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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ミラノ展覧会 ワールド・プレス・フォト2010

ちょっと遅くなってしまったのですが、今年もカルラ・ソッツァーニで開催中のワールド・プレス・フォト、見てきました。
これは、アムステルダムに本部があるワールド・プレス・フォト財団が、年間の最優秀写真を表彰するイベント。基本的に報道写真が対象ですが、事件系、ポートレート系、動物系、スポーツ系など、多くの部門があり、この展覧会では、それぞれの部門の最優秀と次席くらいが紹介されます。


今回、うっかりとデジカメを持参しなかったんで、こんな写真しかないくて申し訳ない。

この、少女、といってもよい若い女性のポートレートが、部門を越えた、ワールド・プレス・フォト2010最優秀作品でした。

これは、南アフリカ人の写真家Jodi Bibierの作品で、被写体はアフガン人のBibi Aisha。アメリカの雑誌、タイムの表紙を飾った写真。
彼女は、夫およびその家族に虐待を受けたことから実家に逃げ帰ったのですが、探し出されて、山奥で、耳と鼻をそがれるというひどい暴力行為を受けたのだそうです。アフガニスタンでは、妻が家庭を放棄して逃げ出すなど、たとえ理由はどうあっても、夫の名誉を損なうものとみなされるとか。彼女は、その暴力行為の後、半死半生で、米軍に保護されたことから、アメリカに移送されて、失われたものの再建手術を受けたというすさまじい経験をしたのです。

本当に、あまりにすさまじくて、言葉を失います。
でも、この写真の彼女は、すべてを達観するかのような穏やかさで、一見すると、美人さんのポートレートなんです。で、よく見ると鼻がないので、言葉を失う。

写真は、文よりも話よりも、雄弁に事実を伝えやすいルポの手段ですが、ストレートに事実を撮影しても、逆に目を背けたくなるような代物になったりもして、どこまで見せるべきかというせめぎあいがあるかと思います。
昨年の最優秀賞も、確かテヘランの町の屋上で反動的なことを叫ぶ女性の姿を捉えた写真だったと思うのですが、そういうせめぎあいの結果として、一歩後ろに引いた姿勢の写真というのが、最も訴える力を持つのかもしれません。
個人的には昨年の作品の方が、全体的に惹かれるものが多かったように感じているのは、もしかすると、そう言うことかもしれません。ちょっとえぐい作品が、今回は多かったような。気のせいかも、ですが。
一瞬を切り取る現場の報道写真でも、やっぱり一歩ひいた何かが必要だと思うんですよね。
わたしは、ご他聞に漏れず、写真といえばロバート・キャパ、マグナム、って条件反射的に思ってしまう古い世代の人間なんですけど、結局は戦争写真家としてしか生きられなかったキャパではありますが、彼の写真には、その一歩引いた、冷静な視点が、常にあったからだったのではないか、と思っています。自分は、これで何を言いたいのか、という視点。強く訴えるものではないけれど、何かあると思わせる何か。
報道は芸術ではないけれど、でも、写真には絶対に芸術的な部分があるから、無視してはいけないと思うし、ほんのわずかでも芸術性のない写真は、残らないと思うし。
写真に関しては、本当に分からないので、毎回、いろいろ考えてしまいます。
そういうレベルのわたしには、このワールド・プレス・フォトは、とても深い。
ぎりぎりになってしまいましたが、行ける方は是非。

もしかして、日本でもどこかでやっているかと思います。無料じゃないとは思うけど。カルラ・ソッツァーニは、太っ腹に無料ですからね~。ミラノ、偉い!
せっかくなので、ちょっと宣伝すると、このカルラ・ソッツァーニ、久しぶりに行ったら、併設の本屋が、さらに充実していました。デザインや建築が中心のヴィジュアル系書店ですが、ディスプレイもおしゃれだし、いやはや。楽しかったです。

World Press Photo
Galleria Carla Sozzani - Corso Como 10 Milano
until 29/05/2011
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  1. 2011/05/24(火) 04:30:23|
  2. アートの旅
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

No title

この写真の衝撃を受けました。
  1. 2011/05/24(火) 01:19:00 |
  2. URL |
  3. Takumi #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

写真は雄弁ですよね。
この写真は、被写体となっている女性の表情が、素晴らしいせいもあります、きっと。カメラマンとよい関係を築いた結果なのでしょうね。
  1. 2011/05/25(水) 20:42:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

私も、これは、当時ニュース見ました。本人のインタビューもあって、お国が違うとこんなに「女性」が、軽視されている・・・。これこそ、本物の、「人権」なんだと思った次第です。今は、アメリカに行かれて新しい人生を歩んでいらっしゃるのでしょうか~・・。
  1. 2011/06/07(火) 21:56:00 |
  2. URL |
  3. にゃお #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

ピリフォリアさん
そうなんですか、ニュースで取り上げられた話なんですね。まったく恐ろしいことです。そういう国に生まれなかっただけで幸せって思っちゃいます。
  1. 2011/06/09(木) 20:51:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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