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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ロメッリーナのロマネスク その2

モルターラ郊外にあるサンタルビーノ修道院教会、続き。
Abbazia di S.Albino - Mortara


親切な教会守の方が、鍵を開けてくれましたので、中に入ることができました。修復前はボロボロだったということで、後陣以外の壁は白に塗りたくられてしまいました。仕方ないでしょうね。後陣が、オリジナルで残っていることが奇跡みたいなもんだ、とおっしゃっていました。
しかし、この後陣、レンガがとてもきれいなので、ほとんど修復の新しいレンガと思ったら、逆にほとんどはオリジナルだということでした。表面を磨くと、こういう風に新品みたいになるんだそうです。
ここはローマへ向かう巡礼の道にありますので、昔から巡礼が立ち寄ったということで、なんと後陣のいくつかのレンガには、当時の落書きが残っているんですよ。


修復の際に発見されたんだそうです。上は、多分数字ですけれど、でも何の数字か不明。しかし、説明されなければ、現代のものと思ってしまいますよねぇ。親切なガイドさんがいて、面白さ倍増です。
レンガが美しいのは、修復技術のせいもありますが、長年、脂っこい変な材質のもので覆われていたんだそうです。汚れなのか、なんなのかよく分からないらしいですけれど。それをはがしてみたら、こういう落書きに加えて、なんと1400年代のフレスコ画が現れたということなんです。


おそらく1400年代にも近い画風で、まったくわたしの好みの絵ではありませんが、その色の明瞭さにびっくりして、「ちょっと修復しすぎなくらいの美しさですねぇ」と言ったところ、「いや、これはほとんど修復していなくて、表面を覆っていたものをはがしたらこうだったんだよ」ということで、驚きました。
ノヴァレーザのように気候がフレスコ画に最適という土地でもないのに、びっくりします。今、描きあげたかのような状態ですから。そういう奇跡みたいな偶然って、あるんですねぇ。
前回の記事に、ここは歴史的に重要なロケーションに建っていると書きましたが、この壁のプレートに、それが説明されているとともに、証明ともなるような、レリック(古い人骨)が硝子の聖遺物ケースに収められて展示されています。


中世をやっていれば必ず出てくる、最も有名かつ重要な歴史上の人物である、フランクのカール大帝と、ロンゴバルドのデジデリオ王、その二人が率いる軍勢の戦いが、773年10月12日に、まさにこの場所であったんです。カール大帝にしても、デジデリオ王にしても、最近ちょっとご無沙汰していて、久しぶりに出会った感じ。
戦いは、フランクの勝利で終わり、ここからパヴィアまでの道が開かれたのだそうです。
この戦いの際に戦死したアミーコとアメリオという、生まれたときから兄弟のように仲良く育った二人の騎士の遺骸を治めるために建てられたのが、このサンタルビーノ修道院だったのだそうです。伝説ですけれど。で、このプレートのある場所に収められている骨は、その二人の聖遺物であるということになっているらしいです。
実際に、最近、米国で検証したところ、骨は千年以上前のもので、史実に合うのではないか、と地元は喜んだそうです。そんな無粋なこと、しなくてもいいのにね~。
で、特にフランス人には有名な巡礼地となっているのだそうです。
今でも、巡礼は宿泊できるんですよ。


簡易ベッドが並んでいました。
つい昨夜もフランス人が数人泊まっていったよ、ということでした。
スペインのサンチャゴ巡礼は有名だし、巡礼路には多くの立派な巡礼宿がありますが、イタリアのフランチジェーナは、それほど有名じゃないし、独立した巡礼宿みたいな施設はありません。でもこうして、修道院や教会の片隅で、泊まれるようになっていたりするんですね。

本来は教会を見て、好きなロマネスクのお宝を探すのが目的ですが、でもこういうガイドに出会うと、なんだかとっても楽しくて、いつもはほとんど見ない年代のフレスコ画まで熱心に見ちゃったりして。特にこのような歴史的な場所っていうことで、とっても遠い目になってしまいました。1300年も昔。へぇぇ。
思わず、歴史オタクになりそうな勢い。想像力のないわたしでも、なんとなく思いをはせるというか、当時の情景を想像してます、最近。

ロマネスク好きな方、是非こちらもどうぞ~!
ロマネスクのおと
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  1. 2011/07/28(木) 04:44:41|
  2. ロンバルディア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

最近ドイツロマネスクに関心を持っています。それで『地上の夢 キリスト教帝国 カール大帝の〈ヨーロッパ〉』講談社 を読み返していたところ。この地で戦いがあったことまでは この本には書かれていないのですが 騎士の遺骨がおさめられている修道院教会 とても興味深かったです。カールの二番目の妃は デシデリウスの娘〈弟カールマンの妃もデシデリウスの娘でこちらは子供もいた)その妃を返しての両王の戦い。 日本なら 大河ドラマの格好のテーマになりそうです。イタリアにもこういう テレビドラマってありますか? 〈イタリアはこれでなくてもドラマチックな 歴史物語は 山ほどあるとは思うのですが)
  1. 2011/07/27(水) 23:56:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

YKさん
テレビドラマって言うのがね、あまりないんですよね。資料映像的なビデオドラマって言うのは結構作っていて、すごく昔に、それでカール大帝のドラマを見て、結構面白くて好きだったんですけどね。おっしゃるとおり、このあたりの歴史はかなりドラマチックで、ドラマ仕立てにすると、面白いんですよ。基本的に、カール大帝とか、デジデリオは、美男役者じゃないと困るんですけどね~。
  1. 2011/07/29(金) 22:17:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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