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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

明らかな私有地に眠るお宝(アレーヌ・メルヴィリエ45)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その83(ロワール)

次に訪ねた場所は、オルレアンでランデブーした、在フランスの友人に教えてもらわなければ、私には一生出会うことのできなかったところです。フランスのロマネスクに詳しい方々は、何らかの情報源をお持ちのようですが、ロマネスク情報のバイブルとされているゾディアックにも掲載されていないということでしたから、私など、情報にすらアクセスできなかったでしょう。

これがまた、すごい場所にありまして、事前に聞いてはいたわけですが、それでもかなり驚愕しました。

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ジャンヴィル・アン・ボースJanville-en-Beauce (Allaines-Mervilliers) のメルヴィリエ教会のタンパンTympan et piedroits de l'ancienne eglise de Mervilliersです。

すごい場所です。友人に丁寧に教えてもらってなお、アクセスまではうろうろしてしまいました。といって、とても小さな村の小さな広場なので、うろうろする場所すらさしてないのですが、それでも、目視できない場所に隠されているので、あそこだ!と確信をもって突進するようなことが出来ないんですよ。その上、超早朝とかの変な時間でもないのに、住人がいるのかどうか、いや、住居らしい町並みがあるんですが、生活音もなく、人の気配ゼロ…。つまり、尋ねることも不可、という状況でした。

今後行かれる方の便宜のために、詳細を書いておきますね。
住所は、3 Place du Calvaire, Janville-en-Mervilliers(Allaines-Mervilliersと聞きましたが、今グーグルで検索すると、Janvilleと出て来ますので、ナビなら、どちらも試されるとよいかと)。
その住所で、私は車のナビでも、下の小さな広場にたどり着くことが出来ました。

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真ん中に三角の緑地帯がある、とても小さな広場で、三角の一番短い辺の方が、農家らしき、とても大きな敷地となっています。鉄柵で閉ざされています。

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この手前の車、マイカーですね。
マイカーの後ろにある建物が、まさに目指す場所なんです。
なーんにも書かれていませんよ。

鉄柵の方に行くと、右手に、古ぼけた扉があります(グーグルの地図上に、赤く印をつけたところ)。

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相当傷んでる扉で、自転車のタイヤチューブみたいので、勝手に開閉しないようにとめてある。でも、こうして見た感じでも分かる通り、結構しっかりとめてあるんで、私有地感もすごくて、ほんとにここ?入っていいんだっけ?不法侵入で怒られん?と躊躇させる雰囲気満載ですよ。
でも大丈夫(多分、笑)。
チューブを外せば、扉が開きます。入れば、中は放置された原生園…。

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いやもう、唖然でした。腰の高さ以上に、雑草が生い茂り、足の踏み場もない状態の土地なんですよ。なんだっけ、これ?と目が点になりました。
お宝は、すぐ目に入るので、すぐに覚醒しつつ、呆然自失の気持ちも消えないほどすごかったです。

そして、先走って記しておきますと、この、外と隔絶された一角、かなり高い塀で囲まれており、先ほどの扉が唯一のアクセス口となります。
扉を閉めているチューブ鍵は、外側の釘みたいのに引っ掛けるようになっていて、中からは閉められなかったんですよ、私が入った時には。風でバタンバタンしてたけど、どうにもならず。

万が一、一瞬の強風とか何かの拍子に扉が閉ざされてしまったら…、近所の人が、バタンバタンうるさい!と掛けだしてきて、外から扉を閉められてしまったら…、などと考えてしまいまして…。この辺は、おひとり様生活をしていることによる切実な問題意識でしょうかね?
そこまで考えておらず、面倒だから、自宅のトイレに入るときは、ドアを開けっぱにしていますが、ある時、何が起こるか分からないから、トイレのドアはきちんと閉めないおひとり様が多数いることを知り、びっくりしたことがあります。
実際に、何かの拍子に扉が開けられなくなって、閉じ込められて往生した、という話、結構あるみたいですよね。

まぁそんなことが、どうしても頭から離れず、怖くて、あまりゆっくりじっくりと、ブツを鑑賞できなかったのは痛恨でした…。でも、同行者がいたとしても、きっと交代で見ることになるから、いずれにしても落ち着いて見られなかったかな。もっと心ゆったりと余裕のある行動をとれる人になりたいもんですが、かといって、閉じ込められたらシャレにならんしねぇ…。

おっと、実用情報、長くなりましたが、こんなとんでもないところに、冒頭のタンパンがあるんですよぉ。

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すごくないですか?

