最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その17
道順、というか、回った順番として、次に紹介すべきはストラスブールで、一応二泊もしたんですけれど、見学はスキップしてしまいました。カテドラル他いくつかの中世の教会があり、マイナーとはいえ、ロマネスクのアイテムがあるということは分かっていたのですが、事前にある程度見ても、あまり魅力を感じなかったので、ま、いいかと。
夕食を食べに中心街に行った際、カテドラルの姿は目にしましたが、ちょっと恐ろしいほどの、というか、なんだろう、夜間だったこともあると思うのですが、おどろおどろしいほどのゴチックぶりで、たまげました。

ストラスブールStrasbourgのノートルダム大聖堂Cathedrale Notre-Dameです。
巨大な建造物ですが、周囲のスペースはさほどではないため、全体像をとらえにくい様子でした。
陰影がつくので、夜間のライトアップが、ある種の激しい効果を出しています。どの建物の隙間からものぞくその姿が、私には怖いイメージでした。
というわけで、通過しながら横目で眺めただけで、次に行きます。
次の町で、一番強く記憶に残っているのは、実は教会ではなかったりします、笑。

例によって、早起きして早朝出発したところ、ちょうど教会がオープンするとされていた9時ごろに到着したのですが、なんとまだ空いてなかったのでした。外観を見ながらうろうろしていたら、教会のすぐ脇にあるお店、にわかには何の店かもわからなかったのですが、すごい行列ですよ。これ、イースター当日の朝だから、びっくりしました。

よく見ると、こんなレトロな看板があり、どうやらパン屋さんです。女子が手に持っているのは、アルザスの典型的なお菓子で、確かクグロフとかいうやつじゃなかったかな。
この行列は、イースターのお菓子でも予約の人たちなんだろうかね?
以前にも書いたかな、と思うんですが、イタリアがバールの国だとすると、フランスはパン屋の国だな、と歩いていて思うんですよ。イタリアは全国津々浦々、とにかくどんな小さな村でも、バールは大抵あるし、かなり勤勉で、早朝からオープンするし、日曜や祝日でもやっていたりするんです。一方フランスでは、パン屋がまさにそういう存在だと思います。カフェがなくてもパン屋はもれなくあるし、勤勉ですね。
イタリアもパン屋さんは早起きだけど、バールのサービスにはかなわないところあると思うし、個人的には、バールの方が便利度が高いので、イタリアの勝ちなんですが、って、別に勝ち負けじゃないけどもさ。
ただ、フランスのこのパン屋さん文化、驚くわけでして、この朝は、本当にびっくりしました。ここの点では、他の多くの点でドイツっぽいアルザスも、フランス文化圏ということなのかな。もしかして、ドイツもパン屋さん文化なのかしらん。いや、なんかドイツのパンは、毎朝買いに行くようなもんじゃない気もするしなぁ。
あ、ちなみに、お菓子類の文化はドイツ系で、かなりドサドサどっかん状態で、ショーウィンドウにうっとり、ということは少ないように思いました。フランスのお菓子屋さんのショーウィンドウって、甘党じゃない私でも、ちょっとうっとりする美しさがありますけど、アルザスはね、うっとりしなかった…。
おっと、いきなり脱線しまくっていますが、この繁盛店があるのは、以下の教会の脇でした。

ロスハイムRosheimのサン・ピエトロ・エ・サン・ポール教会Eglise Saint-Pierre-et-Saint-Paulです。
ちょっと残念だったのは、ファサード側の、教会ではなくてお向かいの建物が絶賛工事中で、ファサードを眺めることが出来なかったことです。

通り抜けできる程度の通路はあったんですけれどもね。
解説を読んでいたら、ファサードのことも結構書いてあったけれど、写真もないと思います。
この教会、全体を一見すると、端正な様子で、なんていうのか、大きさもあるのかな、例によってだよなっていう印象もあるんですが、ちゃんとディテールを見ていくと、結構彫り物装飾も作りこまれているんです。
どこからどう見ていったらいいか悩みますが、まずは後陣から。

半円部分が、6本のつけ柱で分割されていて、スペースが七か所となっています。その中央部分、大きな窓が開けられている部分と思いますが、丸みがなくて、平面になっているらしいです。言われれば、そうかも?と思いますが、ただ見ても、まったく気づかなかったなぁ。
ちなみにですが、この教会建築の様式は、アルザス・ロマネスクの円熟したものとされているようです。特徴として、つけ柱、軒持ち送り、ロンバルディア帯、また棕櫚モチーフとか多くの彫り物フィギュアなどは、もちろんロマネスクとして必須アイテムですが、アルザスで、そういった典型的なアイテムをこれでもか状態で採用している教会は、意外とないというか、残されていない、ということになるのかな。
主に使われた建材は、地元産の黄色砂岩ということです。
中央後陣がめっちゃでかくて、右隣にある脇の後陣とのボリューム差が激しいです。左側は、なんか四角い箱みたいな建物になってて、それも様式的には同時代な様子もありますけど、解説を斜め読みすると、オリジナルの教会の塔の一部みたいなことが書いてあったような。

