最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その18
ロスハイムRosheimのサン・ピエトロ・エ・サン・ポール教会Eglise Saint-Pierre-et-Saint-Paul、ですが、ちょっと内部を見ときましょう。

かなり地味目です。
ただ、解説によれば、ライン流域のロマネスク建築の特徴をよく保ったスタイルで、特に注目すべきは、多角の角柱と円柱が交互に採用されている点であるとありました。

円柱の足元の下駄ばき状態が、なんかすごいですね。特に、他からの再利用の柱、という様子もないので、この下駄ばきも、装飾の一つなんですかね。確かに、足元は、お飾り付きだしね。
柱頭も含めて、うっすらとした浅浮彫はあるんですが、デザイン的なリピート模様が多いし、あまり面白みはないのです。ただ、一つだけ、変に目立っているやつがあります。

怖い…。
これね、聖人なのか聖職者たちに過ぎないのか分かりませんが、ベネディクト派の方々、であることはそうらしいんですが、21人の方の頭部がずらりと並べられています。顔の様子が、すべて異なるってありますし、実際そうかなと思うんですが、妙な写実性があって、怖さが先立つっていうか、綿密に一つ一つみたい、と思わせるような代物ではないです、よね?
人相学を学んだ専門家の石工の作品で、写実的、つまり、実際生きている人を写したような頭部の彫刻というのは、アルザスでは最初のもの、とありますけど、つまり、時代が下るということではないかと思うのですけどもね、どうなんでしょうか。
今更、この教会の歴史を紐解きますと、前回の記事でも一部触れていますが、この教区には11世紀に二つの教会がありました。1132年、戦争による火事で損壊を受けた二つの教会のうち一つ、このサン・ピエール・エ・サン・ポール教会が再建されます。その後、もう一つの教会も再建、どちらも地域の発展に伴って拡大されますが、1385年、大火により多くを焼失。また再建。そういう繰り返しながら、なんとか生き延びて、バロック時代には、すっかり金ぴかにもなったようですが、1859年、オリジナルの姿に戻す修復工事が行われて、金ぴかは取り除かれた、ということらしいです。
だから、どの部分がオリジナルで、どの部分が再建で、それも再建も時代が色々あるんだろう、ということなのだと想像します。
柱も、スタイルがバラバラだったりするし、どう評価したらいいのか、よく分からない、というのが正直なところ。なんてこった!

と頭を抱えている人がいます、笑。
こういう人が、ところどころにいますから、確かに古い時代のものも生き残ったのでしょうけれどもね。ある意味、それだけ火事などの被害を受けながらも生き残った人たちの生命力、というのも石造りだから変なんですけど、でも、オリジナルで生き残ったアイテムの生き残る力ってすごいと思います。上の、なんてこった!のおじさんを見てると、なにが明暗を分けたのか、みたいな気持ちになります。

内陣部分に、このような、これは現代作家さんの作品でしょうかね、説教壇がありました。21ずらりの頭部にインスパイアされたのかな、のっぺり系の少年少女的な様子が、これまたちょっと不気味なんですけども。不気味、というところで、非常に共通項を感じるもので、これを発注した人も、納品した人も、ある意味すっごく理解しあっている幸せな現代作品かと。いや、怖い。
では、再び外に出まして、もう一度、外側をぐるっと見てみます。
脇の扉口周辺。

地味ですが、なかなかの装飾ぶりではあります。柱がすごいんですよ、なんだか。

扉口の縁取りも、やけに凝っている彫り物があるの、分かるでしょうか。
向かって左側の柱は、さらにすごい凝りようですよね。

ふと目線をあげるとこんな人たちも。

この肉食獣系は、まるでアニメの動物みたいな様子だし、日本の和式トイレスタイルのおじさんも含めて、やはり時代が分かりにくい様子です。
上の方にいる方々は、肉眼では細かく見えないので、現地ではよく分からなかったわけですが、こうして写真で見ると、実にいろんな時代のいろんな手が混ざっているのだなぁ、と感じます。

