ルニャーノからナルニに戻る途中、ここアメリアの町でバスを乗り換える必要がありました。ナルニ行き最終バスまでは時間があるし、バスの営業所で荷物も預かってくれるというので、アメリアまでのバスの運転手さんに勧められて、せっかくだから観光していこうと立ち寄りました。すごく疲れているのに、こんなとこ二度と来ないのではないか、と思うと、どうしても欲張ってしまいます。
アメリアは、とても古い町で、ぐるりと3世紀起源の壁に取り囲まれています。壁の周りに新市街が広がっていますが、今でも壁は完璧に近くのこっているようです。
町は、丘に張り付いている感じで、最も高いところに、ロマネスクの塔があります。思いっきり疲れているし、あんなとこまで絶対行かないもんね!と思いながら、壁の中に入り、ぶらぶらしていると、「いや、二度と来ないんだし。あの塔がすごく美しかったら絶対後悔するし。」とむくむく貧乏性が出てきて、結局坂道をウンショウンショと塔に向かうわたしがいるのでした。
正直、すごい坂と急階段の連続なので、大後悔しましたけど、途中でやめるのは悔しさ倍増ですもんね。いやいやがんばりました。ロマネスクのためとは言え、楽しいバカンスで、何でこんなに修行状態の日々が続くんだろうって感じですよ。
ちょっと迷いながらも、息を切らせながら、到着。ゼエゼエ。
塔は一人(?)で建っているわけではなく、カテドラルの脇にあるのですが、カテドラル(後方に見えるクーポラ)は、後代に完全に改築されていて、ロマネスクのかけらもないきらきらの建物になってしまっています。塔は、カオルレのもののように、もともと教会とつながっていなかったのでしょうね。カテドラルの脇に、唐突にドスン!と建っています。八角系で、ロマネスク特有の盲アーチで装飾され、所々に古い大理石のレリーフがはめ込まれていたりします。
それにしても、塔を写真に収めるのは、とても難しいです。というのも、これ、無骨に見えると思うのですが、本当は優美さの方が目立つんですよね。実物を見ていただくしかないんですよね~。
というわけで、疲れた身体に鞭打って、汗だくになりましたが、まぁまぁ登ってきた甲斐はあったかも。
塔の向かいの建物は、元司祭館だったようですが、その入り口に、古い碑文が飾られていました。ローマ時代のもの、または中世のもの。もう解読する気力なく、写真だけ撮った次第。
写真を撮りながら、ふと見上げて気付いたのが、別の碑文。
あのコルベ神父がここに。といっても、名前を知ってる程度。この碑文によると、1918年夏、コルベさんはこの家に滞在していたらしいです。その後1941年、アウシュビッツで、他の人を救うために、自分の命を犠牲にしたと。
インターネットで調べてみたら、ポーランド出身の聖職者で、戦争中にアウシュビッツに収容されてました。そこで脱走者が出たときに、無作為に選ばれた10人が連帯責任で処刑(餓死)されることになり、選ばれた一人が、わたしには妻子がいるんだ!と叫んだことから、コルベ神父が「自分は独身だから」と身代わりを名乗り出て、餓死したということでした。法王ヨハネ・パウロによって、すでに聖人に叙されているんですね。
で、なんでアメリアかというと、学生時代にローマに留学したと。ここアメリアはローマから結構近いので、それで夏にバカンスも兼ねて滞在していたのでしょうか。彼の幸福な時代に、アメリアでのひと夏があったのですね。シーンとした気分になります。
中世に加えて近代史にも触れて、がんばって登ってきた甲斐があったよ、と満足です。
さて、帰路は、来た道と同じ道を引き返すのはつまらないので、違う道に足を踏み入れました。方向音痴の癖に、ついチャレンジャー精神を出すのが、わたしのいけないところです、多分。
そして勿論迷いました。もうそれは思いっきり迷いまして、途中からほとんどパニックになりました。あまり人が歩いていないし、道が狭くて見通しがきかないし、歩いていると町を取り囲む壁に阻まれて後戻りするしかないことも多々あり、ああ、一生ここから出られないのではないか、ともうあせることと言ったら。ナルニ行きのバスの時間は迫る一方ですし。
結局ほとんど後戻りしたところでであった人に出口を聞いたら、あら、そこ?すぐじゃんよ!わたしは、スタート地点から、すでに全く逆の方向に進んでいたのです。それも確信を持って。いやですね~、この、確信を持って間違ってしまう方向音痴。肉体的に疲労の極致だっただけに、心底情けなかったです。
おかげさまで、無事バス停に戻り、荷物を引き取って、バスにも間に合いましたとさ。なんて長い一日だったんでしょう。こんなに長く書きましたが、テルニを出たフェレンティッロから引き続いての一日の話です。
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- 2008/11/29(土) 06:56:21|
- ウンブリア・ロマネスク
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| コメント:9
Life is beautiful!こんなにいっぱいあって、最後にちゃんと辻褄を合わせられるって「能力」です。「方向音痴万歳。」と言っておきましょう。
塔はどう見ても無骨にしか見えませんでした。が、コルベ神父の一件、驚きました。わたしが行ってたら見落としてます。絶対。
