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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

四年後に楽しむ(ドゥン・シュローロン18)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その15(ベリー)

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ドゥン・シュローロンDun-sur-Auronのサンテティエンヌ参事会教会Eglise Collegiale Saint-Etienne(毎日9-12/14-17)。

写真では分かりにくいかもしれないのですが、結構大きな教会でして、それも一見してゴシックテイスト全開なので、簡単にアクセスできたはいいけど、いまいち気持ちが上がらないのでした。
それなのに、何でしょうね、この開放的な様子なのかな、妙に印象的で、このたたずまい、やけに記憶に残っていたりするのが不思議です。

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中に入っても、やはり…。壮大なゴシックで、その上、というかそのくせ、相当暗かったです。カメラは、ちょっとした外光があると、意外と明るく撮影できてしまいますが、現場はこんなものではなく、薄暗がり状態です。
自分のメモにあるのは、「中はがらんどう感がすごく、全体にくすんですすけて汚れたイメージ」。真夏だけど寒々としてましたねぇ。

歴史としては、創建は1019年と古いものの、今ある建物の基礎は12世紀の建築で、その後16世紀そして現在まで、火事という事故も含めて、再建や修復や改築が結構激しく行われてきた結果、ということになるようです。
ただ、有難いことに、内陣部分には、往時の遺構が結構残されています。

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教会は、内陣部分に周歩廊があり、そこに三つの礼拝堂がある構造で、内二つの礼拝堂が今も残されています。そして、この部分に、12世紀の柱頭が残されているのです。
今回はウィキを参照したのですが、以下の解説がありました。

「後陣は、その両脇の小後陣をもって、円柱の支えを持つが、ポワトーの影響があり、柱頭彫刻や、またその図像も同様である。軒持ち送りは、人や動物の頭部からなる。開口部のアーキボルトは。装飾帯で囲まれ、ねじれた円柱によって支えられている。円柱の柱頭は、多くの図像で豊かに装飾されている。」
「内陣は、大きな周歩廊を持つが、これはベリー地域には珍しいスタイル。とはいえ、Saint-Blaise de La Celleにも見られるのである。
周歩廊を取り巻く礼拝堂のスタイルは、ポワトーのスタイル。
ここの角柱は、装飾的な柱頭が置かれ、怪物や植物のモチーフなど、ベリー以外の地域の影響を感じさせるもの。例えばその図像は。ショーヴィニーChauvignyのサン・ピエールを彷彿とさせる。」

教会の、あちこちのオリジナル装飾に、ポワトーやサントンジュの影響がみられる、という記述が複数あり、興味を持ちました。
実は、もしもコロナがなかったら、この旅に翌年に、まさにその地域に行こうと考えていたんですよね。位置的には、ここらから遠くないというか、続いている地域っていうか、そういうことに気付いて、前に駆け足で回ってからずいぶんと時間もたっているので、と考えていたのです。
結果として、もちろん行けなくなってしまいましたが、こんな解説を見たら、やはり行かねば、という気持ちになります。
以前はかなりの駆け足だったのですが、一般的に装飾的なイメージの強い地域だけど、実はそれだけじゃなくデザイン的な要素も強いみたいな、イタリアでいえばピサ様式に通じるようなものがあるような気もして、個人的には好きなスタイルなんだと思うんですよね。まぁ、数年内には再訪できると思います。

話がそれてしまいましたが、解説の面白さに比して、先にも書いたように、本当に暗かったのもあり、撮影枚数がすごく少ないのです。柱頭も、手振れがひどくて、ろくに撮れていませんし、開口部の装飾など、気付きもしませんで…。

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現場では認識できなかったですが、これはダニエルさんですね。

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これなんかが、解説でショーヴィニーに言及しているタイプかな。

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これは竪琴とロバなのかな。
「これはロマネスクの動物彫刻ではよく見られるテーマ。Aulnayのサン・ピエールのものが有名。無知や怠惰な精神などを表すもので、ベリー地域でも、他の教会でも見られる図像」とあります。Aulnayは行けてないですが、確かに私でも知ってるくらい有名ですね。

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装飾的な帯なども含めて、かなり細かい彫りのものと、ざっくりとプリミティブなものが混ざっている感じ。

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それにしても、もう少し明りがあれば…。
解説によれば、象があるみたいなんだけど、分からなかったのが残念です。闇雲に撮影はしているけれど、よく見えてないのがネックですよね。

さて、外側ですが、入り口付近のゴシック全開部分は見なかったことにして、後陣の方へ。
といっても、ゴシック様式の付け足し部分が多くて、構造がすごく分かりにくいことになっていて、自分の撮影したもので全体が分かるものがないので、ストリートビューをお借りしました。

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丁度、トップの写真と対角でのびゅーとなりますが、鉄さび色の部分が、見るべき場所となります。
この建材について、以下の解説がありました。
「鉄の酸化によって赤っぽく染まった石灰岩が印象的。これは、ベリー地域、特にDun周辺では多く見られる石である。ここ以外でも、Charost(旅の後半で立ち寄ります) やVornayといった教会が、同じ石で作られている。
この石、鉄分を含む湖水地域の石灰岩は、彫刻には向かないため、柱頭はCharlyの石になされている。」

鉄分が多く含まれる石は、時々お目にかかりますね。イタリアでもスペインでもあって、そういう色の石があると、こうやってそうではない色の石と合わせて使うことで装飾性を出すのは、どこも同じですね。

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大きなテッセラを使った抽象的なモザイクという様子で、好きですし、角ばった土台に置かれた丸い石積みのつけ柱が、何とも言えず良いです。ここまで赤いと、ほとんどレンガの色ですよね。

ちなみに、ゴシック様式の部分には、この石はほとんど使われていないようです。ほんのわずか、アクセント的にはめ込まれているのが、トップの写真で分かりますよね。供給がなくなったのか、好みが変わったのか、どういうことなのでしょうか。
そしてその事実に気付くと、なぜこの部分だけ、取り壊すことなく残したのか、ということについても、不思議になります。ただありがたいですが。

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浮彫の保存状態は良く、細かい彫りが、中よりも明るい分分かりやすかったです。
左の手は…。珍しいですよね。

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細かいアーチ装飾。なかなかのテクニックですよね。
左側の柱頭のフィギュアは、柱を飲み込む様子になっている食いしん坊だそうで、これまた「ポワトー及びサントンジュ地域に散見されるものだ」ということ。
これって、フィギュアがかわいかったことが記憶になくて、テーマとしては好きじゃないんですけども、12世紀なんですかね。

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こちらは全身像ですが、やはりかなり力入れて、植物を握りしめている聖職者たち。手だけのやつと、モチーフは同じですよね。何だろう。

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寸胴な割に、おっぱいはやけに細かく、顔の彫りも繊細な人魚もいました。

というわけで、現地ではあまりそそられなかった教会ですが、意外と四年後に楽しめましたね。

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