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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ルッカ、中世の展覧会その1

最近お気に入りのプチ旅行。今回は、ルッカで開催中の中世がテーマの展覧会訪問と、モデナのカテドラル再訪を目的として、一泊二日の旅をしてきました。短い旅なのに、移動距離は、直線距離でも往復約600キロ!週末だけでも、やる気になれば、いろんなことができるんですね~。

さて、展覧会です。
ルッカは、起源も古いし、どの時代においても、それなりに繁栄を謳歌してきた場所で、中世期も例外ではありません。そのような歴史を背景として、この町は、中世史の中でキーワードの一つとなりえる場所なのですね。
昨年、旅したときには残念ながら全然知らなかったのですが、そういうルッカには、中世のものを多く抱える組織が二つあります。一つが、今回の展覧会の会場であるラッギアンティ財団、そしてもう一つがヴィッラ・グイニージ国立博物館。
ラッギアンティ財団は、ラッギアンティさんが寄贈した多くの芸術品を保管展示する組織で、今回の企画は、ラッギアンティさん生誕百年記念ということらしいです。中世史の研究者であり、コレクターでもあった方のようです。多分すごく金持ち…。

Lucca e l'Europa - un'idea di medioevo V-XI secolo
25/9/2010 - 9/1/2011
Fondazione Centro Studi sull'Arte Licia e Carlo Ludovico Ragghianti - Lucca



建物も、古い修道院を再利用したもので、雰囲気があります。


展覧会は、残念ながら、というか当然のことながら、撮影禁止でしたので、購入したカタログの写真から、ちょっと中身をご紹介します。

とてもコンパクトでしたが、質の高いよい作品が展示されていたと思います。時代も、ぴったりとわたし好みの時代。
まずは、やはりロンゴバルド時代。最近のマイブームですからね。思わず力が入ります。


コインって、歴史を語る上では、必ず出てくるアイテムですが、正直言って、全然興味を持ったことないんです。ローマ時代のコインって、別に面白味も感じないし。しかし!ロンゴバルドは、コインも超かわいい!もともと金細工では定評のある民族ですから、金属細工そのもののコイン、そこにあの素朴な石細工のテイストが組み合わされて、あああ、ちょっとこれほしいんですけど~、というコインが目白押し。


ね?かわいいでしょぉ?

前にもどこかで触れたと思うけれど、ロンゴバルドに興味が湧いたのは、とにかくモチーフがかわいいし、不思議なイメージが多いからなんです。ヘタウマでもあるけれど、かなり写実的でうまいローマとは違って、抽象的な想像力にあふれている部分があると思うのですよ。だけど、これまでの歴史研究では、「蛮族」ということで切り捨てられて、アート的な側面は無視されがち。実際、「蛮族」となると、なんかひげ面のマッチョが、常に武器を振り回して暴れている、というイメージが湧きませんか?わたしは、ず~っとそういうイメージを漠然と抱いていたので、繊細でかわいいロンゴバルドの芸術を知ったときは、ある種のショックを味わったんですよねぇ。
ただ、金属細工だけは有名だったんですよね、昔から。


これは、ヘルメットを飾る金の装飾。
こちらは超有名な作品。ロンゴバルドというと必ず出てきますね。すごく小さな作品です。横幅10センチはないくらいだったと思います。


すごく小さいのに、細部まで、細かい模様が掘り込まれていて、とても精巧なものです。おそらく、武器のどこかに取り付けられていた装飾。
そうなんですよね。実はロンゴバルドって、すごくおしゃれで、武器の装飾がすごいんですよ。戦う人たちだったから、武器が重要で、だから武器にも凝ったのかもしれないけれど、盾とか、刀のつかとか、弓のどこかとか、よく分からないんですが、すごくたくさんそういうところを装飾していたものが残っているんです。金属だから、よく残ったんでしょうね。それがいずれも、とても繊細な仕事で、またかわいいんですよ。この騎馬のモチーフなどは、ヘタウマでもなんでもなく、とてもうまいですしね。
「蛮族」だからって歴史上も重要視されていないし、その後のカロリング朝に押されて、まるで文化がなかったかのように扱われているロンゴバルド、とんでもないんですよ。
これもどっかに付けられていた金属片のモチーフ。


これなんか、横幅2センチもない小さなもので、肉眼でも細かいモチーフなんて見えなかったんですが、拡大写真でみると、あらまぁ、細かい!すごいぞ、ロンゴバルド!
続きます。

ロマネスク好きな方、是非こちらもどうぞ~!
ロマネスクのおと
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  1. 2010/11/22(月) 05:58:20|
  2. ロマネスク全般
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:16
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コメント

No title

たしかに、かわいいです!
コインもそうとう良いし。
へるめっとは、天使とおがむひとと宝物をもってくるひともいる
全体どういうものなのでしょう。

ロンゴバルドっていうのは、時代の名前?
場所の名前?
  1. 2010/11/22(月) 01:00:00 |
  2. URL |
  3. ガビィ #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

興味深そうな展示会ですね。Corsaさんのブログはいつも勉強になってなによりです。
  1. 2010/11/22(月) 01:09:00 |
  2. URL |
  3. londoncomcom1 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

