エミリア・ロマーニャの週末(2022年11月)、その7
ポレンタPolentaのサン・ドナート教会Pieve di San Donato、続きです。

前回記したように、現地で冊子をいただくことが出来たので、その冊子の記述を訳していきますね。
ファサードは、一見すると再建くさいんですが、再建は、ファサードに食い込んで建っている鐘楼だけということらしいです。ここにも蘊蓄があって、著名な詩人Carducciさんが、ある雑誌に発表した文の版権?なんていうんですかね。「ポレンタの教会」というものだったらしいんですが、それによって得た利益を、この鐘楼の再建資金に提供したんだそうです。で、一文学者がそこまでやるんだ的なことで、国も動いて、19世紀の終わりに、再建なった、といういい話らしいです。
Carducciって、よく高校の名前とかに使われているように思いま
すから、なんとなく知っているんですけど、詩人とは知らなんだ。
詩人が動いて国が追随するっていうのは、なんかイタリア的。イタリアって、文化遺産、歴史遺産にあふれていて、本当にそれらを維持保存するのは大変なことだと思うんですけど、その辺は結構ちゃんとやってるんですよね。ダメなところをあげたらきりのない国ではありますが、一方で、文化を大切にする姿勢は、なかなかすごいと感じることも多いです。
ファサード本体は、多孔質の石灰岩の切り石と、赤いレンガの列が交互に積まれていて、それだけで華やかな装飾となっているタイプ。これって、エミリア北部にもあるようなスタイルですね。
そういえば、あれは二年前だから、まだアップできていません…、反省。
その時は、鍵番さんが簡単にガイドもしてくださったのですが、石とレンガをこのように交互に積んだ意図として、1)装飾性、2)石だけだと凸凹してしまうために、レンガを入れることで安定性を作る、という二説あると伺いました。もちろん両方の可能性もあります。ここも、同じことかもね。
解説には、装飾性を求めた説しか書かれていませんでしたけれども。
このツートンカラー以外の装飾は乏しいのですが、扉口の上に、十字架があります。

かつては、ファサードのトップに置かれていたそうなんです。そういわれればなるほど、と思いますが、50センチもあるって書かれていて、ちょっとびっくりしました。全体で見ると、それほど大きなものに見えませんよね。
解説には、「ラテン十字で、十字の横腕は、燕の尾っぽの形、交わる部分は、軽くくぼみ細長い盾の上に、小指と薬指が折り曲げられた祝福のポーズの手が彫られている。上部の腕は、10枚の花弁を持つバラで飾られている。この教会の中で、最も古い手作り品の一つである。」とあります。
燕のしっぽだったのが、欠けちゃったとかなんですかね?
現地では、白くてきれいな状態もあり、また、とてもすっきりとスタイリッシュなので、現代のものと思い込んでいました。まさか古いモノとはね。上部のバラなども、肉眼では気付けませんよ。ズームで撮影しといてよかったわ~。
前回、歴史的なことに言及したのですが、この教会が作られたとき、ロンゴバルドが各地で略奪してきたブツが結構使われたわけです。この十字架も、おそらく、どこぞの教会の装飾品だったものが、持ち込まれたという経緯で、ここにあるらしいです。
略奪の挙句、持ってきちゃったから、無事残ったのかもしれないけれど、キリスト教の歴史もなかなかに血なまぐさかったりしますよねえ。
では入場します。現在は、本堂右側、つまり南側の扉が使われています。

前回書いたように、ちょうど団体のガイドツアーをやっていたので、入場時は明りが煌々とともされていました。細部までよく見えます。
かなり高くあげられている内陣が分かると思います。
電気が消されないうちに、と直感が働き、まずは、駆け込むようにクリプタにアクセスしました。

煌々!
かなり修復されている様子が明らかなうえに、この明り全開状態で、風情はありませんが、細部を観察するチャンスです。
実際、団体がお帰りになった途端、明りが落とされ、クリプタはつけておくから、と言ってくれたものの、明りがあるのは祭壇だけで、こんなに真っ暗になりました。

