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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

石工ジローさん(ブールジュ18、その2)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その16(ベリー)

ブールジュBourges、続きです。と言っても、カテドラルではなくて、別のロマネスクです。

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サン・ウルサンの扉Portail Saint Ursinです。
ここ、こうやって普通の何でもない道に、扉部分だけが残っているやつで、それも本当に地味な様子なんで、うっかりすると、探していても見逃したりしそうなやつです。

カテドラルの、南扉すぐ近くに、ツーリスト・インフォメーションがあったので、ちょっと立ち寄ったんですよ。一般の旅とは違って、基本的に、ツーリスト・インフォメーションを探して訪ねることはないのですが、目につけば、何らかの資料などがもらえる可能性がゼロではないので、立ち寄ることにしています。
この町では、特に聞くこともなかったので、一応、この扉の位置を聞いてみたところ、「なにそれ?」みたいな対応で、笑、慌ててネット検索しておりました。
で、「あ、これね、その教会は、扉しか残ってなくて、見るものはありませんよ」と断言されました~!
いや、あなた、私はその扉目的で来てますのよ、とは言いませんでしたが、この町は大聖堂自慢で、大聖堂サイトでも一応中世推しみたいな部分があるにも関わらず、ちょっと情けないっていうか、寂しいものでした。

昨今、ツーリスト・インフォメーションのレベルが、どこでも下がりまくりな気がします。経費削減なのか、紙資料は激減だし、誰もがネット検索でかなりの情報をゲットできてしまう中での、彼らの役割ってものが、全然確率できてないっていうか。特におフランスは、そもそも感じ悪い人が多いので、笑、さらに、何のためにいるんですか?と言いたくなること多し…。

というわけで、やってきました。

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それなりに交通量のある道沿いなので、黒いのは、主に排気ガスによる汚れと思われます。洗えばきれいになるでしょうし、カテドラル同様に、白っぽい石色でしょうよね。邪険にされてるなぁ。

ここは、現場に置かれていた説明版の解説を簡単にまとめてみます。非常に完結かつ必要十分な説明が書かれていて、こういうのどこでも置いてくれると、実に助かるんですけどね。

「元々は、Bourbonnouxとよばれた地域にあった参事会教会サン・ウルサンSaint-Ursinの遺構。教会は18世紀に消失。」

解説に沿って、まずは、側柱部分の装飾から。

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「ブドウ蔓模様と子熊Oursons(おそらく、教会創設者であるサン・ウルサンの名前を彷彿させる意図)」
子熊の発音は、ウルソンとなるみたいなので、言葉遊びみたいな発想なんですね。これは、解説なかったら分からないことで、こういうのは他にもありそうだけど、これまで気付いたことはなかった気がします。
それにしても、これ、子熊?確かにブドウ食ってるが、どう見ても肉食系動物…。

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いろんな動物がいる中に、子熊もいたのかもしれません。
どうも、一日の終わりだったので、撮影枚数が全体に少なく、気合が薄れている様子がうかがわれます…シュン。

次は、タンパンの一番下の真ん中部分です。やけに大胆な植物文様の上の部分になります。

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「彫刻家のサインGirauldus fecit istas portas(Giraudが作った)」
すごい俺様系だったんですね、ジローさんたら。その割に、字がいまいちなんだよな。確かに浮彫いいんだけども。

タンパンは、三段に分割されていて、その一番下の部分。

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これは、農業暦とでもいうんですかね、各月の仕事を、表したもので、中世にはよく扉口装飾に使われた図像となります。イタリアだと、中部に多いとされていますが、フランスでも、そういった地域性があるのか、または中世当時から、フランスは全土的に農業やってた感じで、特定地域に特有ということもないのかな。

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「左側の二月から始まる。農民が、火の前で温まっている。」

なぜ二月から? 三月は、鎌でも研いでますかね?

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五月、六月、いかにも仕事してる様子で、七月、収穫してるみたいで、ここは、アーチ二つ分を使って表されているので、見ろよ!ここだぜ!みたいな感じなんですかね。

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8月も頑張って働いて、9月はなりものを収穫している様子です。

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10月11月辺りは家畜ですね。そして、右端に一月がありました。オーブンで料理をしているようで、つまり収穫のあとをここに置きたかったから、ということなんですかね。

上から二段目。

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「シカとイノシシの狩。おそらく、古い時代の石棺に彫られた図像から着想を得たもの。」

確かに、こういうごちゃごちゃした浮彫って、ローマの石棺とかによくありますよね。石工が、オレうまいんだぜ!とやるのに、ある意味ピッタリはモチーフなのかもね。これだけの人やら何やらを奥行きも含めて彫るのは、確かに骨の折れる仕事だと思います。だけど、面白みや新鮮さないし、なんでって思っちゃうけども。すまん、ジローよ。

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仕事暦図はスタンダードだけど、こういった唐突な狩だったり、また一番上の図像は動物フューチャーの寓話で、これらは珍しいとあります。
何が珍しいって、こういう異なる内容の図像を、三段にしちゃったのが珍しいように感じます。
やっぱり、俺様発想ですかね、笑。

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「ロバの先生、狐ののどにくちばしを突っ込んでいるツル、クマと鶏に付き添われた、狐の嘘っこ葬式。」

捕食者と非捕食者の逆転みたいな図は、初期キリスト教から中世にはよく見られますね。初期キリスト教も含めて思うのは、結構床モザイクに、そういった図像が使われているように思い出されるからです。ベネチアとか、アクイレイアとか。

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ツルが、マジ怖い…。キツネ、完全にビビってますよね、しっぽまいてるし、笑。

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日頃馬鹿にされているうっぷんを晴らそう的な様子で、ヒールに徹しているロバと、つぶらな瞳でその先生を見つめるワンコ、これかなり好きです。

というわけで、ここは現場も、そして四年後も、しっかり楽しみました。いつか再訪したら、白くきれいになっていることを楽しみにします。


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コメント

Google map に位置情報を入れたのは、1年前の私です。20年近く前にzodiaqueを抱えて夜に訪ねた時に探すのに大変、苦労したからです。最近になって調べ物でGoogle mapを見ていて、マークされていないことに気づきました。暗い写真も添えています。フランスは、このような史跡も
Google mapに載っていないのがかなりあります。困ったものです。
  1. 2023/06/02(金) 05:43:35 |
  2. URL |
  3. sioz4026 #-
  4. [ 編集 ]

ありがとうございます!

Shiozさん、ひゃあ、そうなんですね。
そういう地道な努力で、Googleの情報も増えてきているのですね。そういうのって、教会自身や観光局がやっているものと思い込んでおりました。フランスで、感じがよかったり、情報がすごかったりする観光局って、そういえば出会ったことないかもですねぇ。まぁ、イタリアも似たり寄ったりですけど。
それにしても、ネットの情報、本当に増えてきて、ずいぶん助かっています。そもそも、以前はネットもなかったしスマホもなかったし、効率が全然違いますよね。
  1. 2023/06/03(土) 15:57:17 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

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