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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

聖体ホスティア(タヴァン37 その1)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その49(アンドラ・エ・ロワール)

さて、写真撮影の順番から行くと、次に訪ねたのは、この地域で間違いなく最も重要な教会の一つで、印象も非常に強かったのですが、何でしょうね?あまりに光が強くて、逆に見失う太陽のような、そういうことがメンタルに響いたのか、記憶力保持目的で現地で着けている備忘録に、ほとんど最低限のメモしか残っておらず、我ながら首をひねりました。

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タヴァンTvantのサン・ニコラ教会Eglise Saint-Nicolasです(2019年当時、水曜から日曜の10時半-12時半/+13時半-18時、水曜は午後飲み。クリプトはガイド・ツアーで、午前中3回、午後5回組まれていました)。

私は、確か午後、割と早めにつきましたが、その時13時半のツアーを行っていたのだったと記憶しています。その後14時15分のツアーに参加できたのですが、一人だったか、他の人がいたとしても二人程度の小さなツアーで、その後のツアーでは、かなりぞろぞろと人が集まっていたので、ラッキーでした。ガイドの方は英語も堪能とメモしているので、英語でガイドしてもらえたようですし。

ただし、クリプトは撮影厳禁となっているため、本を求めました。撮影禁止は、辛いところもあるのですが、でも、写真満載の本を販売しているなら、大いにありだと思います。というのも、撮影できないことで、現場での集中度が高まることがあるのか、クリプトの情景が、今でも思い出せるんですよね。記憶力に難ありの私には、これはなかなかすごいことです。

というわけで、その本を読みだしてしまいました。もちろんフランス語ですから、自動翻訳を駆使して、というわけで、とても時間がかかっています。でも、せっかくなので、一部は紹介したいし、ノロノロ進めていきます。

ただ、私の印象では、結構分かりにくい書き方をした解説書です。一義的に自動翻訳で日本語にしたものを、イタリア語翻訳の内容で調整するようにして読んだのですが、特にイタリア語だと、文字を置き換えるだけなので、日本語よりはかなり分かりやすくなることも多いのですが、どうも文の構成というのか、単語の使い方というのか。いわゆる読みにくいタイプの文章のような気が大いにしました。あとね、なんといってもだらだら長文すぎ、笑。
ま、そこは置いといて。

めったに気にもしない土地情報から。

「白亜紀の石灰岩の大きな露頭の存在がこの渓谷の主な地質学的特徴であり、地元のほとんどの建築物に使用される凝灰岩と白亜が豊富に供給されました。
中世期から代表的なブドウの文化は大きく発展し、今日では地域の経済活動に不可欠なものとなっています。
1997 年に行われた発掘調査により、新石器時代中期、そして新石器時代後期に定住生活があった最初の痕跡を見つけることが可能になりました。同じ調査で、帝国初期のローマ遺跡も明らかになりました(1から3世紀)。
一方、中世盛期については何の痕跡も文書も残っておらず、372年頃にトゥール近郊にサン・マルタンのために設立された修道院の憲章文書に、10世紀末頃タヴァンについての言及がある程度です。」

この辺りで白い石が産出するという事実は、メモしておこうかな、と思った次第です。また、定住地としては古いのに、記録がない、というのも、ローマ以降、4/5世紀にわたって、一度村として死んでしまったのかなど、面白い気がします。

「中世には、地域に、 2 つの宗教の中心地が共存していたことがわかっています。
Vienne川のほとりにあるノートルダムに捧げられ、マルムティエ修道院に属していた修道院と、サン・ニコラに捧げられた教区教会です。」

この修道院の歴史についての記述は省略しますが、土地の有力者間の闘争の歴史でもあり、結果、11世紀に一度焼失しているようです。
一方、我らがサン・ニコラについては、以下。

「修道院教会と聖ニコラに捧げられた教区教会の間には顕著な類似点が見られるため、ノートルダム教会の再建がサン・ニコラの建設のほんの少し前であったことを考慮すると、サン・ニコラは 11 世紀末のものとされることがほとんどです。
さらに、教区教会の奉献は、1087 年にノルマン人によって聖ニコラスの聖遺物がバーリに移された後、11 世紀末以降の西側における聖ニコラス崇拝の発展と関連しているはずです。サン・ニコラ教区教会について言及した最初の文書は 1223 年のもので、おそらく建設から 1 世紀以上後です。」