まぁこの方が本来の姿に近く、風情はありますけれど、手持ちの照明には限りがありますので、最初に明るい中で見学できたのはラッキーでした。

うにょうにょが、柱頭と祭壇部分おそろいですね。うにょうにょしていますが、葉っぱモチーフみたいですね。独特です。
解説、以下となります。
「教会と同時期に作られたもので、起原はおそらく高貴な人または家族の墓に使用される目的であったろう。内陣にアクセスする階段の右わきに開けられた小さな扉からアクセス。1890年の修復でもたらされ、三つの小さな身廊に分割され、天井は後陣部分にあたり、六つの小さな交差ヴォルトからなる。それらは、中央の四本の円柱(3本の円筒系と1本の四角)、10本の壁に寄り添った半円柱によって支えられている。小円柱の柱頭は、教会のそれと共通するテイストだが、ラインはより調和性が高い。うち二つは、クリプタの中央に置かれ、とても優美な浅浮彫で装飾されている。
後陣の奥に、最近作られた小さな祭壇があり、教会で最も古い手作り品が置かれている。浅浮彫で装飾された石膏のアーチ。かつては、クリプタへアクセスする小さな扉の上にあったとされる。扉は、もともとは、内陣の右側に開けられており、それは今日でも確認できる。」
うにょうにょ浅浮彫が、もともとクリプタにアクセスする扉の装飾だったということなんでしょうね。

全体に素朴で、柱も、角柱だったり円柱だったり多角だったりと、切り出したままみたいな様子で、いかにも古く、また地元の石工さん作なのかな、という様子も感じられます。

本堂に戻り、こちらも慌てて見学します。ガイドツアーの人たちがいたこともあり、普段だと、ちょっとためらうんですが、躊躇なく階段をの登って祭壇にアクセスします。

まずは目の端をとらえた柱頭の彫り物に突進です。内陣向かって左にあった愛らしいやつ!

グリフィンですかねえ。でも頭がなんか、何だろう?状態になっているのがチャーミングっていうか、私はこんなタイプ、好きですねぇ。
グリフィンがあるなら、対面はキメラかな、と思ったんですが、こっち側は損壊激しく、ちょっと分からないことになっていました。

柱頭に関しての解説は、以下となります。
「前部で10個。加えて、後陣にある半円柱の二つ。
それらは石膏または砂岩。ロンゴバルドに典型的なシンプルな彫りの技術で、7/8世紀に彫られたもの。明らかにラベンナのビザンチンテイストが見られる。」

「いくつかの柱頭は、とてもシンプルなもので、いくつかはリボンやつる草、葉などで豊かに装飾されている。
右列の6番目にあるようなフィギュアものは珍しい。それは、幻獣、おそらく鷲の頭と蛇のしっぽ、鋭い爪を持つグリフィン。
角の石には、人の頭部が彫られている。」

「後陣のもう一つの柱頭には、かわいらしい動物、鷲の頭とライオンの身体、その尻尾は蛇に噛まれている図。
祭壇の方を向いている角には、衣服や髭の様子から重要な人物と思われるフィギュアの上半身が見られる。
右四番目の柱頭は渦巻きで装飾されているが、動物の頭部のイメージを彷彿とさせる。内側面は、ギリシャ十字が明確である。その反対側は、フィギュアがあるが、理解しにくい。水を飲もうとしているガチョウ、一方で後ろでは犬が吠えているように見える。
人のフィギュアは、右一番目の柱頭に見られる。四つの粗雑な人の上半身が彫られているが、おそらく教会の最初の創設者ではないkと。
右二番目の柱頭の角にも、四人の人物が彫られている。

祭壇に向かう角には、立っている人の姿。前に曲がっていて、肩をあげている。手には、おそらく笏しゃくを持っているように見える。他の角には腰掛けている三人の人物が、手の間に足を入れている。南向きの角には、人のフィギュアの近くにオオカミがいて、それはロンゴバルドの文化では、神の意志を肯定的に表すシンボルとされている。」

結構撮影したんですけど、解説のすべてが合致しないというか、ちょっと分からなかったりするんですけど、とにかく素朴で愛らしいです。
ただ、明りが落とされたら、案の定細部が見えなくて、手持ちのライトを当てながらの撮影となり、なかなか本来の様子が分かりにくい写真になってしまったのが残念。あと20分ほど早く着いていたら、完璧でしたねぇ。

あと少し、せっかくの解説、あげておきたいので、続きます。
アップが遅いのに、長々とすみません。
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- 2022/12/23(金) 17:40:35|
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