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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

男女ペアの秘密(アンロー?アンドロー?その2)

最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その15

Andlauのサン・ピエール・エ・サン・ポール修道院教会Eglise Abbatiale Saint-Pierre-et-Saint-Paul、続きです。

扉口の装飾を見ていきます。

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一見、表面すべすべで、きれいになり過ぎちゃってて、あまりそそられる感じじゃないんですけど、ここにも彫り物ががたっくさんあります。
まずはタンパン。ここは、彫りものというより、ほぼ彫刻的な飛び出しスタイルのお像が置かれている感じ。

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キリストがサン・ピエトロに鍵を、そしてサン・パオロに本を渡している図像で、教会がささげられている二人に焦点が当てられているというところなんですが、解説を読むと、この教会がこのお二人に捧げられるようになったのは、革命後、と会ったんですよね。とすると、このタンパンの図像によって、そうなった、ということになりそうで、逆の順番。

この教会、もともとは修道院教会だったそうです。
歴史は古く、時の皇妃リシャールが880年に創建した女子修道院が始まり。ということは、もとはサント・リシャールという修道院だったとのことです。皇妃が聖人だったということになりますが、理解、合ってるのかな。

記事を書きながらオンゴーイング・ベースで、色々調べていますので、なかなかマクロに見渡すことが出来ないのが歯がゆいのですけれど、この教会の近くに、聖地であるサン・オディール山Sanctuaire du Mont Sainte Odileがあります(この次に訪ねてます)。
つまり、そういう聖地ゾーンということなのかと思うんですよね。

その現役の修道院に対して、工費は女子修道院を作りました、ということになります。創建時のものはほとんど残っておらず、今の建物の多くは12世紀になされたものがベースとなっており、その後も、多くの手が入っているようです。
前回アップした写真でも分かると思いますが、本堂も、浮彫フリーズのレベルまでは12世紀ですが、その上は、後代のものらしいです。

ということで、扉に戻ります。
上述した図像がメインですが、どうですか、全体のバランスが、独特な感じしませんか。引いてみると、普通なんだけど、近くから見ると、なんかキリストやピエール、ポールに上部のカーブが迫っていて、思わず腰を曲げちゃうくらいのギリ加減。スペースに合わせる分、浮彫のフィギュアそのものも変な形になる、というのはお決まりですが、アルザスでは、こういうタイプの彫刻って、彫刻として成り立っていて無理な姿勢してない分、なんだか違和感があるっていうような。

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で、背景があるんです。背景っていうか、装飾的な彫りものなんですけど。
ポールさんの右の方には、これ、ライフ・ツリーですよね。
そしてさらに右わきに、壁の建材に溶け込んでいるような人物像があって、それを、なのか、三人を、なのか、指さしてます。

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左の方、ピエールさん側にも、浅浮彫ありまして、こっちもまた、別種のライフ・ツリーになるのかな。人のフィギュアと、上の方には鳥がとまっています。
で、さらに左に、どうやらその鳥を弓矢で狙っている人物がいるんですよね。

解説では、天国の林の中に、寓意的なテーマを表したもの、となっているのですが、これは天国の木々である、というだけのことなんですかね。

最低限の解説しかなくて、それで細部を見ていると、疑問が120個くらいは出てきてしまいます。それで、さらに深堀的に観察してしまって、若干悪循環ですが、今のところ調べる手立てもないので、疑問だけ書いとこう。

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左がピエールさんですが、彼は、どうやらキリストを見ている視線です。
が、キリスト、そして彼の左側にいるポールさんは、なんか自分より上にある何かを見て、なんていうか、ぼーっとした?恍惚的な?そういう様子に見えるんですけども。
鍵や本を渡しながら、心ここにあらず、なんですよね、様子が。
そんでね、ピエールさん、キリスト、ポールさん見ると、一番世俗的なお顔というか表情しているのが、キリスト、笑。すいません…。