では、簡単な解説など。

「Saint-Fiacre教会の南壁に埋め込まれたタンパンは、今日では、農家の私有地になってしまっている。タンパンと扉の一部が残され、今では、農家の納屋の壁となっている。横幅173センチ、縦90センチに、浮彫が施されている。」

ということは、奥の方が後陣だったということになるので、教会の建物ごと、農家の所有となって、納屋として使われたということなのでしょう。反対側が農家の敷地に面しているようなので、こちら側の扉は不要のため、塗りこめたということかな。こちら側の建物の周囲も農家の土地なのでしょうから、それで高い塀があるし、それで、誰も気付かず、放置されたということかな。博物館等に持っていかれるからよしだけど、一般人の手にわたって、ひっくり返して石版として使われるなどということがなかったのは幸いでしたよねぇ。

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タンパンは、上部と下部、二つの部分が横帯になっているようです。
上が天上、下が地上の絵巻です。
天井では、中央でキリストが祝福しており、両脇の天使は、香炉を振っているようです。

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ぱっと見、全体の印象はプリミティブなのですが、よく見ると、顔の彫りなど、かなりしっかりとしていて、12世紀のものというのもうなずけます。
天使の上にあるのは、甲羅とか伊勢エビとか、いずれにしても甲殻類的な印象ですが、なんでしょうか。たなびく雲だったりするのかなぁ。

下は、寄付の場面とありました。

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分かりやすい解説を見つけられなかったので、間違っているかもしれないのですが、左側にいるのは、全身鎖帷子の兵士。彼が、玉座に座った聖人に、教会への寄進をしているようです。聖人の右側にいるのが司祭のようで、その司祭に寄進のことを伝えて、許可しているシーンとありました。

騎士と司祭は、領土をつかさどる役割を担うフィギュアであると。

騎士の後ろには、その盾持ちが控えています。

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司祭は、聖杯の置かれた祭壇側にいます。
そしてその脇の方では、場面に背を向ける書記がいて、垂れ幕になる字を書いた巻物に寄付の条件を書いています。

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祭壇の上には、神の手が見えます。
そして、書記が手にしている巻物が面白いですよね。タンパンを取り囲んで書かれている碑文と融合していますね。この碑文に、寄進の内容が書かれている、ということになるようですから、このオリジナリティはすごいな。

碑文を読んでみようと思いましたが、やっぱり無理…。文さえ読み取れれば、今は自動翻訳でラテン語だってお茶の子だから、残念ですが、現代イタリア語でも、現地人の書く汚い字だともう読めない私には、手ごわすぎます。

それにしても、こんな素敵な彫り物が、南扉にあるということは、メインの扉とか、内部の柱頭とか、どれだけのものがあったか、ということなんですよ。夢の跡ですなぁ…。

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テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2023/10/13(金) 20:18:36|
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コメント

よくぞ残しておいてくださった、というところですね。 なんだか長閑でいい感じ。
閉じ込められ恐怖。時々私はほんとに老婆心で心配になるのです。corsaさんお一人で 大丈夫かしらって。今は スマホで助けを呼ぶことができますけれど。どうかお気をつけになってください。
ホテルのお部屋でも友人と一緒の時、バスルームにはいってかぎをかけて出るときあけられなくて(友人が)大変だっとこととか、 鍵にまつわる困った話は 話せばきりがないほどあります。
  1. 2023/10/14(土) 08:23:33 |
  2. URL |
  3. yk #C8Q1CD3g
  4. [ 編集 ]

閉じ込められ恐怖

YKさん、鍵問題、閉じ込められ恐怖問題は、あるあるですよね。

それにかかわらず、一人で回っていると、ふと、怖いと思うことはあります、確かに。でも、場合によっては一人の方が用心深くもなるかもしれないです。
あと数メートル、その先を曲がればきっと教会があるはず、と思いながらも、道が怖くて引き返すなどということも、実際あります。一人だと、クルマであっても安心はできませんからねぇ。
ご心配おかけしておりますが、そういうわけで、決して無理はしておりませんので、大丈夫。

危険といえば、すごく昔、教会の神父様が色ボケじいさんだったことをふと思い出しましたが、やはり怖いのは人かもね。
  1. 2023/10/15(日) 10:36:45 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

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