最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その13
次に訪ねた場所は、遠目にその様子が見えてきただけで、ほっとするような教会です。壮大建築ばかりだと胸やけするから、たまにはこういうのもないとね。

エプフィグEpfigのサント・マルグリット礼拝堂Chapelle Sainte-Margueriteです。
こじんまりっていうのか、ちんまりっていうのか、美しいロケーション、それ自体もとってもこじんまりとしているんだけど、その中におとぎ話に出てくるような様子でたたずんでいて、やられます!
何だろね、この外壁漆喰って、結構古い建築に多くて、のっぺりした様子なのに、自分の中では、古い、中世初期、みたいなワードに直結していて、ときめくんですよねぇ。
うまく全体像をとらえた撮影はできなかったので、以下プランで。

11世紀の建物がベースになっていますが、それはラテン十字型、上の図で、黒い壁の部分です。この、十字型というスタイルが、アルザスではとても珍しいモノらしいです。
十字の交差する部分に、塔が建てられています。
そして、その後12世紀に、右下部分に、ポーチ的回廊構造が付け加えられたもの。
これまた、アルザスでは大変珍しく、独創的なスタイルのようです。
漆喰塗の見た目から、すぐにピンとは来なかったのですが、考えたら、こういうポーチ構造って、スペインに多い?と気付きました。こんな漆喰のはないから、結びつかなかったけど、スペイン、割と広範囲で、側壁に入り口があり、その部分がこういった構造になっていること、ありますよね。
でも、フランスでは見ない。
古い構造なのかな。こういうルーラルっていうのか、田舎の小さい教会特有のスタイルなのかな。

そっけないけど、漆喰って、なんかうにょっていう雰囲気、柔らかさとか、うまく説明できませんが、味があります。
十字型の教会の入り口は、西側にあり、この回廊構造はそちらまで囲んでいるので、これは、正面入り口につながる部分。ちょっと地味。

横の方。
ね、スペインぽい。
それにしても、サイズ感がかわいい。

この回廊が追加されても、基本、無装飾で地味な教会です。だからと言って、魅力が減ずるものではなく、これはこれでいいっていう存在ですねぇ。
ここでは、装飾とも言いかねる装飾的アイテム、柱頭ですが。

上下逆になっているみたいな作り。こんな短い柱なのに、下の方が太くなっていて、その分、基部の方が、柱頭らしい大きさなんですよね。
柱頭の上が、すぐアーチではなくて、三角が組み込まれているのも、面白い。これはこれで、そういう装飾アイテムということなのでしょうね。ここの棟梁、ミニマリストだったかも?
で、この地味な入り口です。

ちょっと面白いのが、扉を取り囲んでいる部分、ヘリンボーンの引っかき傷みたいなのが一面にありまして。

扉上、横、内部の方にも続いているし、他の扉周りにもあるんです。
一見、ナスカの地上絵みたいです、笑。

地域の共通性普遍性がすごく見られるということなのか、アルザスの解説では、どこそこの〇〇教会に似ている、とかいう記述が多いのだけど、ここでも、解説によれば、「魚の骨のモチーフの彫りは、1025年に建てられたストラスブールのカテドラルのクリプタと同じモチーフ」ということです。つまり11世紀初頭にはやったものなのか、何か意図があるのか分かりませんが、同時代には、ここだけではなく他の教会でも採用されたアイテムということ。
フレスコ画を乗せるような場所でもないし、やはり装飾的な模様なんでしょうかね。何かフィギュア的なものを彫るよりも、デザイン的で華やかみたいな考えでしょうか。やはり、ミニマリズムがはやってたのか。

それほど古くはないのかとも思いますが、アイテムとしてチャーミングなので、扉の鍵穴も載せておきます。鍵穴萌え、という分野もありそうですよね。私は、萌えまでは行きませんが、結構好きなアイテムですねぇ。
昨今、電気式とか、色々便利になっている扉もあり、昔ながらの、ガチャガチャ何度やっても開かない扉よりも断然簡単で助かるわけですが、味わいは、やはり古くてやけにでかい鍵を差し入れて、ガチャガチャやるってやつですよね。
内部。

さすがに小さいです。
内陣も身廊部分も、天井は筒型ヴォルトになっていて、この建築の特徴となっているようです。というか、アルザスには、この時期、特に11世紀とかロマネスクにしても初期の時期の、こういうタイプの田舎サイズの教会が少ないように思われるので、ここの特徴というよりも、他に例がないってことかな、とも思います。
こういった小さな教会が、壮大な教会に生まれ変わったりして、そうすると、時代的に交差ヴォルトになっちゃう、みたいなね。

