2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その74(ロワール・エ・シェール)
サンテニャン・シュル・シェールSaint-Aignan-sur-Cherのサンテニャン教会Eglise Saint-Aignan、続きです。解説が丁寧すぎて、訳が分からなくなっておりますが、今回は、地下聖堂です。
でもね、ここ、地下があるとは思えないの。内陣が上に上がってなくて、どゆこと?って感じなんだけど。

上は、冊子にあった側面からの全体図。左側が後陣で、地面が、ほんのわずか傾斜しているのかな?という様子はありますが、地面の高低差を使って、というほどのもんじゃないですよね。
では、どういうことかというと、これはクリプトではない、と。
「洞窟の聖ヨハネ教会以外にこれを何かと呼ぶ古代の文献はないため(注:どうやら洞窟の聖ヨハネ教会と呼ばれたりしてるようです)、これがそもそも地下室であるかどうかについてはかなりの疑問が投げかけられており、私たちはこれが本当に初期の教会であると考える傾向にあります。」
ということで、つまり、この地下聖堂のレベルが、もともとの地面だった、ということになるのでしょうね。中世から現代までは、大体どの土地でも数メートル単位で上に持ち上がっていますからね。まさに”塵も積もれば”の視覚化で、そういうのをしょっちゅう見ていると、なんとなく人生観に影響されることがあるような気もしたり、大げさかな、笑。
おっと、本格的に脱線する前に戻しましょう。
現場では、もちろんこういうことは知らないので、実際ちょっと驚いたのです。というのも、ここの地下は、まさに普通の教会のように、周歩廊と礼拝堂が並んでいる構造で、こんなクリプトがあるんだって。
実際、上の教会とほぼ同じ図面となっているようです。
その上、上の教会には、後代に相当手が入りましたが、こちらは手つかずに残っている部分が多くて、まさにタイムカプセル状態になっているということらしいです。
「上の建物とは異なり、修復家の熱意からほとんど逃れられています。
「ロワール渓谷のロマネスク芸術」を研究したベネディクト会は、下部教会から説明を始めます。上の教会の内陣と同じプランで建てられています。
彼らの言葉によれば、「この強烈なロマネスク様式の教会は、驚くべき純度の芸術作品」であり、その建築家は「当時の最も偉大な建築家の一つにランクされるべきであり」、彼の作品は「真の驚異とみなされるべきである」。」
ただ残念なことに、
「しかし、この驚異は、革命中、厩舎、牛舎、ワインセラーとして個人に使用され、その過程でフレスコ画に大きな損傷を与えられました。
このスキャンダルは、教会が歴史的建造物として分類された 1851 年に終わりました。上の教会とつながる階段は今世紀に入ってからようやく再び開けられました。」
という、イタリアでもありがちな使用に向けられていたことによる損傷があるのですね。
御託ばかり並べてないで、実際の様子を見ていきたいのですが、その前に、本当にびっくりしたことがありました。

これ。
入り口にね、照明のボタンと一緒に並んでたのだけど、なんと日本語。実はよく覚えてないけど、これを押すと、各国語で解説が流れるんだったと思う。日本語やってみたら、とてもちゃんとした日本語だった。
それにしても、イタリア語より上にあるというのは、日本人の方が来ているということになるのかな。そうはいっても、それほど来るわけじゃないだろうから、とても不思議でした。ただ、アジア人の中では、全体の統計からは逸脱して、日本人が圧倒的に多いだろうとは思うけど。
欧州に来る一般的な観光客については、もはや中国人や韓国人の方が多いと感じてるけど、こと、テーマを限定すると、やはり中国人や韓国人は、まだそこまで深入りしてないっていうか。それに日本人って、オタク的志向が強いからねぇ。
とか言いながらさ、何年か後に再訪したら、日本語のボタンがなくなっててChineseとかなってたりしてねぇ。

広いから、うまく撮影できず。これは周歩廊の様子ですね。

「ここの柱頭はすべてオリジナルの状態で、繊細な落ち着いた雰囲気を持ちながら、11 世紀の伝統を特徴としています。厚い葉で飾られたものもあれば、素朴な彫刻が斜めに描かれているものもあれば、元々塗られていた絵の具の痕跡が残っているものもあります。」