まさかとも思いましたが、やはりバーリの二コラさんだったのですね。フランスでは珍しいようにも思いますが、ノルマン人が噛んでいることで、何らかのつながりが持たれたということなのでしょうかね。二コラさんは、確か東方の方だと記憶しており、バーリの聖遺物についても略奪系ではなかったかと思うのですが、それでも、イタリアで人気のある聖人が遥々こんな遠方に奉られていると思うと、何かしら親しみを感じたりします。

御託多いですよね、ペコリ。
本堂入って、最初に駆け寄ってしまう内陣のフレスコ画、見ていきますね。

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この写真のイメージより、実際はもっとこじんまりしていると思いますが、真っ白な中、奥まった内陣部分だけに、フレスコ画が残されています。本来は、全体に描かれていた様子です。やはりベリーっぽいのかな。

「絵画装飾は、教会の建設が完了した直後に施工されました。様式を分析すると、12 世紀前半から半ばにかけてのいくつかの壁画に近い様子です。
これらの絵画はおそらく 17 世紀か 18 世紀に上から覆われ、研究者によって明るみに出たのは 20 世紀半ばの少し前になってからでした。1990年、特に深刻な亀裂が生じたため、修復が開始されました。建物が安定すると、石積みの乱れを修正することは不可能だったため、修復者の使命は特にこれらの亀裂を埋め、絵画の明瞭性を回復することでした。1990 年に後陣で、その直後に内陣の第一柱間でそれを行いました。
過剰な損失のため、全体としての絵画の構成や内容はもはや把握できなくなっていますが、一部を理解することは可能です。」

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「最初から、それはロマネスク様式の教会の内陣でおなじみな内容となっており、 半円ドームでは、キリストが栄光の中で玉座に降り、その栄光の姿の周りには、4 人の福音書家のシンボルが伴われています。」

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「最初の柱間のヴォルトでは、黙示録から取られたこのビジョンの前に、キリストの托身を表すシーンが続きます。」

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「受胎告知、訪問、キリスト降誕は南側の上部で描かれているが、全体構成から、損傷が激しいにもかかわらず、下部にある幼児虐殺を認識することが可能である。また、側面、上部の羊飼いへのお告げとエジプトへの逃避、最後に神殿の奉献の祭壇が下部に見られる。」

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以下は、読んでいてもさっぱり、という内容となりますので、キリスト教の教義?いや典礼?儀式?それに興味がなければ、飛ばしてください。
御ミサの時に、聖体拝領のパンがありますけれど、あの意味ということになるみたいです。色々な教派があって、取り扱いが変わるようですねぇ。本来、興味がない部分ではあるのですが、せっかく読んだので、載せて置く次第です。

それにしても、僅かに遺されたフレスコ画で、こういった点まで追求しようとする研究者の執念というのか視点というのか、自分と如何に遠い人たちか、という実感、改めて感じました。
同時に、意味はほぼ分からないけれど、さらりと読むには面白い内容ではあるんですよね。すぐにきれいさっぱり忘れちゃうとは言え。研究者って、本当にすごいですよね。

