本当はサン・ゼノをご紹介したいのですが、1回や2回では無理だし、かといって年末でしばらく間が空いてしまうのも間抜けなので、今回の旅の終りに起こった不思議な話を書いてみます。
今回、何かこの地域の書籍資料がほしいと思っていたのですが、どの教会もブック・ショップは見当たらずがっかりでした。最後に訪ねたサン・ゼノでも、以前小さなお土産屋があり、本もあったように記憶していたのですが、今回は何もありませんでした。そこで、切符売り場の人に、ロマネスク関連の本が手に入るような本屋さんを知らないか訪ねたのです。
学生さん風の彼女が、打てば響くように、それならここ!と教えてくれたのが、ブラ広場からも近い町の中心部にあるGheduzziという変わった名前の本屋さん。店頭に何も見当たらなかったらお店の人にきいてみて、すごく親切に教えてくれるから、と。
書店はすぐ見つかりましたが、ロマネスク関連は見当たりません。早速お店の人に尋ねました。まずは熱心に棚を探してくれたものの、彼も何も見つけることができません。
次は彼が、オーナー風のオヤジに聞いてくれます。
オヤジは、「ロマネスクね。このシリーズがあったけど、もう在庫もないなぁ。」と、美術叢書のような一冊を示しました。そして、ふと脇を見て、「あ、ちょっと待って、あいつがいるわ!」と、そのとき店の奥の方から来たお客さんらしいオヤジに声をかけます。
「あんた、このシリーズのロマネスク、まだ持ってる?」
声をかけられたオヤジ、「うちに二冊あるけど?」「この人が興味があるって言うんで、持ってこられるかい?」「え、今すぐ?20分くらいかかってもいいならいいけど…。」
こっちにはわけの分からない展開で、オヤジはめんどくさそうに渋っています。
でも、誰が興味があるって?といいながら私を見た途端、「すぐ持ってくる!5分待ってて」と店を出て行きました。
なんなんだ?
5分強、店内をうろうろ物色していると、件のオヤジ、息を切らして戻ってきました。はい、これ、と渡されたのは、確かに最初に見た美術叢書シリーズの一冊ですが、相当年季の入った、つまりは古本。
でも、手早く中を見ると、内容は面白そうです。写真も結構入っているし、ヴェローナ郊外の教会も紹介されています。
「中を見て、もし気に入ったら、喜んで譲ります」、というので、しばらく中身を見ていましたが、紙の資料は好きなので、やっぱりほしいというと、「じゃぁ、15ユーロでいいかな」。
一瞬ひるみました。
だって、せいぜい10ユーロと思っていたし。
明らかにもともとは非売品ぽい。こういうタイプって、町の観光庁で無料でもらったこともある。その上、古本で、ざっと見ただけでも鉛筆で線がひいてあったりして。
わたしの逡巡をオヤジも感じたようで、「ヴェローナに住んでるんだったら、当分貸してあげるのでもいいけど?ミラノ?また来る予定があるなら、借りてく?」とか、とっても愛想よく話し続けます。
なんだかな~、とも思ったけど、そこが東京人の悲しさで、当意即妙に値切るとかできないんですよねぇ。いいです、いただきます、と素直に15ユーロ出したのでした。
渋っていたオヤジが、日本人の私を見てすぐ、5分で取ってくる!に変わったのは、きっとお小遣い稼ぎがしたかったんじゃないのかな~。もしかしたら、この愛想のよさで、過去にも日本人に何かいい商売をしたのかも~。
僕のパートナーも一冊持っているから、いいんだよ、あ、ヴェローナのロマネスク好きだったら、誰それはしってる?素晴らしい本を書いているよ、もう絶版だけど、多分ネット・オークションに出てるよ、あ、〇〇(店のオヤジ)、ネットのあのサイトにアクセスしてよ!とか何とか、私との商売がうまく済んだあとは、うきうきといろいろと教えてくれました。中世については、確かに詳しそうなんですけれどもねぇ。
そんなわけで、なんだか狐につままれた気分でお店を後にしました。
でも考えたら、結構希少本だし、15ユーロは高くないし、だんだんうれしくなってくるとともに、あのオヤジの日常を勝手にいろいろ想像して、楽しい気分で、ミラノへの帰路についたのでしたよ。
ヴェローナ、面白い出会いが本当にたくさんありました。
では、年を越しちゃいますが、次回はサン・ゼノを訪ねますので、お楽しみに。
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- 2011/12/30(金) 06:30:31|
- ヴェネト・ロマネスク
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