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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

屋号は丸十(ダンペテ)

鍵推し(ダンペテ)

最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その22

前回訪ねたアヴォルスハイムの村の近郊が、今回訪ねる場所となります。

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写真で見たら、決して複雑ではないようなのに、当時はナビでは出なかったのかなぁ、確か道が分かりにくくて、人に尋ねながらたどり着いたと記憶しています(というか、メモしてあります、笑)。
アヴォルスハイムが、そもそも村規模の集落で、中心部を一歩離れたら、何もない田舎道となる土地で、不安になるような様子だったんですね。今、改めてグーグルで見ると、納得です。

しかし、そこを進むと、ロマネスクを愛する人の多くが、これだよこれ!と思わず小躍りするような風景が。

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アヴォルスハイム郊外のドンペテAvolsheim - Dompeterにある教会Eglise du Dompeterです(通年8時-20時)。
徒歩圏内で撮影している自分の写真よりも、全体のたたずまいが分かりやすいので、グーグルさんからお借りした写真です。

町中にあって、デイリーベースでご挨拶できる教会もいいですが、私はこういった場所に一人たたずむタイプの方に、より魅力を感じてしまいます。ただし、そういう教会は、閉まっていることも多いのですが、ここは常に8時から20時開いていました。コロナで、ちょっと変わった可能性はありますけれども。

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ファサード側ですが、背は低いものの、かなり教会本体に迫った位置に壁があるため、全体像の撮影不可。
見ての通り、多くの部分が改築再建されているので、遠方からのたたずまいはよろしくても、近付くと、ロマネスク的な良さは薄いですね。
それでも、往時の遺構は、随所にあるのです。

今は使用されていない、ファサード側のポルティコにある扉。

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サイズは小さいけれども、作りとして立派じゃないですか。扉の中央に柱があって、これなんというアイテムでしたっけね、フランスには多く用いられる構造と思います。通常は、この柱は彫り物などで装飾されますが、ここではのっぺらぼう。構造的には、オリジナルも公だったろうという様子ですが、今ある柱は明らかに後付風なので、もしかすると、今でもどこかでひっそりとオリジナルが生きていたり、という可能性はありますね。

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上に置かれたお像は、教会のどこかになったであろうものを、後付でここに置いたのだろうと想像します。
それにしても、お顔がね、明らかにピエトロさんだと思って、感心しました。鍵を持っているから確認できてありがたいですが、今。写真で、鍵を見る前にお顔から見て、分かりましたもん。
前にも書いたと思いますが、絵画や彫り物で表される聖人の顔のイメージって、広く深く、共通しているのが面白いと思います。SNSどころか、写真すらなかった時代に、欧州大陸にあまねく、同じような顔が伝播するって、すごいことじゃないですか。それだけ、人々の往来があったということになります。

ちなみに、この教会は、サンチャゴの巡礼路に位置しているそうです。
ちょっと歴史を紐解くと、起原は古く、もともとはメロヴィング朝時代の礼拝所があった場所ということです。メロヴィングって、カロリングの前だから、相当古いですよね。
っていうか、礼拝所ができたのも、どうやら古代からの聖所だったらしい立地にあるようです。というのは、近くにSainte Petronillaの泉というのがあったらしく、それがルルドの水のように、頭痛や眼病に効く、とされていたようです。

教会として、きちんと奉納されたのが、アルザス出身の教皇レオーネ9世によって1049年になされたということで、その頃が最盛期となるのかな。時を同じくして、サンチャゴの巡礼路がイケイケになっていたことから、巡礼者激増、ということもあったらしいです。

その頃の教会の名残が、いくつか断片として残されていて、我々を楽しませてくれる、ということで、では、見学に戻ります。

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扉脇の柱頭に、不思議な顔が彫られています。上部、アーキトレーブに続く場所には、ドラゴンぽい動物の、やはり頭部だけがあります。
例によって、かなり検索したのですが、納得感のある解説は見つからず、でした。
まぁ、図像としては、それなりにロマネスク的な、という様子ではあるのですが、個人的なイメージとしては古いなっていう。時代は、12世紀第四読ん半期とありましたので、ロマネスクとしては後期になるかと思いますが、イメージとしてはもっと古い時代の図像って感じがします。
頭部の上に置かれた組紐的なモチーフのせいもあるかもしれないし、角に置かれた顔は具象っぽいけど、間に置かれた小さいやつが、若干抽象的なシュールな印象を与えるからかもね。

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左側の方は、残り方がもっと限定的で、さらに具象的。これを見ると、後期ね、とうなづけます。

少しだけ見つけた解説では、この手の柱頭は、12世紀第三四半期に、広く普及したものとありました。この近郊の教会でも見ることが出来るとありますが、それは彫られた図像ではなく、柱頭や副柱頭の形観点みたいです。

装飾としては、現在入り口として使われている脇にある小さな扉の方も、ちょっと面白いです。

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元々ここにあったのかどうか、よく分かりませんけれど、まるで、屋号(丸十とか?)みたいなきっぱりとしてデザイン的な十字架の様子が、結構好き。
反対側だと思いますが、こっちも面白い。

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こっちも丸十だから、やはりもともと置かれていたアーキトレーブ装飾、ということになるのでしょうかね。

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この教会、一応ピエトロさんに捧げられているようだし、それで鍵なのかな。入場には鍵が必要よ、っていう注意書きみたいで、面白い。

開いているので、嬉しく入場しましたが、内部は例によって。

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構造は残されているものの、漆喰塗バリバリなので、雰囲気はほぼなし。
唯一好ましかったのは、もしかしたら一部オリジナルもあるかも、と思わされた床石でした。

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床が、地元産っぽい石っていうのはとても雰囲気に貢献しますよね。時々、墓石なんかがはまっているのも…。

ちなみに、トップの写真はグーグル撮影のもので、季節が違うと思いますが、私が行ったときは春爛漫で、こんなに明るくて美しいのでしたよ。

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確か後から来た人たちに勧められて、珍しく同行者と一緒に写真を撮りました。どんなに長い旅を一緒にしても、記念撮影的なものは撮らないので、良い記念になりました。自分もいい年になってきたし、去年の交通事故じゃないですが、何があるか分からないから、たまには写真は撮っとかないと、いざというときに使える写真がないってのもありますよね、笑。
いや、そういう不吉なことを言ってはいかんのかな。いや、現実的になるもの必要よね。


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