです。 改めて coesaさんの くっきりした画像を見せていただいて感動を新にしました。
その時その時にコメントさせていただきたかったのですが、 国内旅行のまとめや準備にかまけていて失礼しました。
私は本当に体力が落ちてしまって 国内旅行も そろそろおしまいかな、という状況です。
イタリアも ラツィオ・アブルッツアにいけなかったことが心残りですがしかたがありません。
これからの Alsaceの ご報告楽しみにしています。2回いきましたが、感動の旅でした。
- 2022/06/22(水) 01:27:54 |
- URL |
- yk #i3bnT8TU
- [ 編集 ]
YKさん
いつもありがとうございます。
国内旅行、動
けるようになっているのですね。こちらも外国人が増えてきております。現実には、感染は減るどころか、なんですけども、もうどうしようもないですしね。
トルチェッロは、もうずっと撮影禁止ですが、ムラノは、数年前に撮影解禁されました。トルチェッロは、最後に訪ねたとき、激しい修復工事中だったので、再訪したいところです。そこだけに絞れば、日帰りも可能ですが、また冬にのんびり訪ねたいと思っています。
海外は、どんどん厳しくなりますよね。わたしの母は、80過ぎまで来ておりましたので、のんびりと急がない旅なら、可能ではないかしら。とはいえ、こういった世界情勢だと、動くのもはばかられるところがありますね。
アルザス、ご期待に沿えるかどうかわかりませんが、ゆるゆる上げていきますので、よろしくお願いします。
- 2022/06/22(水) 21:05:10 |
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- Notaromanica #-
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