筒型だと、面全体使えて、フレスコなんかで飾るには使い勝手がよさそうだね。区切りがない分、かえって難しい部分もあるかもしれないけど。
ここの天井画は、キリストを中心に、四福音書家のシンボル、というお決まりの図像ですが、かなり新しそうです。
奥にステンドグラスがあり、これも新しそう。
なので、特に撮影はしなかったけれど、サンタ・バルバラが塔にいる図、というのは、この夏、どこかのフレスコ画の説明で聞いたばかりの話だったので、おお、と思いました。
今後訪ねる方のご参考までに、女性二人が表されていて、一人はサント・マルグリット、そしてサント・バルバラ。
マルグリットは、アンティオキアのマルグリット(イタリア語だとマルゲリータ)と呼ばれる聖女です。聖人辞典を紐解くと、この名前が、ギリシャ起源で、「真珠」を意味するんですってよ。そういえば、イタリア南部の洞窟教会などで、マルゲリータの図像は必ずありますが、ビザンチン的に信仰が強いということなんですね、きっと。
3世紀から4世紀の時期に、アンティオキアで非常に裕福な家庭に生まれ、父親の反対を押し切って洗礼を受け、キリスト教徒として成長。年頃になって地域の有力者に見初められ愛人になることを求められるが、それをキリスト教徒として拒絶したところ、壮絶な拷問の上、獄につながれ、獄中ではドラゴンに姿を変えた悪魔と戦い、最後には斬首されたという…。
というストーリーのため、彼女の姿は、ドラゴンを伴うことが多いそうです。
一方バルバラですが、彼女は王家に生まれた方。誰にも見られないように、父親に塔に閉じ込められてしまいます。キリスト教に改宗した彼女は、三位一体に準じて、三つ目の窓を開けるようお願いします。
改宗を知った父は激起こし、彼女を斬首させますが、その父親は雷に打たれ死んでしまいましたとさ。
ということから、バルバラの姿は、三つの窓を持つ塔を伴うことが多いようです。
処女つながりっていうか、狂信的とも言ってよい信仰の強さとかの共通性?そういうことから、このコンビ、一緒に描かれることも多いらしいです。
聖人辞典や黄金伝説、紐解いちゃいました。図像が分かると、ちょっと面白かったりするので、こういう機会に、少しでも覚えていきたいものですけど、これがまた、すぐ忘れちゃうのが情けない限り。

内部で印象的なのは、この、極小の窓でしょうかね。
ちっちゃい窓は、下の写真で、水色で囲んだあたりに見えます。
今は、後代に開けられた開口部で、内部は自然光でも十分明るいですが、おそらく建設当時は、ほぼ真っ暗だったのでは、と思われます。

ちなみに、写真を見ていて、不思議な飛行物を発見しました。赤い印のやつ。
拡大してみました。

写真の写り具合からは、大型飛行機の高度かな、と思われるけれど、どう見ても飛行機じゃないし。普通の写真でこれだけうつるということは、スピードも大したことないし。軍の何かですかね。
もしかしてUFO…?
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- 2022/08/28(日) 10:29:24|
- アルザス・ロマネスク 67-68
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| コメント:5
サン・マルグリット墓地教会、 懐かしいです。93年に行きました。ツアーの半日フリーを利用しって ストラスブールからタクシーで。
その当時、シャンデリアなんてあったかしら?夏の暑い日、廻廊に佇んで 感慨にふけっていたことを思い出します。こういう腰高の装飾のない曲がり廻廊も素朴で落ち着きますよね。当時はあまり写真をとっていなかったので、ディテールも思い出せません。 CORSAさんは細かいところもしっかりみていらして さすがです。
- 2022/08/29(月) 02:53:53 |
- URL |
- yk #i3bnT8TU
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Ykさん
93年とは、ずいぶん前にいらしていたんですね。
私は訪問した時も、変わらずかわいらしくて、うっとりするようなたたずまい、健在でした。記事には書きませんでしたが、納骨堂が、ちょっと…でしたけど。
93年だと、まだフィルムカメラだったかもしれませんね。デジカメになってからは、現像の心配なく、何枚でも撮影できるのが、とてもありがたいです。とにかく撮影しておけば、あとから思い出したり、勉強したりするときのよすがになります。というか、私なんてすぐ忘れちゃうんで、そんなに以前のこと、覚えていらえれるなんて、うらやましいです!
- 2022/09/02(金) 17:32:55 |
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- Notaromanica #-
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間違いました。 2003年でした! でも 20年近く前で 様子も少しかわっているようです。
- 2022/09/03(土) 05:11:32 |
- URL |
- yk #i3bnT8TU
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間違いました。 2003年でした! でも 20年近く前で 様子も少しかわっているようです。
- 2022/09/03(土) 05:12:06 |
- URL |
- yk #i3bnT8TU
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2003年でも、確かに相当前ですよ。
この夏、15年ぶりくらいで、ウンブリアのロマネスクをいくつか再訪しましたが、10年とか15年で、町も結構変わりますし、教会のたたずまいとか、もちろん定かに覚えていないことも多いのですが、変わる部分もあるように思いました。
そういう意味で、再訪可能な場所は、なるべく行っておきたいものだと思いますが、なかなか難しいですね。
- 2022/09/03(土) 12:33:27 |
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