長年賃貸暮らしをしてきたけど、いよいよ慣れ親しんだアパートを追い出されることになりました。で、いまさら改めて賃貸もないだろう、とこの一ヶ月ほど、売り家を見て回っています。
1990年代の後半から、不動産価格は上昇の一途をたどり、ユーロへの通貨統合後は、物価全般がそれまでの二倍になるというインフレ状態で、この数年、ミラノ市内の不動産価格は、異常な高騰を遂げ、とても独り者の会社員の手が出せるレベルではありませんでした。
今思えば、ユーロになる前は、高いといっても今の半額以下。ああ、あの時無理してでも買っておけば、と思うことしきりですが、まさに後の祭り。たとえば、我が家のお隣は、かなり小さくて、あんなとこ無理!と10年ほど前売りに出たとき、近所の人に勧められたのに見向きもしなかったのですが、今となって思えば、あの値段では、いまやガレージしか買えない、逆にいえば、ガレージ程度のお値段で、自分の家が持てたんです~。
そういう時代に、まぁ頭金もないし、収入も低かったのは確かとは言え、まず不動産を買う気が無かったんですよね。バカバカ、大馬鹿ヤロウです。
ま、その不動産バブルも去年くらいからちょっと落ち着きを見せて、高値安定、という時期に入りました。高額物件は、じりじりと価格を下げています。不動産を買うタイミングとしては、決して悪くないのですが、でも、アメリカのサブプライム問題やリーマン破綻で、いきなり金融不安ですから、もう少し先延ばしした方がベターなのかなとも思います。でも買いたいと思ったときが買いどき、と思い、先行きどうなろうが気にせず、探している毎日なんです。
基本的に近所の不動産屋を回って、大体条件に合う物件を紹介してもらい、毎週3~4件見ています。でも全然よいのがなくて、落ち込みます。2階以上、エレベーターあり、最低二部屋、バスルームには浴槽(シャワーだけ、というのはだめ)、温水器はガス(電気のは、高い上にお湯量のリミットがあって、のんびりお風呂につかれない。といっても、直近で風呂に入ったのは2年前とかですが)、小さくてもいいからバルコニー付、目の前に他の建物がない(眺めのよい部屋、とまでは言わないまでも、すぐ前が他の家、というのはちょっと)、入居前の改築が最低限ですむ(中古物件なので、壁塗り程度は必至ですが、あまり大きな修復はしたくない)、できれば駐車場付、だめでも近所に路上駐車が楽にできる、といったところがわたしの必須条件ですが、これまで15件以上見て、それすべてを満たす物件には出会えていません。
勿論100%完璧な物件に出会えるとは思っていません。気に入る家に会えれば、これは条件クリアしてないけど、でも譲れる、という部分が出てくるのだと思います。
ま、いずれにしても難しいのは確かで、見ても見てもぴぴっと感じる物件に会えず、少々めげてきた頃、全く期待せずに見に行ったお家が、意外にもすごくよくて、ほとんどすべての条件をクリアしていました。唯一つ、どうしても譲れない点がクリアできてないので、やっぱりだめなんですが、でも全く期待していなかっただけにインパクト大きく、あ、探せばやっぱりあるんだ!といきなり気分が元気になってきました。
譲れない点とは、窓の開いている方向が建物の中庭で、中庭はぐるりと建物で囲まれている上に、そのアパートは1階なので、まるで井戸の底にいるような状態なのです。この閉塞感は絶対だめ。もともとのアパートのつくりがかわいらしい上に、引渡しの前に全部きれいにするから、新築同様の中身になるらしいし、さらにお値段もとてもリーズナブルなので、悔しいことこの上なし。
そして、同じ不動産屋が、その近所の物件を紹介してくれました。そこは実は、以前ぶらぶらと歩いたときにチェックしていた家でした。建物はすごくかわいらしくて、目の前が公園なので、眺めの問題はなし。ただ2階だけどエレベーターがないのが明らかだったので、こちらから問い合わせはしていなかったのです。だめもと、と思って見に行きました。
ところが、これが来ちゃったんですね。あ、いいじゃん、と。
階段はやはりエレベーターに比べたら面倒だししんどいですが、でもたかが2階(日本では3階)。居間に小さいけど石造りのかわいらしいバルコニーが付いていて、目の前の公園を全体に見晴らす感じです。
中は相当古びていて、実際この数年人は住んでいない状態ということ、納得。暖房設備もないので、かなり大掛かりな改装工事が必要となります。
でも不動産屋も心得たものというか、すでに改装全般の見積もりをやっていて、おおよその経費を教えてくれました。その分、売主は多分言い値を下げるから、というアドバイスとともに。
そう、ここは不動産屋もなかなか感じがよくて、これもポイント高かったのです。
この週末、日のあるうちにもう一度見て、まずは売値がちょっと高いので、こっちのオファーを出す運びとなります。どうなることやら!
Author:Notaromanica
ミラノ在住で、ロマネスクが大好きで、主にイタリア、フランス、スペインを回っています。