写真の下から2番目の騎馬像、「民族大移動期のヨーロッパ美術」の表紙になっていますね。実物をご覧になったなんて、羨ましい! ティチーノのサン・ピエトロから出土した盾の飾り金具だそうですが、図版が大きいので、10センチとは思いませんでした。
  1. 2010/11/22(月) 07:15:00 |
  2. URL |
  3. kik**o193* #79D/WHSg
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No title

Corsaさん、これは完全にはまりましたね。
改めてチヴィダーレに行ってもいいくらいでしょう。
ここの博物館は私もみて感心しました。コインもなかなか面白いと思います。
  1. 2010/11/22(月) 14:00:00 |
  2. URL |
  3. クリス #79D/WHSg
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No title

ガヴィさん
うわ~、good questionですよ!実はカタログは、写真を撮って眺めただけで、全然読んでない…。得意の積読街道まっしぐら…。
ちゃんと読んでみることにします。
ところで、ロンゴバルドは、ローマのあとに、イタリアに侵略してきて、ほんの200年くらいの間ですが、イタリア半島の大きな部分を征服した民族です。イタリアでも、まだ研究者の少ない部分で、なぞが多いんですよ。
  1. 2010/11/22(月) 21:37:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

londoncomcom1 さん
いや、わたしは見るだけで、お勉強は全然だめなので、是非皆様に勉強していただいて、その成果をもらいたいくらいなんです。
  1. 2010/11/22(月) 21:38:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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Kikukoさん
やはりご存知ですね~。これは実に小さくて私もビックリしました。わたしの持っているロンゴバルドの本の表紙もこの子なんです。
ちょっとカタログを読み直して、きちんとアップしないと、と反省~。
そうそう、旅日記、拝見しました。すごくよい旅だったようですね。ピアチェンツァは、是非再訪しないと、とあせりました!
  1. 2010/11/22(月) 21:41:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

Hちゃん
でも、日本の武具も、それだけで重いからね~。紙の被り物はしょぼいけど仕方ないかもね。それにしても面白い話です!
まぁ、蛮族だしね、ロンゴバルド。シチリアの方まで征服しちゃうわけだから、体力は確実にあったと思うよ、うん。
  1. 2010/11/22(月) 21:43:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

クリスさん
確かにチヴィダーレは、確実に再訪しないといけないと思っています。ウンブリアとかも、特に気になるのがベネヴェント周辺です。あそこはとてもいきにくいのがネックですねぇ。
  1. 2010/11/22(月) 21:45:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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ベネベント公国っていうくらいだからねぇ。
スポレートもそうだし。

山道も心配ですけれど、運転の荒いカンパニア州だから車で行くには考えちゃいますよね。
表記上はランゴバルトもありですが長い顎鬚(Long beard)から来ていますね。
  1. 2010/11/23(火) 00:44:00 |
  2. URL |
  3. クリス #79D/WHSg
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No title

ポスターからしてかわいいですね。コインって小さくて面倒であまり見ないのですが、去年から少し注目し始めたところですので 興味深く拝見。最初のは 蛇退治でしょうか。ヘルメットの飾り、 王の戴冠式が 神意によるものだ、という意味なのでしょうか。どれも面白いです。kikukoさんの書きこみにありましたので、さっそく『人類の美術』アマゾンで申し込みました。ランゴバルド、はまりそうです。
  1. 2010/11/23(火) 09:19:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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No title

クリスさん
南は、とても車ではねえ。でもベネヴェント辺りは、ナポリとは民族も違うような気がしていますけど。どうなんでしょうね。
  1. 2010/11/24(水) 22:00:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

ykさん
ロンゴバルド、ランゴバルド、どんどんはまってください!
この項、書き流しそうになっていましたが、せっかくの機会なので、ちゃんとカタログ読んで、勉強しながらアップして行こうと思います。コインの項も、読んでみたらちょっと面白そうなんですよ。
時間かかりそうですが、お楽しみに。
ところで、「人類の美術」モト本は、外国語でしょうか?
  1. 2010/11/24(水) 22:02:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

『人類の美術』は gallimard,paris, felitrinelli,milan,.. odesseypress, newy york
の翻訳。 日本で刊行されたのが 1970年ごろなので、 その後 研究が すすんでいるのでは・ という懸念はあります。 今日本で ロマネスク周辺では 小学館の世界美術大全集が 一番らしいのですが、 人類、、のほうが 時代が細かくわかれているので 詳しいのでは、 と期待。 民族移動期のヨーロッパ美術は これを書いているときに届きました、(古本 9500円が 3000円、ちなみに カロリング朝は13000円が5000円、大助かり)表紙はkikukoさんのおっしゃるように 馬にのったひと、 サン・ピエトロ出土ベルン美術館とありました。ルッカの教会 運よく入られてよかったですね。 柱の列が いいですねー。
  1. 2010/11/25(木) 06:49:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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No title

しつこく続きます。 今 『民族移動期の、、、』をながめていたら、ヘルメットを飾る禁の装飾もでていましたよ。 玉座に座すランゴバルド王アギルルフ とありました。
  1. 2010/11/25(木) 06:57:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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No title

ykさん
そうなんですか。Feltrinelliでもそんな本を出していたのですね。美術書専門の本屋に行ったら、もしかしたら…。いや、今ではきっと無理そうですね。わたしももうちょっと資料を集めないとなぁ。
  1. 2010/11/25(木) 22:13:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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