「しかし、この図像には微妙な点があり、車輪の上に立っている天使の珍しい表現によって証明されるように、メッセージは一般の信者よりも学識のある人々に向けられたものと考えられます。
神の存在を明らかにすることを目的とした画像は、通常、Chalivoy-MilonやBrocでのように、マジェスタ・ドミニと黙示録の24人の長老たちとを結びつけますが、しかし、老人たちはここには存在せず、その独創性のためにそのしぐさが注目を集めるに違いない、崇拝する天使たちに取って代わられています。
絵画の損傷により、その意味を完全に理解することはできませんが、それでも、聖体祭儀の典礼に関連して仮説としての解釈をすることは可能です。
この解釈はまた、西フランスにおける 11 世紀末から 12 世紀初頭の歴史的および宗教的文脈において、特定の側面を帯びています。
この時期、西ヨーロッパでは当時最も重要な神学論争の一つが行われていました。
トゥールのベレンゲルBerenger de Tours (1000-1088) は聖体に関する異端的な理論を展開しました。
彼は聖体のパンであるホスティアの中にキリストの体と血の象徴しか見なかったのに対し、神学的正統派は逆に、聖なる種をキリストの体と血に変換または変換する実体変化の教義を肯定しました。偉大な神学者たちはこれに反対し、いくつかの評議会はそれを非難した。
それにもかかわらず、彼の考えは彼の死後も十分に広まったため、この教義の真実性を定期的に再確認する必要があると感じられました。
そのようなわけで、パルセ=メスレParcay-Meslay(アンドル=エ=ロワール)では、以前と同じ知的環境かつ同時に考えられた例を挙げると、威厳のあるキリストの像は、右手のデザインに顕著な変化を示している。
図像には著しい損傷があるにもかかわらず、最初の通常の祝福のしぐさは、ホスティアを表す手続きの間に、置き換えられたようです。
この表現の例外的な性質は、ホスティアをキリストに明確に結び付けたいという願望を証明しています。
タヴァンでは、絵画の構成者は絵画をなすアーティストに、フランス西部で新たに設立された典礼を説明するよう依頼することもできたはずです。典礼では、司祭が信者の集まりにホスティアを頭上に掲げて示しましたが、この習慣は、中世後期に西洋社会で広まりました。」

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「したがって、この一見単純な構成には 3 つのテーマがまとめられています。托身の肯定、終末におけるキリストの輝かしい再臨の表現、そして間違いなく、聖体を中心に新たに確立された典礼の説明です。アーティストが、単純な並置手法を取りながらも、これら 3 つのテーマを結びつけているのは熟練の技です。
受肉を表すシーンは、あたかも人のように地上的な要素で表されています。それらは栄光のキリスト像の神聖で時代を超越したイメージを導入しており、画家は派手な装飾を通じてこの 2 つの間のつながりを確立することに成功しています。それは内陣の第一柱間のヴォルトの上部のラインを飾り、読み解く意味と内容の両方を与えています。
彼は、従来のロマネスクの言語によれば、雲を想起させる起伏を伴うことによって、この装飾を意図的に天の秩序の中に配置しています。同様に、あたかも人のような外観の、動く円盤の形で表された星をそこに配置します。
彼らのキリストへの方向性は、信者たちもキリストに向かうよう促し、また、地上の時間から天上の時間へ、そして永遠へ、いつの間にか過ぎていくのです。
最後に、画家が天使たちを智天使ケルビムと福音書家の象徴の間に配置することによって、典礼への暗示をどのように導入したかを見てきました。
教会の他の部分を飾っていた絵画がすべて消えてしまったのは残念です。彼らの知識があれば、描かれた絵画構成の一般的な方向だけでなく、内部空間の構成、さらにはおそらくクリプタになされたの後期の内容さえも、よりよく理解することが可能になったでしょう。」

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きゃわいいだの推しだの、ろくでもない低レベルの感想を述べるいつもの記事とは一転、笑、学術的にやってみました。いや、どうだろう?日本語変だしな。
続きます。


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テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

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  3. | コメント:2
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コメント

懐かしいです。この教会。クリプトの天井画強烈に印象的でした。 鍵番の女の子の写真は絶対に許さないよという怖い顔もよく覚えています。それでいて あとで ガイドブックをうるときのいそいそした様子が々腹立たしかったことも。
それでも、ここは超有名。 やっとこられた、という嬉しさもありました。 groupでもうしこんであったせいか、 私たちだけで入れましたが、狭くて少々窮屈でした。それにしても、もうああいう興奮をあじわうことができない 年齢・体力になってしまったことが 寂しいです。 corsaさんのblogだけが楽しみです。
  1. 2023/08/28(月) 01:52:44 |
  2. URL |
  3. yk #C8Q1CD3g
  4. [ 編集 ]

Tavant

ykさん
楽しみにしていただけるなら、頑張ろうとおもえます、ありがとうございます。
わたしも、あと数年のことなので、もっともっと行かねば、とも思うのですが…。
なにはともあれ、実際に現場に行けたことは、喜びですよね。そういうむかむかも含めて、笑、思い出は沢山あった方が楽しいです。
と言いつつ、このところ忘却も激しいのですけれど、さすがにここは強烈すぎて、忘却不可の上に、今回じっくり解説を読み込んで、しっかりと上書できた気がします。
  1. 2023/08/29(火) 20:25:37 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

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