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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

チロルのロマネスク その24

今回の旅も、そろそろ終わりに近づいています。最後の方は、中世めぐりというよりも、山歩きメインになりました。
ミラノに帰る日なので、帰り道方向にある場所、そして、その日開いていそうな場所、ということで、前夜に行き先を決定しました。
メラノからボルツァーノに向かう道の途中に位置していて、帰りの高速に乗るのが簡単そうだし、山歩きも存分に楽しめそうなスケジュールです。
しかし、これが思わぬ冒険の一日になってしまったのです。

最初のターゲットは、グリッシアーノGrissianoのサン・ジャコモ教会Chiesa di San Giacomo。

国道の出口がわからず、何度も行ったり来たり、と最初からつまづきます。二往復ほどしてやっとわかったのは、上りと下りでは、出口が違うということでした。どういうことかというと、普通高速では、上り下りのどちらを走っていても、出口は同じ場所で両側にありますよね。しかしここの国道では、上り側の出口と下り側の出口が交互になっている場所があり、上りでは出口があっても下り側にはない、という事態になっているのです。それが、カーナビにもちゃんと出ていなかったので、狐につままれたような状態でした。

気を取り直し、ナッレスNallesという土地から、まずプリッシアーノPrissianoを目指します。山道が苦手で怖い私としては、この村に車を置いて、歩いてグリッシアーノを目指すつもりでいたのですが、プリッシアーノは住宅が密集した小さな村で、駐車する場所など目に付かず、また路肩に余裕もなく、どうしようどうしようとあわあわしているうちに通り過ぎてしまいました。
そして、道は徐々に山道臭が強くなり、緑が濃くなってきて、私の不安は極度に高まり、つい路肩に停止してしまったのでした。一度停めると、坂道発進が難しいのですが、そこは同行の友人に頼めばいいや、と気軽な気持ちで。

とはいえ、道を聞く人もいない路肩で停まってどうするんだ、私?!
ということで、やはり後戻りしましょう、ということになりましたが、もちろん私の技術では坂道発進できない、結構急な坂道。同行者に頼みました。
ところが、彼女は、普段自分の車しか運転しない人で、自分の車なら問題ない坂道発進が、私の車では難しい…。確かに私の車はクラッチのつながる場所が若干深かったり、ローのギアが入りにくいという嫌な性格があるんですけど、それにしても、彼女が思いっきりふかしたら、焦げるようなにおいがしてきたのには参りました。

私がギアを入れなおしたり、誘導したり、もう大変な思いをして、やっと発進して、坂道のとっつきの家の庭に人がいるのを発見し、迷わず飛び込みました。
汗だくで道を尋ねる不審な東洋人二人、向こうにとってはある意味、気持ち悪かったかもしれませんが、とても親切なご夫婦で、丁寧に道を教えてくださいました。
「うちに車を置いてもいいけど、グリッシアーノまでは相当あるから、やはり車で行った方がいい」といいます。

はぁ、と気持ちも重く車に戻る私。
仕方なく、改めて発進。とにかくどんな状況でも、途中停車だけはすまい、と固く決意して、坂道をのろのろと登っていきました。
そうしたら、意外とあっという間に道が開け、グリッシアーノに到着。でも、車を停める場所なんか、ここにもないし~!
あわあわしていたら、親切なご夫婦が教えてくれた消防署の建物が目に付きました。そこに停められると思う、という話だったのですが、消防署前の平らな土地は各種車でぎっしり、その上、テントがびっしりと立っているじゃないですか~!
仕方ないので、無理やり入り込み、何かの準備中の人たちに、駐車のことを聞いてみると、ここは無理なので、もう少し先に行くと路肩に停められるから、というのです。翌日に、ビール祭りかなんかをやるということで、準備に余念のない様子でした。

参ったなぁ、とうんざりしながら先に進むも、やっぱり平らな場所なんてないんです。
途中、家を建てている現場があり、作業中の人がいました。尋ねてみようとすると、その作業中の場所に「P」という簡単な手書き看板が立っています。
話を伺うと、ちょうど平らな土地がある場所なので、翌日のイベントの駐車スペースに使うんだということ。今日は不要だから、駐車してもいいよ、と、私にしてみれば涙の出るようなお言葉!ありがたかったです。
で、そこに車を停めて、やっと最初のターゲットを目指すことができることと相成りました。これが第一の冒険。

では、こんなに苦労してたどり着いたサン・ジャコモ教会。



緑滴る中、小さな丘の天辺にちょこんと建っています。ロケーションは素晴らしい。もともと中世の巡礼路沿いにあったということらしいのです。奉納されたのが1142年と、起源は大変古い小さな聖堂です。



南側にある入り口。とにかく狭い土地に無理やり建てられたような状態で、後陣側は建物からすぐ崖状態です。
この地域にありがちな、割と普通のなんでもない聖堂ですが、中にはフレスコ画がかなり美しく残されています。13世紀およびそれ以降の作品なので、ちょっと新しいですが、13世紀は、この地域ではまたロマネスク時代だったはずです。

この、半円後陣と勝利のアーチの部分のフレスコ画が、その13世紀のもの。



後陣には、アーモンドの中に座る祝福のキリスト像と、周囲には四福音書家のシンボルなど、おなじみのモチーフです。確かにちょっと時代下る感がありますが、色がきれいで、全体にはまぁまぁ受け入れられるかな、というぎりぎりのところ。構図もちょっとすっきりしすぎかも。



右端に、洗礼者ヨハネらしい人物。このところあちこちでたまたま目にすることが多かったのですが、この人、らくだの皮か何かを羽織っているスタイルで描かれるのですね。そしてその皮が、妙に派手な色合いだったりするんですが、なぜでしょうか。意味があるはずなんだけど。

勝利のアーチの方は物語風の絵が描かれています。
これは、カインとアベルの、アベルっぽいです。



確かに!反対側にはカインがいました。
この、カインとアベルの絵は、割と好きです。



後陣向かって右側、カインのいる側は、おそらく後代に塔が建てられて、その下部が入り込んでしまっているので、このカインのフレスコ画も薄暗い場所に追いやられてしまい、後陣部分全体のバランスが悪くなっています。

側壁も全体にフレスコ画で覆われていますが、14世紀以降の作品で、保存状態もいまひとつでした。

全体には、本当に好きなタイプの絵ではなかったけれども、苦労してたどり着いて、開いていて入ることができた、ということが心底嬉しかったです。

ここから、歩きで、次のターゲットに向かいます。まさかまたもや冒険が始まるとは思いもせず…。

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  1. 2012/12/05(水) 06:28:48|
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