アーキトレーブ、見てみましょう。

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浅浮彫ですよね。それもすっきり系で、ちょっとピクトグラム的な無性格無症状系ですよ。傾向としては、割とこういうのあるなって感じるので、これがアルザス風なのかしら、とか思ったりもします。

さて、ここには、アダムとイブの物語があり、イブの創造から原罪、そして天国からの追放までが描かれています。

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イブの誕生ですね。表情もないし、とてもミニマルで、事実を正確に伝えましょう、的な。

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で、楽園に案内されているのかな。
アダムもイブも、身体がお人形の作りみたいになっていますね。リカちゃん人形的な、脚の付け根が回せたりするやつ。あばらも見えてますね。
解剖が始まるのって、13世紀?14世紀ですかね。

毎回、つい余計なことばかり考えちゃって、余計な検索ばかりしています。
正式な人体解剖は、やはり14世紀頃から始まったようですね。欧州では、その頃各地に大学ができており、そういえば、解剖学教室というのは、見学したことがあります。
考えたら、聖職者は、死者との接触がありますから、一般の人よりも人体に触れるチャンスもあったと思うので、解剖学的興味を持つ聖職者であれば、いや、レオナルドのように、美学的な観点での人体への興味を持つ芸術系の聖職者もいたかもしれないし、そういう人の知識が、ひそかに裸体のベースになったり、ということはあったかもしれない、とか妄想し始めると、これまたやめられない話で、もうブログも止まっちゃうわけですね、笑。

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直球な感じの禁断の実事件。
巨大な蛇の誘惑の様子がすごいですね。こんな風に差し出されたら、これを断るのは人としてどうよ、みたいな雰囲気で、やっぱり人ってそういう生きもんなんよ、って感じさせられます。

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で、ハイハイ出てってね、さっさとどうぞ~、みたいな感じで、楽園から追い出されております。イチジクの葉っぱ、異常にでかいです、笑。

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二人で、はぁぁ、とか言ってる図ですかね。絶望感というよりは、やっちゃったよね、仕方ないよね、みたいな共感を描いているのかな。

表情もないし、全体にマルっとしたすべすべ感、植物も含めて、なんかかわいらしいし、ミニマル・デザイン的ですよね。クールな様子が作者の意図なのかとも思うけれど、そこもミニマルで、淡々絵巻物。

扉脇の柱には、つる草に囲まれた動物たちのフィギュアがあり、下の方には男性像。

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こっちは、よりロマネスク典型な様子で、アダムとイブのスタイルとは異なるように思われます。
植物の様子からは、タンパンの背景担当の石工さんぽいかとも思われます。

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その、つる草動物コラボの外側。左右ともに、縦長に、物語的な彫りものが並んでいます。

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文字も彫ってあるんだけど、さっぱり分かりません。皇妃リシャールの物語かな、とかも思ったのですが、どの場面もペア、それも、どっちかというと年配の女子に、若い男子のペアなんです。そんで、若者が女子の腕をもってどこかに行こうとしているような様子。ところどころ、エリザベスとかヒルダとか、名前らしい文字もあります。もしかして高額寄進者?高齢女性への天国へのご案内、ぴちぴち男子サービス?
と、またまた疑問の嵐です。

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というわけで、やっと入場。

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全体として見るべきは、僅かな柱頭ですが、実は重大な見逃し案件です、涙。クリプタがあったようなんですが、気付かなかったのもどうかと思いますし(祭壇が、あんなに上に上がっているのに)、チェックした様子もないんで、不思議なんですけども。

実はさ、この夏の旅でも、これ以上に重大な見逃ししたのを、旅が終わって、写真の整理も終わって、いい加減立ってから、え?と気付いたほどの馬鹿者なので、クリプタ程度の見逃しは、おそらく日常茶飯事やってるんだろうな、と今は思うし、気付いてさえいない見逃しは、おそらく山ほどあるんだろうな、と情けない気持ちでいる今日この頃なんです。

