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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ウンブリアその12-スポレート(1)

いよいよウンブリアの旅のフィナーレ、スポレートに到着です。今回の旅で最も気になっていた町です。というのも、ウンブリアには、さほど多くのロマネスクが残されていないのですが、ガイドブックで見る限りでは、このスポレートだけは、異常にたくさんのこっているらしかったからです。
旧市街は、鉄道駅とはちょっと離れています。ナルニほど山を登ることはないのですが、バスで5分ほどで丘の斜面に張り付いて広がる旧市街の麓に着き、その中心地までは、さらにぐるぐると5分くらいでしょうか。それで町を抜けて、反対側の谷に出ます。
ホテルは、その旧市街の中心地で、観光案内所もある広場に取ったので、探す手間もなく、便利なロケーションでした。それにしても、旧市街の成り立ちが全然分からず、雑然とした印象で、初めてバスで中心広場に到着したときは、かなり落胆しました。旧市街といっても、別に中世の美しい町並みが残されている感じでもなかったのです。え、こんな町に二泊もするの、わたし?と大いに間違った気がしました。
でも、気を取り直して、すぐ観光です。
ここは本当にたくさん、見所があるので、二回に分けることにします。まずは旧市街にある教会めぐりです。

まずはホテルから、スポレートで最も有名な観光地ドゥオモへ向かう途中で見つけた教会からです。さすがに最後の町なので、ここに至るまでにことあるごとに読んでいたガイドブックの知識が、結構役に立ちます。この教会は、外観は全くぴかぴかの新しいものなので、気にしてないと中世好きの視界には入ってきません。でも、地下に、すごいお宝が隠されているのですから、要注意です。
上物は、18世紀のアンサーノ教会。外も中もピカピカですが、その地下には、一つは1世紀のローマ時代の神殿跡、そしてまた、12世紀のロマネスクのクリプタ、サン・イサッコが残されているのです。


クリプタには、すばらしいフレスコ画が、かなりしっかりと残されており、どのモチーフもかわいらしく、また色彩も美しく、覗き込んだときには思わず息を呑みました。だってそんなにすごいとは、ガイドブックの控えめな記述からは計りかねたので。18世紀に上物を立て直したとき、よくもここを壊さないで残したよな、とそこに感謝感激。多分、その当時は、地下におりられないように、入り口そのものをふさいでしまったのかもしれません。

いきなりトリップしました。何だよ、この町、とがっかりした気持ちが、かなり吹き飛んでいきました。このイサッコのクリプタの前には、水が湧いていて、それがまた冷たくておいしい山の水だったので、滞在中、手持ちのペット・ボトルに何度も汲みました。またこの町には広場がなくて、戸外でのんびりくつろげる場所が少ないので、その付近の石の手すりに座って、一服するのが習慣、って、たった二泊のことですが、それにしてもここは、ホテルからドゥオモに向かう道の途中だったので、何度往復したことか。

さて、待望のドゥオモに向かいます。


あ~、写真で見たとおりだ~、と誰もが思いそうな、そういう眺め。ここは教会へのアクセスがちょっとかっこいいんです。道から、見下ろすような広場のどん詰まりに建っていて、前はかなり広いスペース(スポレート音楽祭が催される場所)、そしてそこに至るまでは緩やかなスロープと階段という構造。ドゥオモの鐘楼を含むファサード全体が、とても美しく見える構造です。おそらく最近修復工事があったようで、ファサードは鮮やかな白。夏のどこまでも青い空を背景に光り輝くようでした。
このドゥオモには、たくさんの見所がありますが、わたしが最も魅力を感じたのは、フィリッポ・リッピのフレスコ画です。ここはちょっとロマネスクを置いといて、このフレスコ画を語りたくなります。


美しいです。ため息モノ。息を呑むすごさですよ。リッピやボッティチェリの描く美しい女性の肖像は大好きなのですが、これほど巨大なリッピを見たのは初めてです。内陣を覆う壁のすべて、すごい迫力です。そして最新の修復が施されているのでしょう、色彩は、まるで今完成したかのように鮮やかで、聖母の頬などつやつやです。青も赤も、すべての色に透明感があり、これだけ巨大な絵なのに、重さが全然ありません。
これまた、ドゥオモの前を通るたびに、リッピ会いたさに入る羽目になりました。ここは、このリッピのフレスコ画に再会するためだけでも、再び訪れたい場所です。

