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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

喧騒を逃れ、石工の脳内へ(ブレ18 その1)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その11(ベリー)

次に訪ねたのは、前回のシャルリから西方面すぐ近くの町。
ここは、住所とかなくても、村の名前だけで、行けば迷うことなく教会に出くわすことが出来て、探す必要が一切ないのは、ある意味助かるわけですが、トンデモないロケーションだと思います。

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村の中心部にあることは間違いないんだけど、街道沿いに村が出来ちゃってて、その名も「教会広場」が、広場というより街道と一体化しちゃってるというのか。
教会のすぐ下を走っているRoute de Bourgesは、この地域の幹線道路となり、私もこの道で、地図で右の方になるシャルリからやってきたんですが、ちょっとびっくりしました。
この道、通行量も多いし、結構車も飛ばしているのか、音もうるさいんですよ。だから、教会には何の罪もないのに、笑、なんかうさん臭いんじゃん、とか思ってしまいました。

改めて。

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ブレBletのサン・ジェルマン教会Eglise Saint-Germainです(5月から9月まで、毎日オープン(2019年)、後陣裏に公衆トイレあり)。
シャルリ方面から来ると、この眺めですから、見逃すことはありません。

この教会、なんといっても柱頭が面白くて、クルマの交通量と騒音に辟易として入場したのですが、その途端、のめり込みました。
というわけで、何はともあれ、内部から。

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構造はこういう様子で、図の黒い部分が、建築当時のオリジナルを示しているのではないかと思います。

ファサード側、つまり図面では下の部分は、全体に白々とした、フランスらしい様子になっていて、あ、また…と思わされるのですが…。

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内陣は、極彩色状態で、つながっているスペースにも関わらず、落差が激しいです。

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竣工当時は、全体がこういう極彩色状態だったということなんでしょうかねぇ。内陣部分だけ、いまだに彩色を残している教会、フランスには数多く見られますけれど、実際にどうだったか、というのは、私は分かってないんです。
柱頭は彩色されていたはず、というのが定説ではありますが、本当に、教会全体、信者席の方までなされていたんだろうか。
薄暗い中では、彩色がある方が、図像が分かりやすいため、彩色の意味は今以上にあるとは思うのだけど、内陣よりはるかに広いスペース、はるかに多くの柱頭や柱があるわけで、それ前部に手をかけるということは、コストも相当かかることになるしねぇ。

さて、というわけで、この教会では、手前の方の白い世界と、彩色のある内陣スペースでは、彫り物のイメージもずいぶんと異なっています。まずは白い世界から。

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面白いんです。
ちょっと、トスカーナのヴァルダルノ地域にある柱頭にも通じる、シンプルな線の一筆書きみたいなすっきりとした図像で、浮かび上がるヘタウマといってもよいような、ある意味デザイン的なフィギュアの数々。
この、角の人は、グリーンマン的なものなんだろうか?
お隣に、殻を割って出てきたようなマントの人?エニグマティックな様子も、大好物。

かと思うと、聖書のエピソード的なものがあったり。

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残念ながら、教会に置かれていた解説が、達筆すぎて読めないし、例によって検索しても、細かい解説が出てこないんですよねぇ、涙。
「怪物やら獣がデフォルメされた柱頭に混じり、キリストの一生を描いた浮彫もあり、中でも最後の晩餐が興味深い」とあったので、これがそうかと思うんですが、この柱頭一つで、一生を凝縮してるってことかしら?だとしたら、どんな媒体のどういったスタイルのダイジェスト版よりもすごいよね。これを超えるダイジェストはあり得ない!

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これは、どうだろう?
アトラスとダニエルが一体化した図像とか?
例によっての勝手な妄想、大全開、笑。

これもまた、ハイブリッドな様子の柱頭で、左側はどう見てもケンタウロスで、神話っぽい世界。

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これが、右側の方に回ると、右端は、こういう図像って、エリザベスご訪問に見えちゃうんだけど、とすると、ケンタウロスとの間は、受胎告知の示唆だったりする?端折り過ぎだし、なんでケンタウロス?となっちゃうから、とすると、エリザベスは無関係かぁ。

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どうしても、聖書というところに引っ張られちゃうけど、とすると、これなどは幼児虐殺にしか見えないよね。

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それにしてもばらばらととりとめのない配置の彫り物なのが、何か言いたいのかしらん。

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これはあれだな、おっぱいに蛇がかみついてるってやつ。割とよく見る図像だよね。あ、ここでは蛇じゃなくてキメラみたいな動物だね。右の角には、冒頭にもあった変形グリーンマンみたいな顔があって、何か変なものを加えているのか吐き出しているのか、という彫りです。
ここ、副柱頭の部分に、ゼムクリップ帯があるのが、目新しいです。これは、他で見た記憶ないけど、すっきりしてよいですね。

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これもオリジナリティ高い~。
こんな横90度曲げ人魚、初めて見たよ。髪の毛は重力に素直だけど、おっぱいは抵抗してるのが受けます、笑。
人魚の反対側には、射手がいます。

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間に置かれた植物モチーフもすごくかわいいんだけど、それにしても図像の意味が、全然分からな過ぎて…。
分からないけど面白くて、何か石工さんの世界観みたいなものを感じてしまうレベル。で、興味の赴くままにふらふらしちゃって、意外と撮影枚数が少ないのが残念です。

続きます。


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テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2023/05/15(月) 18:19:13|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:0
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