こういう植物系は、私も好物です。ここのは、素朴とは言い切れないものも多く、11世紀だとすれば、それなりの石工さんがかかわっていたのだろうと想像します。当時の典型的な渦巻きとかありながら、組粟絵も面白いですよね。ああ、すりすりと触りたくなるやつ、笑。
「教会の中心軸にある東礼拝堂は、狭い半円形の窓で飾られた壁によって他の礼拝堂から分離されています。そこには、12 世紀末にこの教会と上の教会のすべての壁とヴォルトを覆っていた絵画の見事な残骸が示されています。
最も専門性の高いある専門家は、全体として見ると、これらのフレスコ画がフランス芸術において主導的な位置を占めていることに同意します。「彼らの姿は、この熱心な信仰の時代の最も純粋な創造物から発せられる内面の生命の表現を明らかにしています。」「初期ゴシック絵画の特徴的な証人として、それらは宗教芸術における新しい態度の始まりを示しています。」
「その礼拝堂のフレスコ画は、この礼拝堂が完全に福音記者聖ヨハネに捧げられていることを示しています。福音史家聖ヨハネは、11 世紀に現存する教会にすでにその名を与えたと年代記で言われている聖人です。この「地下室」は「本の礼拝堂」と呼ぶことができる、つまり新約聖書が何度かそこに描かれているということは、非常に真実に指摘されています。」

「ヴォルトには神の子羊が見えます。」

「 彼の頭上では、黙示録の天使が聖ヨハネにその本を差し出し、聖ヨハネは象徴的な鷲の姿で、ラザロの墓の前でイエスを囲む聖なる民の一人の手にその本を持っています。(注:下で、左上に見えているのが、ヨハネの本だと思います)」

「しかし、これら 2 つの絵画は同じ時代のものではありません。鷲と天使は、その下の十字形のメダリオンとともに 12 世紀の壁画の名残ですが、ラザロの復活の場面は、より後になってより進化した壁画に属します。 おそらく 1 世紀後に遡るタイプの芸術が、初期のフレスコ画を部分的に覆っています。キリストの顔や態度の高貴さは、使徒たちにもまた死者の関係たちにとっても明らかであり、非常に印象的なものとなっている。」

実際ね、ここのキリストと使徒の部分が、冊子の拍子にも使われていることから、これが一連のフレスコの中での愁眉となるのでしょうね。
このキリストたちの顔がさ、なんせ鼻筋がすごいのよ、笑。一般ピープルの顔にはそんなことされてないけど、キリスト様御一考は、花にしろいハイライトがくっきり。

消えかかっている人たちも、鼻筋くっきり。残りやすい顔料だったのだろうか。それにしても効いてるよね。

これが、全体像です。
「南側の礼拝堂は、背中が光る子羊と二人の天使を表したメダリオンを中央に置いて装飾されています。」

「これは聖ジルに捧げられています。ヴォルトの半円の基部には、彼の歴史と彼による奇跡が描かれています。左側には、聖人が半裸の麻痺者に上着を与えているのが見えます。これは、ヘビに噛まれたばかりの人が回復して恩人に感謝するのと同じように、彼を回復させます。」
時代は全然新しいと思いますが、スイスのミュスタイアやロカルノにあるカロリングのフレスコ画を彷彿とします。何だろう。背景の色合いとか、こういう帯で描かれている様子とかですかね。

その後、聖ジルは、ドラゴンのような船首を持つ船とその乗客が沈みそうな荒れた海を祈りによって落ち着かせているのが見られます。4番目の絵はもう解読できません。3 つの窓で照らされた壁には、聖ジルに乳を与えた雌鹿を狩る男たちのフレスコ画が描かれています。狩りだけが目に見えて残ります - 雌鹿は消えました。
右側では、聖人が腕を上げ、両手の親指と人差し指を閉じてミサを唱えています。」

「彼の後ろには、シャルトルのステンドグラスのように、王冠をかぶったシャルルマーニュとその甥がひざまずいています。」

後代の加筆などもあるかと思いますが、美しい絵ですよね。ただ、技巧に走っているというのか、構図や装飾ありき、という様子もあり、最初の高貴なキリストとは違うかもね。

「内陣は壁にある 3 つの低いドアによって周歩廊とつながっています。 後者の顕著な厚さは、その上に置かれている鐘楼の重量によって説明されます。
そのヴォルトは、アーモンド型の二重の光輪の中に玉座に座る威厳のあるキリストの巨大なフレスコ画で装飾されており、非常にビザンチン的なインスピレーションを与えています。彼は両腕を広げ、聖ペテロと聖ヤコブを通して足元の不自由な人たちに恵みを注ぎました。そのうちの1人は聖ペテロに供物を持ってきているようです。もう一人は松葉杖の助けを借りて這っているが、右側の者は松葉杖を投げ捨てて聖ヤコブの前にひれ伏している。
このキリストの絵は、この構図の中で唯一のロマネスク様式の要素です。 それはおそらく初期のフレスコ画を覆っていた奉納絵画(シャルル 6 世の治世末期、1420 年頃とされる)に囲まれています。」
続きます。
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テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2023/09/30(土) 20:37:16|
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