あと、ちょっとだけ。
すっごく異色だった集団。これだけ見ても、着ぐるみ系のヒーローもの?って感じですが、すごかったんですよ、この集団。3,4人、それぞれブルー!グリーン!ゴールド!みたいな感じでウェアの色も変えて、そしてこの靴で、ぴょんぴょんと激しく跳躍をしながら駆け抜けていくのです。なんだったんだろう、あれ?かなりハイテク仕様って感じだったので、もしかして、スポーツ関係の新製品お披露目だったのかなぁ。度肝を抜かれた、ほんと。
そしてこの人。
様々な演技派がいましたけれど、一切の恥じらいもない「俺を見ろ!」的な演技は、ぴか一でした。確かに自慢するだけあって、小道具も含めて素晴らしい衣装で、そして、場所取りも完璧。ドゥカーレ宮殿の入り口脇、サン・マルコ寺院の外壁で、後には中世初期の素晴らしい浅浮き彫りが会って、私の大好きな場所です。壁についている段差に一段登っちゃっているので、撮影者もあまり近くに寄れず、おかげで素晴らしい写真撮り放題。そりゃ本人は陶酔するだろうな~。
これまた…。ゴブラン織り?本物の刺繍した布ですよ。重そうだし、防寒にはいいだろうけれど、動くのも大変そうな。それにしてもすごいですよね。杖なんかも懲りまくり。棒の部分は衣装と同じモチーフが使われていますよ。杖の上にある球なんかも、イメージに合わせるために、あちこち探したんだろうなぁ、と思います。
というわけで、本日マルテディ・グラッソ、ベネチアでも今、最高潮を迎えているのではないかと思う今夜、一年落ちのカルネヴァーレ特集、終りにします。
せっかくなので、最後に、まさにお目汚し、ですけれど、私の思い出を。
今を去ること、もう二昔ですかね。当時シエナで、超貧乏な学生生活を送っていましたとさ。本当に貧しかったのですが、幸いにも似たような友人がたくさんできて、夜な夜な安ワインを飲みながら、本気で貧乏自慢をしていましたとさ。それでも、当時は、イタリアの物価が安かったので、週末旅行もよくしていたんです。で、旅の仲間と話していて、ベネチアのカルネヴァーレに行こうという話が、いつか、自分たちも仮装しよう、ということになったんですね。
なんせお金がないですからね。
当時住んでいた学生アパートは、家具つきのシェア・アパートで、確か2週間に一度、シーツと枕カバーを交換してくれたんですが、目をつけたのはそれ。仮装の出発点が、とりあえず、ただで手元にあるから、という理由の白い布。
というわけで、本体はシーツ、頭のターバンは枕カバーをねじりん棒にしたもの。何事もなかったように返さないといけないので、当然切れ目は一切入れておりません。ちくちく縫いましたけど、手縫いで。
仮面は、目だけを覆う一番安価なものの下側に、びっしりすだれのように糸をたらして縫い付けました。
そして、小さなシエナの町をめぐって、あそこの金物屋に鎖があったとか、羽だけはやはり買うしかないとか、今見ても、本当に恥ずかしくなるくらい安い小物満載です。でも本人たち的には、かなり「やった」感があったんですけどね。
で、乗り込む直前に、「ちょっとちょっと、ホテルどうするんの?」と基本を抑えていない愚かさで、結局ベネチアから列車で30分のパドヴァにやっと確保。通勤?どうするんだろう?と思いながら衣装を抱えて到着。初日はベネチアの駅でこそこそと装着した記憶があります。
そんな貧乏で珍道中だったけれど、本当に楽しかったです。いくら安っぽい衣装でも、三人、というのはそれなりにインパクトがあったと思いますし、二昔も前のカルネヴァーレは、今ほどじゃなかったとも思います。とにかく撮影されるんですよ。
最初は、喫煙や食事のことなど考えていなかったんですが、ちょっと疲れたから一服、と座り込んでも、必ずカメラが向けられているので仮面をはずせず、すだれの間から食べたり飲んだり…。
そして撮影にも慣れてくると、ちょっとポーズなんかとりたくなるし、背景も選んだりして。
恥ずかしいけど~、ちょっとポーズしてみるか~、なんて演技すると、フラッシュがバババババッと光ったりして、もうどうするどうする、続けるしかないよ、恥ずかしい、でも面白い~、みたいな。なんか、この手の写真が、自分のところ以外、世界のあちこちのどっかの誰かの家の押入れに入っているのかも、と思うと楽しいです。
パドヴァに泊まったのも、結果としてはとても面白かったんです。ホテルは、鉄道の駅からも結構遠くて、確かバスに乗ったような。ですから、まさかホテルからは着ていけない、と思っていたのは初日だけで、もうこの時期は、仮装の人々が、ベネチアから30分離れたパドヴァでも、フツーに歩いているのでしたよ。列車の中の混沌は、そりゃすごいものでした。
どうでしょう。やっぱり祭りは、自ら踊らにゃ損でしょ。こんなしょぼい仮装でも、仮装している人同士のリスペクトみたいな輪に入れてもらえるし、ちょっとスター気分が味わえるし。やっぱりいつかまたやってみたいなぁ。今なら、もうちょっとお金がかけられるし…。
そういえば、すっかり忘れていたんですが、実家が引越ししたときに、このターバン出てきたんですよね。わたしったら持ち帰ったんだ!下宿の枕カバーぱちったんだ~!とびっくりでした。
長いお付き合い、ありがとうございました。
また地味なロマネスクに戻ります。
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- 2012/02/22(水) 06:07:47|
- 旅歩き
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このカーニバルはテレビでちょっと見たぐらいですが、記事を拝見していますと、私の想像の域をはるかにこえているようです。corsaさんたちの扮装は、ハイ・コストパフォーマンス賞というのがあればきっと優勝していたでしょうね。気分は赤じゅうたんを歩く映画スターでしょうね。
- 2012/02/22(水) 01:06:00 |
- URL |
- hrv*0*4jp #79D/WHSg
- [ 編集 ]
hrv*0*4jpさん
ただ仮装の人たちが当たり前のように歩いている、というだけなんですけれど、おっしゃるとおり、そのレベルがすごいので、こうやって撮影行脚をしていると、気分がおかしくなってくるくらいです。あんまりすごくて、立ち止まれなくなっちゃって。笑
来年当たりは、また取材(?)に行ってみたいものですが、体力と相談しないと。
コスパ、ふふふ。
- 2012/02/22(水) 21:23:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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Hちゃん、やっぱり一度は出したくなるよ~。
それにしても、久しぶりに見ると、楽しいでしょ。ミラノからは、日帰り観光も可能なので、是非一度、次回の構想練るためにも、来てください。笑
- 2012/02/25(土) 21:58:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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コルサさん、世界のどこかの押し入れ、、、には笑ってしまいました。
コルサさんの青春話の続きが楽しみです!しかし、ベネチアのカーニバルって凄いんですね!
- 2012/02/26(日) 00:32:00 |
- URL |
- たかし #79D/WHSg
- [ 編集 ]
たかしさん
我が家の場合、押入れに入っているもんで、ついつい。まだデジカメがない時代でしたからね~。
ベネチアのカーニバルは、異空間にトリップする感覚があって、本当に楽しいです。
- 2012/02/26(日) 21:31:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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