一年前のエミリア周遊(2021年10月)、その9
ノナントラNonantolaのサン・シルベストロ修道院教会Cattedrale di San Silvestro、続きです。こんなに細かく書こうとはおもっていなかったのですが…。
やっと入場しようと思ったのですが、前回の、扉周りの記事で、うっかりしておりましたよ、涙。

うっかりしすぎだろうって話なんですが、側柱の浮彫についてまとめるのが結構大変だったもので、つい達成感に浸ってしまって、リュネッタに関しての記載を忘れておりました。過去のHPでも触れていなかったのも原因ですが、おそらく当時、調べ忘れみたいなことかと思います。
実は、ちょっと気になることがあったので、今更現地で買った本を引っ張り出したんですよ。で、改めて、ちゃんと書いていなかったこともあったので、追記的に記します。
リュネッタの下、いわゆるアーキトレーブ部分に文字が彫りこまれているのが認識できるでしょうか。なにが書いてあるかというと、「1117年にパダナ平野を襲った大地震の際、教会が損壊し、その四年後に再建が始まった」という記録的な文が彫られているのだそうです。
過去にも何度か言及していますが、1117年の大地震で損壊した北イタリアの教会は数多くあるようです。あちこちで、この年の地震で損壊、という記述は目にしていますから。
昨今、イタリアでも定期的に地震が発生しており、特に中部ウンブリアでの地震以来、エミリアでも頻発と言ってよいような状況です。今のところ、ミラノを含むロンバルディア州では、大きな揺れは来ていないものの、過去に揺れたことがないわけではないので、もし千年周期だったら?そろそろやばい?みたいなところもあるわけで、ちょっと怖いものはあります。
おっと、脱線しました。
このリュネッタ、もともと説教壇を飾っていた浮彫を集めて組み合わせて作られたものではないか、とされているようです。説教壇に関しては、現在影も形もないのですが、地域のいくつかの教会(Quarantoli、Carpi-残念ながら、どちらも未訪)で見られる説教壇と似たタイプのものであった可能性が高いと言われています。
中央に、祝福するキリスト、両脇に花を持った天使、そして四人の福音書家のシンボルという構図。アーモンドの中のキリストを支える二人の天使、というオーソドックスなものじゃなく、独立した天使二人、独特です。そして、天使がそれぞれ、ヤンキーがバットを持ってるように花を持ってるんですよ、笑。

それにしても、ここでも手が美しいこと。感心いたします。
行ったり来たりですみませんが、入場しましょう。

「教会内部に入ると、奥に、かなり高く持ち上げられた内陣が目に入ります。もちろん、その下にクリプタが あるためです。実はこの持ち上げられた内陣も、20世紀に行われた修復工事の賜物。クリプタは15世紀に水がしみだしたことでクローズされてしまい、その後内陣が下げられてしまったのです。
クリプタは、1121年作。一部がオリジナルである64本の円柱で、レンガのアーチ、漆喰塗りのヴォルトを支えています。」

「柱頭のうち36個は様々な古い時代のもの(その場にあったもの、美術館に 収められていたもの、近郊の別の場所のもの等)が使われ、それぞれ異なるモチーフになっています。」


パッと全体を見たときは、”柱の森”状態はすごいものの、床も新しいし、かなり保存状態が良いために、つるんとした新しい印象もあって、ふーん、というのか、若干感動が薄かったりもするかもしれないんですけど、丹念に見ていくと、いかにも再利用な様子のバラツキとか古さがあって、じわじわと時間や歴史を感じさせるような仕組み、というのも変だけど、そういうクリプタかと思います。
いずれにしても、広さ、半端なくて、さぞや立派な修道院だったのだろうと考えさせられます。
「祭壇は新しいものになっていますが、その中には、サンタンセルモやサンタドリアーノIII世のレリックが 今でも収められているそうです(かつてここにあったサン・シルベストロのレリックは、現在、本堂内陣の祭壇)。」

ちなみに、本堂にある祭壇は、すっかり新しいのですが、こんな様子です。これだけ見ると、中世の教会には見えないですよね。

磔刑図は、ちょっとオリジナルはいつごろか不明です。
衣がまっすぐに十字架をはみ出していて、やけにゆったりと長いのが、特徴的なのかな。どう考えても、両腕長すぎなのも、アンバランス感高めていて、キリストの困惑的表情の頭部と全体が、なんとなく合ってないみたいな。新しいのかな。

オリジナルの壁からはがされて、現在絵画のように壁に掲げられたフレスコ画(下の方)は、15世紀半ば過ぎ、1450/1475頃に、無名のマエストロとされる絵師の作品となるそうです。その時代についての知識は限りなくないに等しいので名前を見ても分からないのですけれど、Erri派とされているそうです。
磔刑図、受胎告知、そして7人の聖人が並ぶ三段だて。

聖人図は、一番左にマントを貧しい人に与えるサン・マルティーノ、サン・グレゴリオ・マーニョ、福音書家ヨハネ、中央部にサン・ジャコモ、法王サン・シルベストロ、その右に、修道院長サンタントニオ、そしてサン・グレゴリオ。
漆喰に覆われていたおかげで、保存状態が良いようですが、特に受胎告知は、この時代の絵画としての評価がとても高いものだそうです。技法がちょっとミニアチュールっぽくて、私も結構いいなと思いました。
教会内の見るべきはこんなところと思います。
今更ですが、ここはやはり一度は訪ねるべき場所ですね。
併設の博物館について、次回。
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- 2023/01/09(月) 17:55:16|
- エミリア・ロマーニャ・ロマネスク
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