最初で最後のアルザス中世、多分…(2019年4月)、その23

マームティエMarmoutierのベネディクト派修道院サンテティエンヌ教会L'église abbatiale Saint-Etienneです。
見るからに、典型的なアルザス教会って様子です。が、この教会、ロマネスク観点から見るべきは、この西側ファサード部分のみ、ということになります。
そういうことも、調べていっていないから、どこに行っても何を見るべきなのかよくわからずおろおろしてばかりでしたが、ここなんかもそうです。見た目が堂々とロマネスクだから、期待して入場して、あれあれあれ?みたいな腰砕けになって、どう評価したらいいの?と若干パニック入る、みたいな感じ、笑。

まず外側を見ていきます。
その前に、さらりと教会の変遷に触れておきます。
ここの歴史は古く、6世紀の終わりに建てられた修道院が起源となるようです。その後824年に、時の修道院長マウロという人が、ベネディクト派の規則を導入したあたりから繁栄をはじめ、12世紀、まさにロマネスク期がその絶頂、みたいなことだったようです。その時代、1150-1160頃、おそらくお金もザクザクだったのでしょうね、この立派な西側のファサードが建設されたようです。それは、アルザス一立派な西構えと言われていたようですから、村の人々も鼻高々だったでしょう。
アルザスの多くの教会で見られるような、多色の砂岩が使われていて、それだけで装飾的なのに、さらにつけ柱やロンバルディア帯、垂れ下がりのアーチの先っぽの彫り物など、かなり装飾的。ただ、壁面の大きさに対して、彫り物のサイズが小さかったり、とにかく壁面の色がカメレオンみたいな、なんだろう、彫り物とかが保護色の中に入っちゃって背景を見分けられない的な感じで、ちょっとセンス的にはうるささ推し、とでもいうのかな。そう、悪いけどうるさい、笑。

切り取って、それぞれのディテールを見ると、かわいかったりするんだけども、全体として見るとねぇ。
ま、そういう感じです。
はめ込みとかアーチ下に置かれた彫り物は、楽しいものも沢山あるので、ここはしっかりじっくり見る価値はありますが、もちろん望遠鏡とかないと見えないサイズです。

ヨーダ系の人。
これって、全体のイメージはよくあるやつだけど、この一本歯って、いつもこうだった?やけに気になる。

お仲間もいたけど、この人も。
ただ、よく見ると、これは歯ではなくて、髭っぽいものになっているけれど、なんだろうねぇ。いずれにしても、耳があるから動物なんだろうけど、これまで数多く見てきて、あ、これはあれか、と納得できる動物が思いついたことがないよなぁ。
ちなみに、上の方に並べられた三角、かわいいよね。
かわいいと言えば、これでしょう。

すごいオリジナリティ。しっぽの様子は肉食獣系の様子なのに、足が鳥。または虫。またはムツゴロウ的古代魚?

お仲間も撮影してましたが、こちらの方は、さらに魚イメージ、というより半魚人イメージ強いですよね。おちりからのラインが、なんならセクシーだったり。で、やっぱり極細お尻尾巻き巻き。
なんせ、肉眼ではよく分からないので、カメラ思いっきりズームにして撮影するわけですが、なかなか全貌は分からないから、撮影しきれない部分もあります。ここも、一つ一つ撮影したのかどうか…。もっとお仲間いたんだったら、全員にお会いしたかった、と、三年後に思ってもね、といういつものパターンです。
垂れ下がり部分以外にも、浮彫はめ込み系が、いくつか見られます。

精悍な、またはひもじそうな、笑、ライオン君。
尻尾の表現が、激かわ。先っぽが葉っぱスタイルで、真ん中に玉って、いいわあ。
そいから、頭が不思議ですよね、とってつけたような様子だし、張子の虎感すごい。
図像としては、よりライオンらしい様子のお仲間。

これから類推すると、ヨーダ顔の歯と思ったアイテムは、舌ベロリン、ということなんですかね。で、ここの表現の共通性で、このライオンとヨーダ顔は、おそらく同じ石工さん、少なくとも同じ工房だろうと思われるわけですね。
とすると、このライオンも、後はめ込みではなく、建設当時から、ここに置かれていた可能性が大ということになるんですな。なるほどな。
で、ライオンたちと同じファサード側なんですが、これは注目してね、という彫り物があります。

これ、強烈です。
目が一重じゃないのは、強調なのかしら。ロンゴバルドとも通じるような、プリミティブな印象ですよね。
解説では、これはケルトに由来する三つの頭を持つ怪物とされていました。
ケルトは興味があり、鶴岡真弓さんだったかな?ケルト文様の研究をされている方の本を読んだりもしたけど、残念ながら、ロマネスクやりだして以降にアイルランド渡航のチャンスがなかったりして、勉強もあまりできてないんです。
いつも、こうやって言及があると、付け焼刃で調べて、ちょっと納得して、ということを繰り返して、非常に断片的な知識しか持てないままです。
ま、今回も、とりあえず検索に頼りました。
で、分かったのが、トライアッド。三組神とされているものでした。なんでもケルトの神話や伝承では、三人の兄弟だったり息子の話が多かったり、三つ頭の怪物が頻繁に出てくるとか、3という数字が珍重されるっていうか、いろんなことの基本になっているということでした。
数を表すのに、3の20とか、3の50とかいう表現をするんだそうだ。衝撃。
三脚巴紋、三本の足が中心部につながっている図像で、あちこちでシンボル的に使われるものなども、どうやらここが起源らしいです。イタリアでも、サルデーニャとかシチリアで使われているけど、あれはケルトから流れてきたのかどうか。どちらも島国だということが、面白いですよね。
また、アイルランドのシンボルであるシャムロックというのがあるけれど、それも形状は三つ葉。ということで、ケルトの3推し、なかなか強烈だということで、これは認識なかったと思います。
もしかして、ギリシャ神話のケルベロスとも関連あり?と思ったのですが、ケルベロスが三つ頭なのは、冥界の門番として、一瞬たりとも寝落ちしてはいけないという単純な理由らしいですね。考えたら犬だしな、命令は忠実に守るだけで、考える頭脳は与えられてないだろうしな。
と考えちゃったのも、三人って、多数決ができるからかなとか、理由をね、ついこじつけようとしてしまって。
3はともかくとして、この図像の意味は諸説あるようですが、最も説得力が強いのが、女神ブリギドを表すのではないか、というものらしいです。ブリギドは詩文の才、治癒、鍛冶という三つの要素をつかさどるとされていて、そのそれぞれを三つの頭部に当てはめた、と。なぜ有力かというと、女性性、つまり出産のシーンも反映しているのではないか、という考え方から、女性ではないか、という帰納法らしいです。
というわけで、またいらん部分が長くなってしまいました。ちゃっちゃと写真だけアップしとけばいいのに、書いているとつい余計なことが気になるタイプ、笑。
しかし、面白いですよね。ロマネスクを考察することで、歴史の面白さを初めて理解しているように感じています。
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- 2022/10/09(日) 11:38:01|
- アルザス・ロマネスク 67-68
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