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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

細江英公、写真展

夏休みに引きずられて、このところアートめぐりをサボっていました。
中世ばっかりじゃなくて、たまには現代アートにも触れないと枯れそうな気がしてきたので、さて、最近のミラノでは何かあるんだろう、と久しぶりに美術館やギャラリー情報をチェック。夏枯れと思っていたのですが、意外といろいろやっています。
夏休みもやっていそうな美術館は置いといて、そろそろクローズになってしまいそうなギャラリー系情報を見ていて、目に留まったのが、この細江さんという写真家の写真展。
お気に入りのギャラリー、コルソ・コモにあるカルラ・ソッツァーニだし(無料です)、早速行ってみる事にしました。

ぜんっぜん、知らない写真家でしたけど(Eiko Hosoeってアルファベットでみて、女性と思っていました)、すごい大御所なんですね。1933生まれということなので、御年77歳。若い時期から成功していて、多くの重要な写真集を出している方。
今回は、彼の過去に出版した有名な写真集を5つほどフューチャーした、人物の写真展でした。
三島由紀夫、大野一雄、土方巽、浮世絵の春画を模したもの、そして着物の女性シリーズ。
写真集とほとんど同じサイズのものが、ずらずら並べられていて、写真集に捧げられた文章(三島由紀夫、白石和子、澁澤龍彦など)も、とても日本的な額装の上に、日本語のまま掲げられている展示でした。本当の写真集も、おそらくそういう装丁だったのだと思います。

三島由紀夫の、ナルシズム漂う写真も、なかなかの迫力でしたが、ぐっと来たのは、大野一雄を撮った「胡蝶の夢」。
舞踏って、特に、というよりあまり好きではないんですが、この人のオーラは、写真を通じても感じられるんですね。すごい。ただメークをして、そこにたたずんでいるだけの写真が、もうすごい存在感で。
勿論、写真家の腕があるから、それだけのオーラが写真にも焼きついたんだと思うんですけど、いやはや、すごい。澁澤龍彦の文章も、とても印象的でした。大野さんが、「花のノートルダム」のディヴィーヌを演じたときのことを書かれた文章で、今の今まですっかり忘れていたけど、そういえば花のノートルダム、好きだったなぁ、と思い出して。そういうものにはまった時代があったんですね、わたし。
で、ディヴィーヌのものすごさと大野さんのものすごさが、本当にマッチして。

土方巽の鎌鼬も、ちょっと面白かった。
若いときから、こういう人たちと接して、ずっと付き合って。写真家って言う職業も、人間性がすごく問われるような気がしました。

この方、バルセロナ、とくにガウディの写真も多く撮っているらしいのです。こういうすごい人物写真をみてしまうと、この人の撮る風景というのも、ちょっと興味が出ますね。
今度日本に帰ったら、写真集を探してみようと思います。

Eikoh Hosoe
Estasi e Memorie
18/6/2010 - 1/8/2010
Galleria Carla Sozzani - Corso Como 10 Milano

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  1. 2010/07/30(金) 04:48:54|
  2. アートの旅
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

No title

外国で見る日本の写真家の作品
日本では外国作家と言うだけで人気が出ます。
三島由紀夫のバラ刑が細江氏を世に出したのだったと思っています。
またまた、希望の持てるお話を・・・有難うございました。
  1. 2010/07/30(金) 00:15:00 |
  2. URL |
  3. 絵空定家 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

絵空定家 さん
お久しぶりです、お元気にお過ごしでしょうか。土方巽の写真をみた三島由紀夫が、是非俺も取ってほしい、ということで実現した企画が薔薇刑だったようなことを読みました。
三島由紀夫のような人に、そう言わしめるもの。すごいですよね。
  1. 2010/07/30(金) 21:07:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

へぇ、イタリアで細江英公の写真展ですか!
やっぱり細江英公といえば、三島の薔薇刑ですよね。
超ナルシスト全開の写真集は凄いです!
たしか暗黒舞踏派や澁澤龍彦などとも交流ありましたよね。
  1. 2010/07/31(土) 12:38:00 |
  2. URL |
  3. さちぞう #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

さちこさん
細江英公を知らないのはわたしくらいだったのかな。さすがに良くご存知。
写真集がほしいとは思わなかったけど、すごいとは思いました。
ミラノは、写真の美術館がすごく多いし、展覧会もよくあるんで、まじめにみてると、相当いろんな人に知り合えるはずなんです。またこれから展覧会めぐり、再開です。
  1. 2010/07/31(土) 22:53:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

corsaさん。素敵なお話しありがとうございます。
あれからというもの、私はやはりキャロル久末さんの声で読ませて頂いております。(笑)・・実は声フェチなのです。

文章構成の巧みさ、句読点と句読点の間の程良い速度間。
まだその世界に踏み込んだことの無い、予備知識の無い読者にさえ、理解を容易にし、またさらに期待感を高める音節の響きの上質さ。

三島文学の美学に傾倒した高校時代。ついに彼の美学はフォルマを形成する肉体に、さらに肉体の中に宿る魂へと回帰し、個のアイデンティティーは、魂の記憶と生命力を発散する眼光に帰着する。

ファインダーを通して、ありのままに、さらには刹那が持続し凝縮した被写体が放つ魂の光を、また影に宿る記憶の襞の微細な粘膜さえも、フィルムに記憶できる最大限を、写真家は描き出すことが出来るのですね!・・悲しいくらい美しい、三島由紀夫の記憶をありがとうございました。
  1. 2010/08/12(木) 13:28:00 |
  2. URL |
  3. ピコさん #79D/WHSg
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No title

イルピコさん
キャロルさんに申し訳ないかも。
わたしも結構声フェチです。イタリア人て、意外といい声の人、少ないんですよね。以前取引先の秘書の人が、いい声だなぁ、とうっとりしていたら、その人歌手を目指していたということがあとから分かったりして、それなりに声フェチ面目躍如みたいなこともありました。
三島の分の美しさには、わたしも愕然としたことがあります。禁色とか大好きです。
あ、そっちの人じゃないですけどね、わたし。禁色は、なんかとてもぐっと来るものがあったんですよねぇ。
  1. 2010/08/12(木) 21:37:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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