- 2008/11/29(土) 04:36:00 |
- URL |
- otebox #79D/WHSg
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ルニャーノへの道すがら、山上に位置するアメリアの城壁は、とても堅固な要塞の様に見えました。コルベ神父が滞在した事があるというのは驚きです。この町もやはり、行ってみたくなりますね。
方向音痴>
昼間は、太陽の位置を意識するとそれほど迷わなくなると思うんですが。
- 2008/12/01(月) 01:16:00 |
- URL |
- クリス #79D/WHSg
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そうそう、太陽の位置ってよく言われますけど、方向音痴の人って、だめなんですよ、理論が通じない…。もうあきらめてます。
コルベ神父って日本にも来た事あるんですね。この週末、つい、アウシュビッツの本など、読み返してしまいました。
- 2008/12/01(月) 22:29:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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コルベ神父は長崎で布教活動をしていますよ。5年間くらいだったかな。なにせ聖人ですからね。偉大すぎ!
- 2008/12/02(火) 03:31:00 |
- URL |
- クリス #79D/WHSg
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こんにちは。突然すみません。Ameliaへの行き方を調べていたところ、こちらにたどり着きまして。
もし可能であれば、どうやってバスの時刻表を調べたらよいのか教えていただけませんか?
Amelia newsというサイトでOrte駅からバスということだけはわかったのですが・・・。
来年の1月に1か月イタリアへ行くので、Ameliaに1週間くらい籠りたいなと思って^^;
- 2016/09/07(水) 15:46:00 |
- URL |
- ありんこ #79D/WHSg
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> ありんこさん
このときの旅は、列車やバスで移動したのですが、当時は、結構行き当たりばったりで、動いていたように思います。ちょっと検索したところ、www.umbriamobilita.itというサイトがあり、ウンブリアの各地のバスの時刻表が乗っていました。たしかにOrte駅とか、Orvietoとか、私が利用したTerni~など、本数はあまりないようですが、あちこちから便はあるようですよ。1か月も滞在されるなら、現地で調べることはできるのではないでしょうか。
それにしても、アメリアに1週間というのは、なぜなのでしょうか。何か、あるんですか?
- 2016/09/07(水) 22:29:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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こんにちは。お返事ありがとうございます^^
私も今日のお昼、イタリア語で調べていたら見つけて、喜んでいたところでした。何で日本語で調べていたのだろうかと・・・。
アメリアは去年の冬、ネット上でふと見つけていこうと思った場所だったんです。なぜかはわかりません。ただ惹かれるものがあって。
でも、家族の病気で身動きが取れなくなり、中止。
来年は行けるだろうということで、やっと飛行機を取ったわけですが、行きたいところが他にもあるもので、今回は短くして1週間も行ければ良いかなぁと。
特に理由がありアメリアというわけではないですが、なぜか惹かれる。ただそれだけの理由だったんです^^
突然押しかけて失礼しました。ありがとうございました。
またブログ内をいろいろと見させていただきますね!
面白いです^^
- 2016/09/08(木) 13:23:00 |
- URL |
- ありんこ #79D/WHSg
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> ありんこさん
詮索する気はないんですが、アメリア?と、つい思ってしまって、ごめんなさい。
よい町ですよ、坂で、入り組んでいて。このあたりは、どこも、地味だけど、その地味さがいい、という町村がたくさんあります。ゆっくりと滞在してこそ、楽しめるのではないかと思います。滞在しながら、近所にバスで出かけたりする旅は、ちょっと夢のような感じ。私もまた、そういう旅をしてみたいと思わされます。
楽しい旅になるとよいですね。
私の記録が、ちょっとでも、役に立てば何よりです。どうぞ、お気軽になんでも聞いてくださいね。
- 2016/09/08(木) 22:23:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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