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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

職人技の粋(聖十二使徒教会)

ビザンチンと猫にどっぷり、テッサロニキ弾丸ツアー(2019年11月)、その27

今回の教会も、前回同様、日中に訪ねたときはお昼休み中でした。その上、ここでは教会を取り巻く鉄柵までも施錠されており、近くによることもできなかったんですよね。幸い、日が暮れてから、再訪することが出来、無事本堂を訪ねることが出来たのは、カテリーナ同様です。

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十二使徒教会Twelve Apostlesです。
ここは、カテリーナよりもさらに町のはずれという位置付けで、町を取り囲んでいた壁もすぐそこ、という場所になりますから、そのせいなのか、土地に余裕があり、全体像を垣間見ることが出来ます。
それにしても、素晴らしいレンガ装飾芸術で、鉄柵に隔てられて遠くからしか見ることが出来ず、かなり不満でした。
特にこの後陣部分は、どうやったらこんなことが、と思わされるようなモチーフが沢山並んでいて、見ていて飽きない面です。

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例えば刺繍とか編み物などの手仕事だったら、モチーフだったり技法だったりに名前があると思うのですが、こういったレンガの技術にも、それぞれ名称があるんでしょうね。私は、屋根下のギザギザくらいしか知らないけれど…。
それにしても、ギザギザのすぐ下のキャンディーみたいな逆三角形とか、他で見たことないし…。
イタリアも、特に北部ロンバルディアやピエモンテではレンガが建材として多く使われていますけれど、ここまでこった装飾はないと思うんです。

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幾何学模様と思って、拡大したら、組紐文様じゃないですか。これ、私などは正確に描くこともできないのに、笑、レンガでやっちゃうとは、職人さんってすごいわぁ。

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この、ブラインド・アーチも、強烈じゃないですか。あらゆるモチーフ総出大盤振る舞いですよ。
浮彫彫るより労力はかからないかもしれないけれど、でも、同じように緻密さは問われそうだし、モチーフをどれだけ知ってるかで出来上がりのセンスも変わってきそうだし、そういう知識面でも、相当の熟練度を問われる職人技なんでしょうねぇ。この壁面、半日くらいいていられそうな気がします、笑。
実際、私などは身近な消しゴムハンコのモチーフに使ったりもしてるんですけど、きっと、多くのモチーフが、連綿と伝わってきて、今でもどこかで現代化したりして使われていたりするんだろうなぁ。
装飾の世界というのも、考えたら芸術と職人のせめぎあい的な部分がありますよね。どこまでが職人で、どこからが芸術家、みたいな。
そういう意味では、建築的には、いつも気になるんですけど、どこまでが棟梁の指示でどこからが個々の職人の裁量なのか、ということも、大変興味がありますねぇ。
ここは、他の面は、割と普通のレンガ積みで、後陣だけすごいことになっているので、ここは職人の中でも芸術家的な人が請け負ったと思うんですけどね、その辺の仕事っていうか、契約っていうか、いつも興味があります。

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ブラインドだけではなくて、ちゃんと開口部もあるんですが、この細細せませまのアーチにはやられました。とてつもなくかわいいです。この発想は他にはないですよね。一つのミクロな開口部というのは、ロマネスクにはありますけど、これはもはや芸術性だけだし、それにしてもこだわりがすごすぎるっていうか。いやはや、ビザンチンの方向性って、手仕事好きとかに異常に訴えるものがあるかもしれない、と今気付いています。

せっかくなので、日暮れてから訪ねたときのお姿も。

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レンガを楽しむなら、昼間の方がよさそうです。

さて、日暮れてから再訪した時、ミサ中でした。カテリーナは、ミサ中でもこっそり入れましたが、入ったところで身動き取れないのは学習済みなので、しばらく外で待って、ミサの終了後に入場しました。11月のことでしたから、寒さはあったのですが、しばらく待つくらいは問題ない程度だったのは幸いでした。
大気中に、建物をぐるりと回り、窓から中をのぞいたりして、夜間撮影をしておりました。

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内部はシャンデリアがともされていて、雰囲気あります。
考えたら、ミサだったり、儀式のときって、教会は明りを煌々とともしますよね。カテリーナ教会のミサは、真っ暗闇状態で、ちょっと特殊なのかな。

結婚式などのイベント的なミサはともかく、この時は、通常のミサだったし、直後でも明り煌々とまでは行かず、薄ぼんやりでした。シャンデリアの明かりは、写真だと煌々にうつりますが、実際は暗いんですよねぇ。

さて、この教会、内部にフレスコ画があります。ここらで、ちょっと解説を見ていきましょう。

「四角い建物の壁によって囲まれるような形にある教会の中心部が、十字型で、四本の円柱の上に建つ四つのトンネルヴォルトによって支えられたドームを抱くスタイル。」

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「中心部を取り巻くような形の廊下が北、西そして南側にあることで、サイズ感が大きくなっているが、形は正四角形のままである。
回廊の、北と南側の翼部分は、東側で小さな礼拝堂となっている。
ビザンチン中期及び後期の教会建築のルールに従って、教会は東側に三つの後陣を持つ。そして、西側は入り口の両方について、ナルテックスが置かれ、それは壁の代わりに、大きな開口部を持ち、それぞれが、中央に二本の柱を持つ。
創建は11世紀(7世紀とする研究者もいる)とされてきたが、今では14世紀のものとされている。」