塔の基部とくっついていた部分、ということになるのかな。今ある建物は12世紀半ばのもので、11世紀の教会が元になっているということらしいので、それのことですかね。その教会は、大火により多くを焼失してしまったそうです。
この町、長い歴史で、何度か大火に見舞われているようなんですよ。
ちょっと脱線ですね。後陣に戻りましょう。

どのあたりが再建で、どこまでオリジナルなのかは、正直不明なんですが、窓の周囲に置かれた福音書家四人のシンボルは、結構それなりの時代を経てきたもののようです。例によって、にっくき革命のときに、人の姿をしているマッテオは見事に破壊されてしまったということ。相変わらず、暴力的。
ネジリン棒とか、すじすじの入ったホースみたいな足元とか、なんか独特な様子ですが、いずれにしても端正。上部に、大好きな市松モチーフがあるんですが、それも端正過ぎて、なんかわくわく感がうすいのは、残念。

結局私は、千年たっている朽ちた状態のロマネスクが好きなんだろうなって思います。同時代に生きていたら、どれもこれも端正過ぎたかもしれないよね。
でもね、こういうテイストだったら、多分好き。

お口がどうなっているのか、ペロンって。
それに、お尻尾の先っぼ、この形は、これまた端正ですが、こういう風に置かれると、なんかめっちゃいいよね。全体にすごくかわいいんだけど、翼の表し方から後ろ足の方の身体の表現っていうか、かなりスタイリッシュでデザイン的な、なんていうのかな、一本の線でしゅっ、って感じでデッサンしちゃう人じゃないかと。

この子もいいよねぇ。ひづめで本を持っているのがキュートだし、なんかこっちにしっかり目線くれているというのもすっごく愛らしい。威厳じゃなくて親しみやすさ全開のお姿ですね。
その上で、威厳はわたくしが担当します!みたいな様子で頑張っている人もいます。

翼にしても、表現力にしても、石工さん違う?という気もしますが、どうでしょうね。

そういう中でもこの跡は、残念過ぎます。跡がこれだけ残っているのも、かえって痛々しいし、残念感が募りますよね。

ところどころに、こういう人たちが潜んでいますから、ここは宝探しの楽しさがある教会でもあります。
小さい脇後陣の方が、修復が行き届いていないせいなのか、もともと若干傷みが激しいせいなのか、市松帯がいい感じかも。

ここでも、申し合わせたように顔面破壊が…。経年劣化ということかもしれませんけれど、ここ、アイテムかわいいので、不完全なフィギュア、とても残念です。
十字型の中心部にのっけられている八角形の鐘楼にも言及しておきますが、これはもうゴシック様式となっております。でも、下の方は、どうやらそれなりに古い建築のようなんですよ。
で、こんな人が下の方にいます。

これ、どっか他の教会でもあったよね。
そうそう、Guebwiller。ここに会った四つのうち、二つがそっちにあるというんだけど、なんでだろう。そっちには、出自がこの教会、というような記述はなかったように思うんだけども。いずれにしても、これは12世紀ではなさそうですね。
続きます。
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- 2022/09/13(火) 20:42:48|
- アルザス・ロマネスク 67-68
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| コメント:2
18年に行きました。ライン川流域ロマネスクの旅に のせていますが、 ロサイム と 言っていました。
屋根の上の大きな彫刻に驚かされますよね。
見ると 私が行ったときも工事中で クレーンが写っています。 西正面の写真は斜め前からしか撮れなかったので 載せてなかったのですが、今日追加しました。多分 面白彫刻はなかったのだと思います。
- 2022/09/15(木) 03:03:54 |
- URL |
- yk #i3bnT8TU
- [ 編集 ]
YKさん
工事ばっかりなんですかね。
っていうか、教会そのものの工事じゃないのに、こんな風に邪魔されているっていう状況は珍しいと思いました。ってか、単純に迷惑ですよね、笑。
改めて写真を見ると、ちょっとそそられる彫り物も多くあり、解説が見つからないのが、結構ストレスです。
ファサード側は、確かに地味だったですね。
- 2022/09/17(土) 16:57:34 |
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- Notaromanica #-
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