フリブールに行った目的は、実は現代美術です。スイスのことを調べていて、あ、こんな人が!と思ったのが、ジャン・ティンゲリーというフリブール出身のアーチスト。
彼の作品で、最も知られているのが、おそらくパリのポンピドー美術館脇にある噴水のオブジェではないでしょうか。わたしも、それで、おお!と思った一人です。
ティンゲリーは、出身はフリブールながら、名を成した時代にいたのがバーゼルだったもので、最も大規模な美術館はバーゼルにあります。
フリブールにあるのは、おしどり夫婦で有名だったニキ・ド・サンファルと二人の美術館で、もしかしたら、よりパーソナルな雰囲気を持つ場所かもしれません。
実は、この前に訪ねているベルンのパウル・クレー・センター。なんと入場料が22フランもするんですよね。で、もしかするとスイスの標準価格?と危惧していたら、ここは、6フランと、とっても普通な入場料でした。この他でも、びっくりするような入場料の場所はなかったので、パウル・クレー・センターの価格は、ちょっと常軌を逸している気がします。パウル・クレーが墓の下で怒ってないですかねぇ。
さて、ティンゲリーです。
この人の作品は、ガラクタみたいないろいろを集めて、くっつけたりなんだりして変な形を作って、最後は、何らかの形で動く、というのがコンセプトです。そういうタイプのアートは、その後他のアーチストも追随したようですが、元祖はこの人。
で、たとえば、上の作品ですと、鎖ががっしゃんこがっしゃんこと動くと車輪が回って、馬の首が微妙に上下に動いたりするわけです。
美術館の規模はとっても小さいのですけれども、大小含めて、そういう作品が7,8個ありましたでしょうか。たったそれだけ?と、思われるかもしれないのですけれども、なんと、そのすべてが稼動可能状態、つまり好きなだけ動かせる状態だったんですよ!コーフン!片っ端から動かしましたとも!作品の手前に大きな赤い踏みボタンがありまして、それを足で踏むと、ガッシャンガッシャン、キリキリ、いろんな音をさせながら、作品が動き出します。
結局、車輪とか回るもの系が多いのですけれども、動くっていうのは実に魅力的。いろんなものの組み合わせも、本当に多岐にわたるので、詳細を観察するのも楽しいんです。
1メートル、2メートル程度の作品の中で、唯一の大物がこれ。
これは感動的な作品でした。高さは3メートル以上あるんじゃないのかな。なんか、大道芸人的な音と動きと雰囲気っていうのでしょうか。ノスタルジックで、楽しくて、見ているともうただ微笑が沸いてくるっていうのか。へへへ、3回くらい動かしちゃいました。見ても見ても楽しくて、小さい作品でいいから、ほしいなぁ、と本当に思いましたよ。こういう思いは、カルダー以来かも。そういえばカルダーも動く作品だな~。
そして、ちょっと遠いのですが、バーゼルの美術館にも、俄然行きたくなりました。現代アートも、わけの分からない方向性というのがありますが、こういうのはいいです。わけが分かるわけじゃないけど、対峙して、心底楽しい。
そして、フリブールの街角にも、楽しい作品がありますよ。
小さな噴水。得体の知れない、器械っぽいものが、ゆっくりと回転しながら水を噴出しております。いかにもティンゲリーで、これはよい作品です!
たまたま、宿泊したホテルの脇にあったので、何度もみてしまったんですが、朝日の中でも夕日でも、夜間照明の中でも、実に美しく、二律背反のような、機械的な存在感と、アート的な存在感が、無理なく同居していて、感心しました。
でも実は、置かれているのが、なんともダサいスペースなんで、ちょっとそれは残念な気がしました。フリブールって、町全体が中世なのかバロックなのか知りませんが、歴史的な雰囲気で統一しているんですけれど、こういう現代アートを、その中において、溶け込ませる努力はないっていうか。
この噴水、新市街のすごく変な場所なんですよ。もったいない。どうせなら、旧市街の、市庁舎前の広場(スペースはたっぷり)に置けばよいのになぁ、とか思っちゃいました。そういう英断のできる人がきっといなかったんでしょうなぁ。その辺が、スイスは絶対にフランスになれないっていうことなんだろうな~。
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- 2011/09/24(土) 05:42:16|
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