というわけで、ここは、二度と行くことはない、とほぼ確信している土地だけに、がっかりなんですが、ま、い~か、とそこもまたいい加減であきれるわけです。


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  1. 2022/09/03(土) 12:30:22|
  2. アルザス・ロマネスク 67-68
  3. | コメント:4
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コメント

アンロー

the former abbey church if Saint Richarde となっています。王妃、王妹などが修道院長であっても saint がついていないことが多いので この方は特別だったのでしょうね。
前回 一見ロマネスク的にはパっとしない建物、とおかきになっていましたが、 ドイツロマネスクを見てきた目には、やはりこれもドイツロマネスクだな、と思いました。 中は東側の写真だけ鹿載せられていませんが、ふりかえって入口方向を見ると上に(よくパイプオルガンが設置されている所)サン・ミシェルチャペル、元皇帝御座所があります。(私のホームぺージには 写真をのせてあります) サンサヴァンもそうですが、やはり ドイツカロリング朝建築の 影響が感じられます。好き嫌いは別として建築理解の上でドイツのものを見てよかったと私は思っています。
二度目は ロマネスクツアーでしたから しっかり クリプトもみました。 ただし方円柱頭で彫刻はないので 彫刻狙いならみのがしても 残念に思われることはないと思います。それにしても 彫刻を丁寧に楽しんでいらっしゃいますね。 感服です。
  1. 2022/09/04(日) 16:11:36 |
  2. URL |
  3. yk #i3bnT8TU
  4. [ 編集 ]

Re: アンロー

YKさんは、ドイツ・ロマネスクも見てきていらっしゃいますもんね。
私は、好き嫌いだけで見ておりますので、笑、そこが、お勉強にも支障をきたす要因となりますね、おそらく。

この、西側の構造というのは、おそらく結構重要ですよね。
この夏に訪ねたサン・シェフで、強く感じました。西側構造も含め、上に伸びる構造、そこを重要視するというのは、若干時代が下って技術が伴ってこそ、もあると思うのですが、小規模なボリュームの教会が多いイタリアには少ない発想。
つい歴史的なうんちくに走りがちですが、建築学的な観点、もうちょっとほしいと考えている今日この頃。知識が足りなすぎるんです、自分。
  1. 2022/09/05(月) 20:00:26 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

上に伸びる構造、これは古いのです。ドイツ、コルヴァイのヴェストヴェルクは885年竣工。 現在も残っています。アンローよりもっと巨大です。(拙HPドイツ東部ロマネスク)
フランク王国は キリスト教を広げる名目で領土拡大を目指しました。そうして 聖職者を参謀格に置きました(世襲をふせぐため)
教会は 王権の象徴でもあるので西正面を荘厳する必要があるため、ラテン十字等の本体の前面(西側)に一棟建てましたのです。
よく教会のpamphletなどに建築変遷の図などがのせられていて なかなか興味深いです。あまり詳しくないのですが、イタリアも神聖ローマ帝国の一部でしたから、影響はあるようですよ。ドイツの教会はおよそかわいくないですが、行く価値はあると思います。 ヒルデスハイムの青銅扉とかもありますしね。宝石ゴロゴロの十字架にも目を奪われること必定。私はもう高齢で海外は諦めました。 お若いCORSAさんに期待しております。
  1. 2022/09/07(水) 00:49:02 |
  2. URL |
  3. yk #i3bnT8TU
  4. [ 編集 ]

ドイツ・ロマネスク

YKさん
返信遅れ、すみません。
ドイツは、そういう面白さがあるのですね。建築系の人には、より興味深いことになるのかしら。
イタリアがそういう方向に行かなかったのは、教会の力ですかね?そういうことを考え出すと、また脱線してしまって、ブログもなかなか進まなくなってしまうので、困ります、笑。

いずれにしても、どこでも、行けば絶対に面白いのです。というか、面白いものを発見しようとしますから、行けばね。でも、私ももう若くないんで、タイム・リミットが迫っております…。
今後とも、ドイツ系の解説、よろしくお願いします!
  1. 2022/09/10(土) 11:38:12 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
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