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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

自画自賛?の美化自画像(カイセルベルグ)

最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その5

アルザスでの初夜、笑、実にかわいらしいアルザスらしい町となりました。

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カイセルベルグKaysersbergのサント・クロワ教会Eglise Sainte-Croixです(8-18時ということでしたが、イースターの週末ということもあったのか、夜はかなり遅くまで開いていました)。

町の中心部にあり、宿泊のホテルとも近かったので、到着して荷物を放り込んですぐ、訪ねました。

カイセルベルグの町の歴史は比較的新しいようで、最初に記録に出るのは、1227年、ホーヘンシュタウフェンのフェデリコの息子であるヘンリー7世、フランス語だとアンリになるのかな、各国語が混じって恐縮ですが、名前まで各国読みにできちゃうラテン語起源の欧州語は、そういう意味で厄介ですね。
そのヘンリ7世が、ここにお城を購入した、というのが、その記録なんですって。

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この場所、一つの谷から他の谷(Weisse Valley)へとつながる、戦略的な土地なようなんです。Waiss Vallayは、アルザスの北部方面へとつながるという意味で、重要だったようです。上の地図で、カイセルベルグって、その右の方は結構広い谷となっていて、というのも、ライン川の河川敷的な谷なんですね。そして、もうすぐにドイツになるんですね。
地理とか弱いんですが、でも、この辺りでは、多くの戦いが行われたことなんでしょう。そして、小競り合いの度に、境界線が微妙に移動したりしてね、そういう土地なんだろうってことが、想像できますねぇ。

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そういうことから、すでに町村は多くあって、お城だって、もともとあったわけですけれど、カイセルベルグは、そういう城塞だけの土地だったということなんですかね。このヘンリさんが常駐して、町として発展した、ということになるのかな。
家並みの合間から、町を見下ろす高台に建つ古い塔が見えました。

もうちょっと歴史解説を見ると、確かに、彼が、城の入手に続いて、市壁の建設などを行った、とあります。

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現地では、美しい家並みに目を奪われて、そういう風景写真を結構撮影したのですが、この右側の奥にうつっているのが、当時の壁かもしれないですね。まったく気が付いていませんでしたけど、笑。

そして、このルートは、ローマへ向かう古い街道でもあったということ。シジェリコでしたか、古い記録を確かめたくなるような記述ですね。

その流れで、この教会も建設された、ということになるようです。だから、ロマネスクとしては、かなり後代のものとなるのでしょうね。その上、15世紀に大きく変容してしまって、建築としてのロマネスク要素は、ほぼなくなってしまっているのです。
一応、教会周囲をぐるりとしましたけれど、ほんとになんにもでした。
ただ、有難いことに、扉口の装飾だけは、ほぼ無傷で残されたんですよねぇ。

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タンパンと、側柱に置かれた柱頭、遠目でも期待できますよね。

タンパンは、1235年ごろのものとされてますが、その割には古風なテイストを持つということです。

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聖母の戴冠が、キリストの左に置かれ、その左右には大天使ミカエルとガブリエルが置かれ、それを見守る様子の図像です。

解説には、「様式は、この地域の石工によるもので、ロマネスクの伝統的なものだが、ゴチックの重要かつ革命的な作品をコピーしている。とはいえ、人物の高さは、同じとなっている。ストラスブールの南扉のタンパンからインスピレーションを得ている。また、バーゼルやシゴルスハイムのタンパンとの共通性も感じられるのである。」とあります。
確かにね、ロマネスク的なスペースに合わせた無理やりな姿勢とかデフォルメ感が少なくて、結構のびのびと普通な様子の彫り方で、その辺、すでに時代出ちゃってるかな、と思うんだけど、でもさ、何よりちょっとかわいいんだよね。下に並んだお花とお団子なんかも含めて、全体に愛らしさが漂うんです。

でね、写真見直して、解説読んで、改めてすっごく受けたのが、左端にいるこの方よ。

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なんかさ、ちょっとツン!みたいな様子で、それもすっごく美化した感が否めないイケメンだとは思いませんか?
これね、ここを担当した建築家?石工?とにかく地元の棟梁らしいよ。自分をこれだけの大きさで入れるのもすごいし、その上、手に抱えてるのは、自分の名前だってよ。Conradusだって。ちょっとすごくね?金持ちの発注者を入れるならともかく、自分…。え?もしかして棟梁自ら発注者?それはないよねぇ。
いや、よくわかりませんが、ちょっとすごいわ。

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扉口左右の人たち、ちょっと情けないような表情で、細腕で支えてるのが、なんというか、くすぐられる。この人の腕の細さとそのお人形的なプラスティック感が、ちょっといいのよ。現代人形作家とかに訴えるものがあるように感じます。

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そして、柱頭の彫りも、なかなかに楽しいですよ。

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タンパンよりも、ずっと古いテイスト感じる人魚ちゃん。お約束の両性具有的にでべそちゃん。誘惑とかのアイコンの割に、全然色気がないってのもすごいし。

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ぷっくりお腹がかわいいけれど、お顔は鋭くて怖いですね。
背景に逆さハート?と思ったら、葉っぱなんですかねぇ。こういう小物的アイテムもかわいい。
これら以外は、植物の古典的モチーフの柱頭です。再建も混じってるのかな。

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遠目だと、逆さハートにしか見えなくないですか、笑。

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中はこういう様子。古色蒼然とした雰囲気は悪くないです。そして、目を凝らすと、ところどころに古いものが隠れています。

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こういうところに人がいると、どうしても、千年もこんな隅っこ暮らしで、あまり注目されることもなく、こっそり、目に入る数少ないものだけ、ずーっと見てきたんか、君は、とか思っちゃって、そういう人に出会えた希少価値とか感じないわけでもないけど、若干いたたまれない気持ちになったり…。病気か、これは。

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変だよね、こんなとこに。
これって、石工さんの遊びなんかな。遊びで押し込まれちゃって、それも結構いい加減な仕事っぽかったり。どういう受難…?
Conradusさん、絶対ここまで監督してないよな。

どうやら、中央身廊部分が、扉と同時期のまま、残されたようで、それで、こういった柱頭も、少し残っているようでした。

カイセルベルグ、かわいいので、ちょっと町の様子など、次回。

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  1. 2022/08/05(金) 12:08:37|
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  3. | コメント:0
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