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「中央ドームの四本の柱の柱頭は、それよりも以前の教会にあったものの再利用と考えられる。
この教会は、14世紀に同地にあった大きな修道院に属するものであった(市壁に近い場所にあった)」。

「内部壁は、モザイク及び壁画によって装飾されている。モザイクは、テッサロニキにあるモザイクにおいて、もっとも後期のものとされる。
ドームには、預言者とともに神が描かれている。ペンデンティブには、福音書家。」
正直言いますと、解説読むまで、モザイクとは分かっていませんでした。すべて壁画にしか見えなかったし、いずれにしても、かなり薄暗かったため、肉眼で詳細を見るのは不可能でしたしね。

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「南壁には、誕生と洗礼、西壁には変容とエルサレム入場。北壁は、磔刑と復活。西壁には、聖母の昇天。
モザイクでも、キリストの寺院でのPresentationや受胎告知などが描かれている。モザイクでは、テッサロニキにおけるレアリズムや芸術の劇的な品質が顕著である。二人の芸術家が見分けられるが、どちらも高度な技術を持ち、色彩の使い方も幅広い。
最初の芸術家は、ドーム、ペンデンティブ、そして十字の翼部分を担当しているが、壁画による影響を受けている。彼は、顔に小さなテッセラを使用して、とてもディテールに凝った表現力を駆使している。彼はまた、中間色を使用し、モザイクは遠目にはまるでフレスコ画のようにも見えるのである。
もう一人は、モザイクの基本であるシンプルな線を使っている。彼は、11世紀から12世紀に発展したがままに、モザイクの技術を素直に使用したタイプのようだ。
壁画は、アーケード、聖所、中央寺院の三面にある。それらは主に、聖母の人生を描くものとなっている。」

この解説で納得です。実際、本に掲載されている写真を見ても、テッセラはかなり細かく、絵画的な表現となっているモザイクです。

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全体で見ると、残されている部分が天上や壁に点在している状態で、ポツンポツンとあるので、あ、あそこに、ここに、という感じで、撮影しており、ちゃんと見られていないものも沢山あったのだと思います。
ビザンチンの教会は、シャンデリアがつるされていたり、ごちゃごちゃとしていて、天井を遮るアイテムも多くて、笑、撮影泣かせだったりします。

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「南アーケードの東側には、そのライフ・ツリーが描かれている。これは、この時期のマスターピースを言われる作品であり、優雅さ、高貴さが飛びぬけている。
北アーケードの東側は、洗礼者ヨハネに捧げられた礼拝堂となっており、その人生が描かれている。」

この辺りは、現地では分からなかったと思います。
撮影した写真を見ても、片鱗すら写ってないのです。おそらく簡単に取れないような状態だったのか、状態がよくなくて、よく見えなかったのか。サロメがあったらしいのですが、気付きもせず、残念至極です。

そんな中、最重要っぽく取り扱われてるこれは、割としっかりと撮影できていたので、自分の写真を使います。

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「変容のモザイク
変容が描かれた部分は、黄金の背景以外は、ほぼ無傷で残っている(黄金は、ほとんとすべてのモザイクから失われている)。
モニュメントがモスクに転用された際。おそらく1430年直後、モザイクは白色塗料で覆われ、それで黄金がはがれてしまった。
場面の中央で、キリストは岩の上に立ち、彼の右手は祈りのポーズでさし伸ばされている。彼の後ろには、楕円形の円盤があり、光線を発している。
左には預言者エリア、彼の腕は胸で交差されている。右にはモーゼがいて、十戒を手に持っている。
場面の下の方には、三人の使徒。左は膝まづくピーター、中央には、ヤコブが身を低くしており、右にはジョンがあおむけに横たわっていて、頭部が外側に飛び出している。」

ちなみに、サロメはこういう様子です。
かなりオリエントっぽい雰囲気が感じられると思うのですが、どうでしょうか。ヨハネを頭にのっけて、やばい女ですよね、笑。

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改めて写真を見直すと、ここは、一連の教会の中では地味な方に位置付けされていると思うのですが、見所てんこ盛りだし、雰囲気も良い教会だと思います。ここに限らずですが、教会中を煌々たる明りで満たして、望遠鏡など併用して、心行くまで楽しみたい教会の多いことよ、です。かなうことはない夢でしょうけれど。

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というわけで、教会巡りは、これで終了となります。
ビザンチンのことは、歴史からして、身についていないし、美術については門外漢もよいところなのですが、後付け、それも相当の後付けながら、解説を読むことで、ほんの少しは学びがあった気がします。
結果、もう少し見たい気持ちは強まっていますので、また連休など利用して、他の土地にも行けたらなぁ、と現実的に考えておりますので、その際はまた、お付き合いください。

おっと、まだちょっとだけ続きますので、早まらず…。

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テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2023/04/09(日) 18:12:59|
  2. ビザンチン
  3. | コメント:0
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