この、手前のおっさん二人は、とても面白いですが、意味が全く分かりません。向かって左のおっさんは、左手で、お隣のおっさんの顎をむぎゅっとつかんでいる様子です。髭引っ張りみたいなやつなんでしょうか。それにしても、やけにチャーミングなおっさんコンビだなぁ。
ここの教会については、それなりに解説を見つけたのですが、建築の詳細は多く書かれてあっても、こういうアイテムについては、何も分からず、です。残念ですね。
当時のファサード側の様子。

今はきっとすっきり片付いていることでしょう。
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- 2022/09/17(土) 16:55:06|
- アルザス・ロマネスク 67-68
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| コメント:4
四人が支える書見台「見たいのはこれじゃないのよね」と思いながら眺めました。本当にみたいのは 12世紀に作られたフロイデンシュタットの書見台なのです。 ところが この三か月後のツアー(ホームページでは「ドイツ、北から南へ」10日目そのⅡ)中、フロイデンシュタットで長めのトイレストップで30分時間があった時、偶然入った教会にあったのです!
4人の福音書記者が頭の上に書見台を載せている彫刻。こちらはそれぞれのシンボルものっています。
このロサイムの書見台はこの超有名な書見台にインスパイアされたもの、と私は思います。
フロイデンシュタットFreudenstadtは Strasbourgの東65キロくらいのところです。これ一つのためだけでも見に行っていい所だと思います。
- 2022/09/20(火) 03:19:28 |
- URL |
- yk #i3bnT8TU
- [ 編集 ]
YKさん
拝見させてもらいました!素晴らしい保存状態の書見台ですね!あのような形の木彫りは、あれ?木彫りと思いましたが、どうだったろう、いずれにしても、貴重なお宝を見られましたねぇ。
確かに、近くにそのようなものがあり、インスパイアはありそうですが、ずいぶんと愛らしい変換をした感じですね。現代作家と思いますので、もちろんそのまま形にしてもしょうがないですけども。
ドイツや英国には、個別アイテムで、見たいものは結構あると思っています。いつか行けるでしょうかねぇ。
- 2022/09/25(日) 17:03:05 |
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ご推察通り、木彫です。他に類例を見ないロマネスク彫刻の傑作。
ドイツの 教会外観はなじみにくいですし、柱頭もさいころ柱頭で彫刻無しも多いですが、 金属による芸術品、宝飾十字架等 へばりついて見続けたくなるようなものがたくさんあります。(私は 宝石ごろごろが大好きなので)
ドイツRomanesqueにかんしては 岡野ハインリッヒ圭一氏のものがいいです。(この人の著作しかないと言っていいほど)『ドイツ美術史散歩』が三冊。 そのうち 古彫刻編 にフロイデンシュタットの書見台について 1章さいています。 ヒルデスハイムの青銅扉についても1章。
完璧な書物としては『ドイツ中世美術 Ⅰ』 Ⅰがロマネスク編,Ⅱが ゴシック編 です。 ものすごく細かく説明されていますが、 索引無し、写真無し。 それに同じ時代でも 彫刻、建築等わかれているので 調べにくい、 非常に不親切な本です。
イタリアを丁寧に観ていらっしゃるので、なかなかドイツまでは足を延ばしにくいとおもいますが。
- 2022/09/28(水) 03:51:03 |
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- yk #i3bnT8TU
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YYKさん
ヒルデスハイム、今日あげた記事にも出て来ました。当時、アルザスへの影響大だったということですね。
宝石ゴロゴロだと、ロンゴバルド系の宝物が大好物ですね?ああいったものは、門外不出が多いですし、なかなか見るのも難しいですよね。
ドイツに行く暇はたぶんないと思っていますけれども、今後世の中どうなっていくかにもよりますしね。飛行機の旅が普通にできるように戻ってほしいとは思いますけれど、本当に先が見えないですね。
- 2022/10/01(土) 17:17:27 |
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