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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

宝石キラキラの理想郷(ロトンダ その3)

ビザンチンと猫にどっぷり、テッサロニキ弾丸ツアー(2019年11月)、その14

聖ジョージのロトンダRotunda of St.George、しつこく続きです。
内部装飾の残りを見ていきたいと思います。
美しいモザイクは、前回の記事に加えて、まだあります。

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ちょっと分かりにくいと思うのですが、真ん中にある小さな円形の部分が、前回記事にした、イケメン天使がいる場所です。その円のかなり外側、ドームの下の方の、円錐部分に近い場所になるんですかね、そこにも、一部よく保存された金色背景のモザイクがあるんです。

ということは、これって、ドームが全部モザイクだったのは明らかですから、想像するだに破壊的な装飾が施されていたってことで、往時の様子を想像することは簡単ではないけれど、くらくらするような…。ドームの直径は24.5メートルとありますからね、すごいでかさです。全体が残されていないことが、心底残念です。

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全体に、豪華絢爛とした様子の建物が並んでおり、その前に、祈りのポーズを取っているらしい聖人が並んでいるということ。両手を広げるスタイルですね。聖人は、二人並びとか、まれに三人並びとか。

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聖人とわかるのは、それぞれ名前と、その聖人の祝日の日付が、脇に書かれているからということで、確かになんか書かれています。

南イタリアの各地に残されているビザンチンのフレスコ画を、このが数年多く回りましたが、断片的な知識では、ビザンチンは結構こういうキャプション好きみたいですね、笑。聖人の名前や、またその絵を寄進したスポンサーの名前なんかも記されていることが多いと聞いたように思います。

ただ、聖人の祝日というのは、初めて。

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一年365日、毎日が誰かしら聖人の日となっています。カトリックとビザンチンで共通するのかどうか、その辺は知らないですけれど。
例えば自分の名前がピエトロだったら、聖ピエトロの祝日が、自分の誕生日と同じくらい重要な日だったりするらしいです。昔は誕生日同様にお祝いしたりという習慣が、イタリアでもあったように聞きますが、今はね。大体、外国風な名前だったり、聖人でもなんでもない宝石の名前だったり、二つの名前をくっつけたり、以前は伝統的な聖人の名前しか存在しなかったイタリアでも、少しずつ由来の分からないような名前も増えてきていたりもしますしね。

ちなみに、聖人の祝日には、地味な恩恵を受けています。
というのも、各都市が守護聖人を持つ国で、その守護聖人の祝日は、ローカル祝日となるわけです。ミラノの守護聖人は、サンタンブロージョさんで、祝日は12月7日。その日はお休みとなりますし、オペラの殿堂スカラ座のシーズン初日でもありますし、ドゥオモ前にクリスマスの点灯式でもあります。
ローマはサン・ピエトロの祝日で6月だったかな。
そういうのとは関係ないけど有名な日では、サンタ・ルチアとか、サン・ビアージョの祝日などがあります。

おっと、また得意の脱線してます、笑。

ちなみに、上の写真の人は、軍人の神様的な聖人でプリスコさん、とありました。
下の人も同じようなタイプで、ヴァシリスコさんとありました。

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また下世話発言をしますけれど、どの聖人も、めっちゃ美しいですよねぇ、うっとり。ビザンチンの美の基準というのか、ある種漫画レベルなのがすごいです。つまり現代でも通じるっていうのか、まぁ漫画が西洋的な美に寄っている、ということなんでしょうけれども。

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髪型もそれぞれ違ったりするし、衣も人それぞれで、面白いですよね。解説では、「この時代400年ごろのアーティストは、後代のアーティスト同様に、ヘレニズムやローマの伝統的な表現法をもって働きながらも、同時代的な人々の様子を表そうとしていた」とありました。
以前にも、描かれた時代よりは前の時代のこと、聖人などかなり以前の時代の人だったりするわけですよね、そういうものを描きながらも、衣装などはどうしても同時代的なものを着せることになる、というお話を聞いたことがあり、目からうろこというのか、そういう視点で見たことがなかったので、すごく面白く感じたことがあります。

これは初期キリスト教時代だから、結構ローマ辺りはすぐ昨日的な時代でもありながら、すでに正当ビザンチンの宝石じゃらじゃら的な衣も多くて、近現代との違い、近現代は、すでに歴史をある程度俯瞰して、過去の資料もそろっているから、あえてなになに風、ということが出来るけれど、そういう時代じゃなかったというのか、うん、なんか面白いです。

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そして、聖人だけではなく、背景の建物もすごいんで、注目したいところ。
様々な建築スタイルの建物が描かれているわけですが、とにかくその装飾性が激しくて、何なんだ?という様子です。オリエント的っていうのか、イスラムの求める理想郷的な非常に具体的な豊かさというのか美しさというのか、直球に表されているのが、これまた面白い。

モザイク、きりがないので、この辺で切り上げて、もう一つ古い装飾へ。

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後陣となる場所、上の写真の奥まったところですが、半円後陣部分に、9世紀ごろのフレスコ画があります。
昇天をモチーフにしたものということですが、トルコ人の攻撃によって、激しく損傷を受けてしまって、その状態のまま、残されています。

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これまた残念な状態です。すでに下のレンガも見えちゃってますから、剥落もひどいし、残された部分も、結構加筆されて残ったということもありそうだし、全体に昇天の場面というのは分かるけれど…。

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この後陣部分は、床の一部が開けられており、おそらくオリジナルのレベルが見えるようになっているんだと思います。

オリジナルと言っても、その時代時代の建物の床面があったはずで、実際、少なくとも四層くらいが目視できますから、如何に長い歴史があって、そしてその中で、形を変えながら生き延びてきた建物か、ということが分かる状態。歴史の可視化ですね。

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ということで、入場料安すぎるんでは?と思わされる場所でした。
何度行っても楽しめそうです。
どうぞ、行かれる際は、望遠鏡やオペラグラスを忘れずに…。


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テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2023/02/24(金) 18:31:21|
  2. ビザンチン
  3. | コメント:0
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