さて、ドゥオモへとおりるスロープの左手に、いかにもロマネスクな小さな教会の後陣を見ることができます。サンテウフェミア教会は、今は美術館と一体化していて、教会としては使われていないようです(でも何かイベント的ミサなどは行われることもあるかと思料)。美術館の一部としてあり、美術館を通って、中に入ることができます(本来の正面扉は閉ざされていて、教会だけ見学することは不可能)。


ここの面白さは、順路に沿って教会に入ると、そこが2階部分ということ。見せ掛けのものも含めて、側廊の上に通路のある構造は、ロマネスク教会にはよく見られますが、そこに実際に登れるところはほとんどないのではないでしょうか。全体を上から見下ろせるのは楽しいです。

今度は旧市街を鉄道駅のほうに向かいます。ちょうど旧市街と新市街を分けるところに、毎日市の立っている大きな広場があり、その一角に、こじんまりとあるのが、サン・グレゴリオ教会。


ここもまた、予想外によくて、うれしい驚きでした。町にあるロマネスクものでは、最もロマネスクらしい空気をたたえている教会だと思います。石っぽさ、柱頭、薄暗さ。ここにもまたフレスコ画があります。わりと近代になって、発見されたもののようです。クリプタもありますが、階段を降りたら、恐ろしいほどの暗闇で、何も見えず、怖くなってすぐ本堂に戻りました。真っ暗な中に、わずかにぼんやり浮かび上がる細い円柱に支えられたヴォールト構造の中の湿った空気が、とても中世でした。
地味ですが、場所が便利だし人々が行きかっているので、結構信者が来る現役教会です。

最後に、泊まったホテルのすぐ裏に、今ではナルテックスだけしか残っていないサンタガタ教会がありました。



旧市街終わり。町の観光はらくちんですね。これまでの修行行脚に比べると、冒険的な要素はほとんどなく、とても涼やかに歩いたようですが、でもとにかく歩いてます(当然迷いながら)。この町も、坂が厳しく、サン・グレゴリオ教会からホテルまでを一度歩いて往復しましたが、また後悔、疲れた身体をさらにいじめた感じでした。といいながら、結局歩いてしまうんですよね、つい何かあるんじゃないか、と根拠のない期待をしてしまって。普段ミラノにいると、ロマネスクめぐりも車でビュン!とやっちゃって、歩きで迷ったりすることもないから、反動みたいなものがあるのかも。もともと歩くのは好きだし。ちょっとやりすぎですが。

ということで、今回は珍しくロマネスク、静かに回りました。久しぶりにどっか行きたくなってきました。
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  1. 2008/12/12(金) 06:43:45|
  2. ウンブリア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

No title

大きな町の教会はやはり一味、二味違いますね。
リッピの絵があるだけでも、さっと行って帰るにはもったいない気がします。夏の記録はとりあえず終了ですね。お疲れ様でした。
カラヴァッジョもよかったですよ。
  1. 2008/12/12(金) 09:33:00 |
  2. URL |
  3. クリス #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

ふふ、すみませんが、もうちょっとだけ続けさせてください。そいから、ちょいとマルケに寄って…って年内に終わりません。本当はHPの方にベネチア編をきちんとアップしたいのにねぇ。
  1. 2008/12/13(土) 23:32:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

とてもいい。本当に。
こんな素敵なところと思わなかった。というのも、ここに着いたのは夜のこと、落ち着いて寝られる場所(車ホテルね)を探してうろついていたんだけど、すごい大音量の「拡声器」がずうっと鳴っていて、深夜になっても止まらないんです。閉口して、トレビという鷹巣村まで戻りました。ですから何も見ていません。当時娘はまだ11歳でしたので、無理はできませんでした。
相性が悪かったのかな。残念でした。
  1. 2008/12/17(水) 14:28:00 |
  2. URL |
  3. otebox #79D/WHSg
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No title

はじめまして!
すてきなイタリアのブログですね、ゆっくり読ませてくださいね。
  1. 2008/12/18(木) 17:49:00 |
  2. URL |
  3. ガビィ #79D/WHSg
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No title

ガビィさん
訪問ありがとう。また遊びに来てください。
  1. 2008/12/23(火) 23:21:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

Oteboxさん
でも、町はあまり落ち着かないつくりで、トレヴィとか周辺の小さな村の方が滞在には向いていると思いますよ。よい選択をなされたのでは。みるものはたくさんありますけどね。次回は是非、観光してください。
  1. 2008/12/23(火) 23:23:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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