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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ウィスキー・キャット(シャルヴォイ・ミロン18 その2)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その14(ベリー)

シャリヴォイ・ミロンChalivoy-Milonのサン・エロワ教会Eglise Saint-Eloi、続きです。

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ここ、フレスコに加えて、浮彫装飾も沢山あるんです。
上の写真で、ちらと見えている、内陣の入り口部分にある柱頭、ここは、結構上の方にありまして、現地では細かいところまで確認できないのは毎度のことでして、今、僅かな解説を見つけて、実際の旅から4年もたって、面白がっているところです。ふふ、なんだか長生きしそうな気がしますわ。

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本堂に向いた側には、猫がネズミをガジガジしている図像。そして、角にそれぞれ顔が置かれて、内側に向いた部分とその先は、ブドウの収穫にかかわる一連の作業場面なんだって。刈り取りとか運んだりとか。

ランタンみたいにずらりと上にならんでいるのが、どうやらブドウの房ということなんでしょうが、言われなければ、まったく分からないわ。
それにしても、にゃんこは?

スコットランドのウィスキーキャットのように、猫も農民の生活を守り助ける重要な役割を担っていたということを表したのかな。初めて見たと思います。残念なのは、猫もネズミもかわいくないっていうことかな、笑。

そして、右側は、ワンコ。

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犬たちが、人の頭をガジガジ図だって。
ワンコが植物の乗っかっているようになっているのが面白いデザインだし、にゃんこやワンコをフューチャーするって、思い切ったことやったよね、石工さん。

歴史を紐解くと、8世紀ごろ創建された修道院の修道士たちによって、地域の土地が開墾された、ということがあったようで、そして、この教会についても、そういった修道士の働きで得たものがつぎ込まれて装飾も行われたそうなので、開墾を担った修道士の気持ちが表れているのかもしれないですねぇ。
当時は、にゃんこやワンコにもフレンドリーな、まさに「猫の手も借りたい」状況だったのかもねぇ。

歴史にかかわってついでに記しておくと、この教会が現在のEloiさんに捧げられたのは、比較的最近で、もともとはSaint-Sylvainという、310年に殉教して、この地の守護聖人とされた人に捧げられていたようです。そのためか、グーグル検索すると、今でもSylvainの名前で出て来ました。Eloiさん、認知薄い…。

内陣の奥へずずいと進むと、フレスコのある壁部分、かなり装飾的になっていることが分かると思います。

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後陣の壁部分が、なんと上下二段のアーチになっているの、すごいですよね。

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窓の枠部分が、まるでセラブロ、だったかな、スペインのアラゴンの一地域にあるスタイルだけど、セラブロの装飾様式みたいになってたり、小円柱がネジリン棒になっていたり。フレスコも相まって、ごちゃごちゃしています。
ネジリン棒も、ただ、ねじってるだけじゃないのが、びっくりします。

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スジスジが、つるりとしたものじゃなくて、数種類のモチーフが入っているんです。これまた初めて見たなぁ。
イタリアだと、ネジリン棒にモザイク装飾を施すというのはあるけど、これは無色モザイクみたいな発想の装飾ですよね。すごいわ。

柱頭のモチーフは、割とスタンダードなものですが、時々こういうのがあったり。

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これは、実はワンコの上にあります。なんだろね。
足元の三人は、やけに写実が勝った彫りだけど、上の人は、ワンパンマン的な一筆書きで、困っている様子も見えたり。下の人も含めて、全員で、何か訴えてる感じかなぁ。

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これは、後付けでねじ込まれた鐘楼構造の部分にあるから、もしかするとワンコの柱頭より、1世紀くらい後に、つけられたものかもしれないですね。

では、外に出て、外観見学します。

まず、残念なのは、どうやら入り口扉のタンパンを見逃したことです。なぜ、入場口の上を見ないのか。まぁ、あまり魅力を感じないものだったのかもしれませんが、ロマネスク当時の彫り物があるようなので、どうぞ、お見逃しなきよう…。

見るべきは、やはり後陣側で、沢山の軒持ち送りが並んでいます。

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外側も、ブラインドアーチが沢山で、実に装飾的ですよね。
修道士さんたち、すっごく装飾したかったんですねぇ。総本山だったブールジュへの対抗意識みたいなものもあったのかなぁ。

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軒持ち送り、サイズは小さめですが、モチーフのバリエがすごいです。

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こういう、怪しい様子のは、とても惹かれます。

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研究所で突然生まれてしまった新生物的な様子が、何とも不気味…、笑。

後陣つけ柱の柱頭。

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解説に、突然「二頭のカワウソ」と出てきて、へっ?と思ったんですが、これ、カワウソなんですね。こういうタイプの動物って、割と遭遇していると思うんだけど、単純に肉食獣的なものと認識していて、カワウソなんて、夢にも考えたことがなかったし、そういった動物が彫られるって頭になかったんですよねぇ。これ、葉っぱを食べている図だそうです。

地図で確認すると、この辺りは小さな川が多いようですから、身近な動物だったのかしら。今後、水の多い土地で動物に出会ったら、もしかして、と考えるようにしたいと思います。

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普通にかわいいヤギさんと、ヘタウマデザイン系の不気味系。

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とっちゃん坊や系二連発。右の人は、ちょっとしんちゃん入ってるぽい。
下のは、かなりおどろきます。

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すごくないですか。現代彫刻でも通るような、なんていうのか、写実も入ってるけど、石工さんの気持ち入ってるよね?みたいな…。要は職人仕事というよりアートだなっていう。髪型が聖職者っぽいんだけど、このいじけた体育座り…。いやはや。

というわけで、楽しい教会でした。
そして、近所の方がマメにケアしている様子も好ましい教会です。
私が一人で見学を開始した途端、入ってこられた女性がいて、管理をされている方のようで、開口一番、「イタリア語でよろしいかしら?」と言われて驚きました。私の車のナンバーを見たのだろう、ということは、しばらくして分かったんですけども、びっくりしました。
そういうのって、ストーカーみたいで、笑、監視しすぎでいやじゃん、と思う人もいるかもしれないけど、まぁ田舎だから、それほど見学者が来るはずもなく、見慣れない車には気付いちゃうという程度のことだと思うし、やはり、大切にしているんですよね。
その女性は、すぐにイタリア語の説明を持ってきてくれました。頼めばガイドもしてくださったと思います。


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